第13話 最終カウントダウン(第2部・全14話)
HLVシャトル4号機のコンソールに表示される隕石爆弾第3弾の詳細データ。
表示される分析データを解析して判明したその事実。
・隕石爆弾第3弾は、大質量の大型爆弾である。
・そのコースは見事正確にこの種子島Ⅱへと直撃確定。
・直撃を受ける前にHLVシャトル4号機は発射可能である。
・打ち上げ上昇中にHLVシャトル4号機からの迎撃はシステムがビジーのため現実的ではない。
・隕石爆弾第3弾の衝突コース変更や迎撃は地上に展開している防衛システムを集約すれば可能かもしれない。
そして最大級の問題は、HLVシャトル4号機発射サイロ頭上の分厚い装甲板にあった。
そこにはまだ敵群の残存勢力がまだかなりの量で存在していたこと。
HLVシャトル4号機の上昇中に敵群に取り付かれて攻撃を受けるのは危険である。
つまり、HLVシャトル4号機が発射する直前、天井部分である分厚い装甲板を開ける前に、敵群を一掃する必要があった。
「天井の分厚い装甲板はこちらから操作できるんでしょ?」
ハヤセの問いにマヤは答える。
「できます。」
だがマヤは新たな問題点を提示する。
別にマヤはわざと無理難題を言っているわけではなかった。
・地上の防衛システムは稼働中だがリンクが切れており、こちらから操作はできない。
・スタンドアローンとなった地上防衛システムを使うためには、再び誰かが地上に上がってそこで操作するしかない。
・オプションとしてそこから地上防衛システムを集約すれば、隕石爆弾第3弾の衝突コースおよび迎撃が可能かもしれない。
しかしこのオプションは現実的ではない。
結果として、誰かが上に上がって地上防衛システムを操作する必要があった。
それに志願した者は、戻ってこのHLVシャトル4号機に乗ることは不可能であった。
そして、衝突までの時間は、ほとんど残されていなかった。
決断の時を迎えていた。
誰かが地上に上がって敵を撃破することが必要だ。
しかし誰がいく?
HLVシャトル4号機内にざわめきが起こり、すぐに張り詰めた空気に一変する。
誰か?
誰だ?
誰かが行かなければ打ち上げは難しい。
打ち上げなければ全員ここで大型爆弾の餌食だ。
「!」
決めた!
自分が行こう!
キリが意を決して席から立ち上がろうとする。
するとそれを拒む者が現れる。
誰かがキリの決意に邪魔をする。
アヤカ先輩だ。
キリの席の隣に座るアヤカ先輩がキリの手を力強くギュッと握っている。
立ちあがろうと腰を上げかけたキリが驚いて隣の席のアヤカ先輩を見る。
悲しそうに、寂しそうに首を振るアヤカ先輩。
でも!
しかし!
一旦腰を浮かせたキリはゆっくりと席に座り直す。
一旦考える。
確かに、自己犠牲の考えが決して良いとは言えない。
思い上がった英雄思考が自分にあったことに気がついた。
しかし、このままでいたら。
隣に座るアヤカ先輩が再度力強くキリの手を握ってくる。
これはどういうことなのか?
あまりのことに考えに整理がつかない。
再度落ち着いて考える。
これでいいのか?
本当にいいのか?
自分は調子に乗っていたのか?
ただのビギナーズラックだったのか?
自分に英雄思考に囚われていたのか?
だが今、自分の隣で憧れのアヤカ先輩が自分の手を強く握ってくれている。
嬉しいような、悔しいような、複雑な気持ちで感情が溢れ出していた。
どうしようもない緊張感の空気が張り詰めたHLVシャトル4号機内に、追い打ちをかけるようなマヤの報告が入る。
「隕石爆弾、直撃まであと5分! HLVシャトル安全圏内での発射まで、あと3分!」
どうする?
どうすべきか?
このままただ座って見ているだけなのか?
その時、救いの神が現れた。
それはまさに『救いの女神』の声であった。
「私たちに任せて!」
マーシャの声がHLVシャトル4号機内と全員の通信装置に響き渡る。
「え? マーシャ? マーシャ今どこにいるの?」
驚きの声を上げるハヤセ。
だがマヤは冷静であった。
「私、たち?」
マーシャが続ける。
「いや、今ちょっと動けなくて、私。でもそんなことはどうでもいいわ。ねえ、マヤ。」
落ち着いたマーシャの問いかけにマヤは落ち着いて答える。
「はい。」
「あなた、冷静にHLVシャトル4号機の打ち上げできるわよね。」
「もちろん、できます。」
呆然と驚き、感情が安定しないハヤセを横に、マーシャとマヤの会話が淡々と続く。
「発射サイロ頭上の分厚い装甲板のオープン、そちらでできるわよね?」
「できます。」
マーシャは続ける。
「じゃあHLVシャトル4号機の発射と頭上装甲板を開けるタイミングを教えて。
私たちが頭上装甲板にひしめいている敵群を全て、こちらから一掃するわ。」
「了解です。」
マーシャとマヤの二人だけの会話についていけないハヤセは驚きを隠せない。
「え? なに? 二人ともどういうこと?」
それを無視してマヤはマーシャに問う。
「そちらから地上に配備されている防衛システムのリンク可能ですか? こちらからはリンクが切れて復旧できません。」
その問いに奥から男の声がする。
「できるよ、マーシャ。」
カミヤである。
その声を聞いたキリは少し驚いた。
なんでそんなところにいるんだ?
キリの驚きは、コンソールに見えるハヤセと同じであった。
だがキリの隣に座るアヤカ先輩は特に気にすることなく、強くキリの手を握り続けている。
マヤが続ける。
「対処方法を伝えます。地上防衛システムをリンクして、隕石爆弾第3弾の中央に一斉射撃を行えば、もしかしたら!」
カミヤの返答がHLVシャトル4号機内に響く。
「わかった。了解した。マーシャ、これとそっち。」
「うん、これね。まかせて。」
進む三人の会話。
ハヤセが段々と冷静さを取り戻す。
「マーシャ、マーシャ!」
ハヤセの呼びかけをスルーして、マーシャはマヤに伝える。
「じゃ、打ち上げがんばってね。こっちもがんばるから。」
マーシャの言葉に冷静に返答するマヤ。
「はい。吉報を待ってます。」
その言葉を最後に通信は切れた。
「え? マーシャったら!」
席から腰を浮かせて驚くハヤセ。
「先輩、ちゃんと席に座ってください。シートベルト忘れないでください。これより最終発射シーケンス入ります。」
「でも。」
マヤはハヤセの問いかけを無視して発射シーケンスを進行させた。
マヤの声がエンジン起動で大きく揺れるHLVシャトル4号機内に響く。
「HLVシャトル4号機、エンジン上昇最高値。最終打ち上げカウントダウンに入ります。
20、19、18、マーシャ、お願いします。」
マヤの呼びかけに素早く返答する地上にいるマーシャとカミヤ。
「わかったわ!」
「わかった!」




