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奪還するは我が青き星  作者: 宙美姫
第2部 奪還するは我が青き星
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第9話 地上からの迎撃作戦(第2部・全14話)

青ざめた顔でハヤセはメインコンソールの再起動を行なっている。

だがメインコンソールのシステムは無反応だ。

「対EMPコーティング処理しているはずなのに。」

ハヤセが焦っている。

偉大なる先輩のハヤセが焦っている。

冷静さを取り戻したマヤはハヤセに声をかける。

「総合司令コアから強制信号を送って叩き起こしましょう!」

汗を拭うハヤセの表情に少しだけ明るさが回復する。

「そうね。リンクして。」

マヤはちょっと嬉しくなってハヤセの側に寄る。

「はい。メインコンソールへの再リンク、実行します。」

メインコンソールはほんの一瞬だけ起動しかける。

だがそれはすぐに収まり、沈黙の空気に包まれる。

「再試行します。先輩はメインコンソールの再起動対応を。私は総合司令コアからトライし続けます。」

マヤの言葉に即答するハヤセ。

「わかったわ!」

なんかつい最近、二人でこんなことを繰り返した記憶が走る。

いや、違う。

ずっとだ。

この先輩と後輩は、難局や難しい局面を二人で協力して突破してきた。

学生時代や、恋人の奪い合い。

まあ、いい。

今はいい。

とにかく二人は協力しあってトライを続けている。


マーシャは立ち上がった。

このままじゃまずい。

自分もなんとか対応しなくてはいけない。

ここに座って呆然と状況を見ているだけではダメだ。

それではあの時と一緒だ。

ツングースカで起きた時の悔しさを忘れてはいない。

自分のできることをしないといけない。

マーシャは意を決して立ち上がった。


マーシャは声を張った。

EMP攻撃で機器関連が使用不能になった薄暗いHLVシャトル4号機内。

今伝えられるのは、自分自身の『声』だけだ。

「敵の第2波攻撃がきています! このままではこのHLVシャトル4号機は間違いなく攻撃を受け破壊されます。

種子島Ⅱの基地保守要員は船で脱出して誰もいません。

基地防衛の超電磁対空砲と火薬式対空砲のオートマトン自動化防衛システムもおそらくEMP攻撃で使用不能です。」

沈黙に包まれる機動歩兵装備の要員席。

「ですから地上に出て、手動対応で!」

ほぼ全員機動歩兵の装備をしている。

一応機密ヘルメットがあったりする。

非常灯で薄暗いシャトル内。

だがそこに張り詰めた空気は呆然と驚くオーラが満ちわたっている。

いわば『えー?』という感じである。

まさにその空気感に包まれ不安に襲われるマーシャ。

デジタルで表記できない人の感情の『圧』はアナログ的であるが、なぜか感じ取れたりする。


マーシャは焦った。

「みなさん!」

そう言いかけたマーシャの声かけを遮る物があった。

席から立ち上がる人影。

その人物が力強く声を張る。

「みんな、行くぞ! このままじゃ全員あの世行きだ!」

カミヤであった。

助け舟はカミヤであった。

カミヤの救援の叫びに、しばらくあってから機動歩兵の面々は声を上げた立ち上がる。

「搭乗口は?」

「ロックされてるわ。」

「オート機能が使えない。」

「いや、解除ボタンはここだ。」

「よーし、みんなで開けるわよ、せーの!」

それぞれが情報を交換し、みんなで一斉にピンチを乗り越えようとする。

やがて搭乗口が開き、HLVシャトル4号機から外に出た面々は機動歩兵のブーストを駆使しながら地上へと向かう。


「キリ君、行くよ!」

アヤカ先輩がキリに声をかける。

「え? ああ、そうですね!」

まただ。

またキリは自身の判断が鈍くて、アヤカ先輩にプッシュされてしまっている。

基地防衛に関しては不満ではなかった。

地上に出て迎撃することは不満ではなかった。

