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奪還するは我が青き星  作者: 宙美姫
第1部 地球攻防戦
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第2話 憧れの人との再会(第1部・全15話)

「小道の中にいるキミ、大丈夫? 生きてる?」


その声はどこか聞き覚えがある。

誰の声だろう?

キリが隠れている小道を塞いでいたスキャンチューブを思いっきり蹴る。

頭部であるセンチネルヘッドは切り離して自分の小脇に抱える。

とにかくこの小道を出よう。

出口を塞いでいる静止したスキャンチューブを何度も蹴って

小道の外へ押し出すことができた。

『戦利品』であるセンチネルヘッドを小脇に抱え、狭い小道を張って出る。

やっとの思いでワームホール内まで這い出たキリ。

地面には『強制冷凍』されたスキャンチューブがより一層キレイに

キラキラと光っている。


声がする。

「そこのキミ、大丈夫?」

声の主を探すキリの視点、どこにいるのかと目を凝らす。

するとキリのいる位置から十メートルほど離れた場所に声の主は立っていた。


どこか聞き覚えのある声。

そうだ、この声は。

先輩だ。

アヤカ先輩である。

「? あなたキリ君? あら奇遇。元気にしてた?」


同じ地元の学校のアヤカ先輩。

キリの憧れであったアヤカ先輩。

アヤカ先輩は学校の陸上部のエースで、キリは言わばドロップアウト組であった。

自分が陸上部を辞める時もアヤカ先輩は気にしてくれた。

だけどキリは別の想いを伝えることはできなかった。

キリが帰宅部になった後も、校庭のトラックを颯爽と走るアヤカ先輩の

姿を見て、帰る自分。

結局、それ以降会話する機会もなく卒業し、彼女が卒業してその後どうなったか

知る術はなかった。

自分の淡い想いをちゃんと伝えることなく、思い出の中に封印したアヤカ先輩が、

今自分の目の前にいる。

なんて事だ。


キリはアヤカ先輩の姿を見て二度驚いた。

自分を助けてくれたのは憧れのアヤカ先輩だった事。

またそのアヤカ先輩が見たこともない武装装備で身を固めていた事。

それって?

キリは階級章を見るまでもなく、彼女が着用していた装備を見て、

自分よりも上官であることにすぐに気がついた。

最新鋭の装備、見たこともない新型の武器。

そうか。

彼女は一般兵の自分よりはるか上の、上層部のエリートだったのか。

こんな状況だが、ちょっと心が踊った。

まさかこんな場所で懐かしい憧れの先輩に会えるとは。

だがキリは少し心が痛かった。

全然成長していない自分。

こんなみっともない姿を先輩に見られてしまった。

本当だったら、今と真逆の状況で再開したかった。

だがそんなことで悩んでいる場合ではない。


さすがアヤカ先輩はエリートなのか、キリが手に持っていたものを見て、

素直にさわやかに喜びの笑顔をあげる。

「それ、まさかセンチネルヘッド? やったね、キリ君。お手柄だよ!」

キリが手に持つセンチネルヘッド。

やっとの思いで切り取ったスキャンチューブの頭部。

それを見て、アヤカ先輩は純粋無垢に喜んでいる。

キリはアヤカ先輩のその表情を久々に見て、どこか懐かしい気持ちを思い出した。

失敗しても気にしない。

どんな時でも明るくさわやか。

アヤカ先輩のこの突き抜けた天然で明るい表情が好きだったんだな、

キリはと再認識した。


「このスキャンチューブの頭部はそんなに珍しいものなんですか? 

それともドロップアイテムか何かなのか?」

距離を保ち真剣な眼差しでそれを見つめるアヤカ先輩が年上の女性の笑顔で返してきた。

「ゲームじゃないんだから。キリ君、ちょっとそれ貸して。」

キリが手に持つセンチネルヘッドを手に取り、地面に置いて足で抑える。

キリが見た事もない、エリートのみが使用できる最新鋭の新型装備を慣れた

手つきでアヤカ先輩が対応していく。

まるで職人が包丁一本で食材をさばいているかのようである。

丁寧に捌かれたセンチネル・ヘッド。

その中から、それはまるでPCパーツのような『部品』を取り出す。

「なんですかね、これ?」

それはまるで、八角形のCPUに複数の手足生やした感じの『部品』だ。

じっと見つめて視線を逸らす事なくアヤカ先輩は口を開いた。

「頭脳ね。まあ重要なCPUってとこかしら。」


え? 頭脳?

え? CPU?

って敵のこの物体、パソコンとかスマホに入っているような、

この『チップ』が頭脳?

キリが訳がわからずポカンとしているとアヤカ先輩が淡々と答える。

「スキャンチューブって言う通称は間違ってないわ。

この蛇みたいなクリスタル状のチューブが、敵のドーム基地に繋がってるの。」

地下ワームホールの先を指さすアヤカ先輩。

その先に、このワームホールのはるか先に、敵のドーム基地にあるはずだ。

それはわかっていた。

それは知っていた。

しかし。


『この先が敵の本拠地と繋がっている。』

その事実に戦々恐々としているキリをよそに、アヤカ先輩は冷静にことを

進めていく。アヤカ先輩は見た事ない最新鋭重装備の背中のバックパックから

器用に収納ボックスみたいなものを取り出した。

キリは見たことない装備、手慣れたアヤカ先輩の手口。

キリは驚きと同時に久々にあった憧れのアヤカ先輩に目を奪われる。

だが、アヤカ先輩はキリには眼中はなかった。

視線をずらす事なく、捌いたセンチネルヘッドの残骸と『CPU』の

『ドロップアイテム』を30cm前後のカプセルに収納していく。


昔と変わってない。

淡々とクールなアヤカ先輩。

キリはこんな状況でありながらも、以前と変わっていないアヤカ先輩、

昔から憧れのアヤカ先輩と二人っきりのこんな状況になって、少し嬉しかった。


アヤカ先輩はそんなキリの気持ちなど察知することなく辺りを見回して口を開いた。

「どうやらここは第5エリアみたいね。キリ君、この先へ進むよ。情報によれば、

敵基地の入り口は第8エリアの先にあるみたいだし。」

思わずキリは情けなくも疑問の声をあげてしまった。

「第5エリア? 第5エリアってなんなんですか?」

キリの素朴の質問にアヤカ先輩は少しだけ驚いて、そしてやさしく教えてくれた。

「私たちの突撃兵団は地下攻略ルートを使ってここまで来たの。

敵の攻撃を避けてきたから、他のメンバーとは別れ別れになってしまったけど。」

嫌味なく淡々と教えてくれるアヤカ先輩に、キリは少し情けなさそうに答えた。

「自分は地上部隊で敵と戦いながら進んでたんですが、

とあるポケットでこの地下に落ちてきて。」


キリは作戦行動に至って、多くの情報を与えられてはいなかった。

キリが所属する部隊はまさに捨て駒突撃隊だったのでは、と少しはわかっていた。

だが人類のピンチ。

人類存亡をかけて敵と戦うしかない。

「エリア」とか言った謎の専門知識は教えてられていない。

だがアヤカ先輩はそれを気にすることなくサバサバ答えた。

「作戦通り、地上作戦と地下潜航作戦は進んでいるのね。

大丈夫、いっしょにがんばりましょ。」

『いっしょにがんばりましょ。』

何気ないアヤカ先輩の言葉であった。

だがキリには重く、懐かしく響きわったった。

イヤな感じはしない。

と言うか、すごく嬉しい気持ちでいっぱいになった。

キリに手を差し伸べるアヤカ先輩。

普通だったら自分が捨て駒になっている状況なので、不愉快極致の状況であった。

だが、アヤカ先輩はサバサバした笑顔で手を差し伸べてくれる。

これが旧知の先輩、あこがれの先輩ではなかったら、

言っていること全てに疑いを持ち反抗的な思想に溢れるところであった。


嬉しい。

正直言って嬉しい。

こんなところで憧れの人に会えて嬉しい。

その憧れの人が自分を認識してくれて、必要としている。

裏表のないアヤカ先輩の表情とその言葉に、キリは悩むことなくその手を受け入れた。


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