確かにそうしなければ、全員ここでお陀仏だ。

不満の論点はそこではなかった。

キリはいつもアヤカ先輩に助けられている。

キリはいつもアヤカ先輩にプッシュされている。

それが不満であった。

自分自身の判断の鈍さに不満があった。

このままではいけない。

乗り越えなければ。

いつか自分が先行して判断して、アヤカ先輩を乗り越えなければいけない。

キリはそう思いながら、先行して先を上昇していく機動歩兵のアヤカ先輩の姿を追った。


「ありがとう。」

マーシャは自分を助けてくれたカミヤに感謝の言葉を述べた。

「いや、これくらい。」

カミヤは少し照れていることを自身で感じていた。

胸が熱くなり、頭に血がのぼせて、たぶん耳が赤くなっているだろうと思っていた。

だがそれは自分で確認することはできない。

マーシャの声は嬉しさに弾んでいた。

だがマーシャ本人はそれにはまったく気が付いてはいない。

「行きましょう、迎撃に。」

マーシャの言葉に、カミヤが手を差し出す。

「暗いから、気をつけて。」

その言葉に、差し出したカミヤの手に、胸が熱くなり、頭に血がのぼせて、耳が赤くなっているだろうと

マーシャは今の自分の感情に自身で気がついた。

だがそんなことは関係ない。

だがそんなことは恥ずかしくもない。

マーシャは素直に心の底から返事をした。

なんか嬉しい。

本当だったら嬉しいどころに事態ではない。

だがマーシャはそんなことは気にもしなかった。

「うん、ありがと。」

マーシャはそう言ってカミヤの手を握った。


EMP攻撃を受けてはいたが、幸い機動歩兵の駆動は問題なかった。

だがオンライン機能は不完全だった。

機動歩兵装備の再起動を繰り返した結果、音声通信のみ、復活した。

種子島Ⅱの地表面の至る所に点在する反撃地点に、機動歩兵のメンバーはそれぞれ配置した。


反撃地点のひとつ、超電磁砲対空砲と火薬式対空砲のガンサイトに素早く潜り込む機動歩兵装備のマーシャとカミヤ。

「やっぱり電源落ちてるわ。」

マーシャの言葉に付近を確認するカミヤ。

「緊急発動機があるぞ。」

「どれ?」

機動歩兵装備の二人が並んで顔を突き合わせて覗き込む。

頭部はヘルメット装備であるが、視界の隙間からお互いの肌が見える。

わずかであるが、お互いの肌の皮膚呼吸を感じることができる。

普通だったら、ちょっと恥じらいするような距離感であったが、今はそんなこと言ってられない。

「ガソリン? 軽油? どっちにしても伝統的発動機だな。」

「動かしましょう!」

ガンサイト内に配備されていた緊急用タンクから燃料を注入する二人。

「回すぞ!」

カミヤがモーターを回すため、思いっきりスターターを引っ張る。

だが錆びていて? 埃が溜まって動きにくい。

「待って、私も。」

二人して並んでスターターを引っ張るマーシャとカミヤ。

『お二人の初めての共同作業です。』

なんて言ってられない。

機動歩兵姿の二人の息のあった努力により、無事緊急発動機のモーターが周り、やがて超電磁対空砲と火薬式対空砲が起動し出す。

「やったぜ!」

「やったね!」

思わず二人はお互いの顔を覗く。

二人とも爽やかな笑顔だ。

本当だったら、心引き寄せるお互いの爽やかな笑顔をしばし見つめていたかった。

だがそんな余裕などはなかった。

それぞれの対空砲を確認する二人。

「火薬式対空砲は問題ない。動くぞ。」

「こっちは、超電磁対空砲は充電に時間がかかるわ。まだ使えない。」

心配そうなマーシャに、カミヤはさわやかに元気づける。

「大丈夫だ。火薬式対空砲でまずは迎撃しよう。そうこうしてれば、きっと。」

マーシャはその言葉を続ける。

「充電間に合うわね、きっと。」

だが現実的に本当に都合よくいくであろうか?

マーシャの心には不安があったが、今の共闘の勢いはその不安感を打ち消していた。


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