第15話 地球攻防戦(第1部・全15話)
「お待たせ!」
その時、声がした。
その時、救援が来た。
ハヤセである。
「ちょっと待ってね!」
他者とは異なる姿の機動歩兵。
重厚に太った体型の機動歩兵。
複数の武器、銃火器を持ったハヤセの機動歩兵が一斉に天井向けて攻撃を開始する。
降り注ぐグラスファイバーの槍の雨を物ともせず、放たれたミサイルや銃弾の嵐は、
敵ドーム基地下層部の天井や設備をぶち抜き、強烈な爆破と共に敵の攻撃を停止させる。
「いやー、持ってこれる武器や装備、全乗せで来たから、時間かかっちゃった。」
ずんぐりむっくり体型の全乗せ重装甲機動歩兵のハヤセがマーシャに遅れて合流する。
「マーシャ、この後は?」
含み笑いの表情を浮かべたマーシャ、次なる行動を口にする。
「この上層部にある発電ユニットを破壊して、この敵ドーム基地外殻の回転を停止させるわ。」
そうね、と言わんばかりのハヤセの表情をヘルメットバイザーから目視確認した
一同はバーニアを駆使して上層部分へと向かっていく。
かなり広めの楕円形の空洞状のホールに到達する機動歩兵たち。
敵ドーム基地の『外殻バリア』を回転させている発電ユニットが眼前に現れる。
白いグラスファイバーのような形状の巨大な複合体が青く発光している。
マーシャが、そしてハヤセが、複数得た情報でここがターゲットである事を
ヘルメットの表示モニターで確認する。
「ここ、ここを止めれば!」
背中のランドセルから『重力機雷』を取り出す機動歩兵のマーシャ。
「私も持ってきた。」
全乗せ重装甲機動歩兵のハヤセも同じように『重力機雷』を持ってきていた。
マーシャが問う。
「どこに付ける?」
ハヤセが答える。
「あの、青白く光っている中心部分に。」
「そうね。正解!」
バーニアを吹かしてともに発電ユニットの中心部に左右から取り付く機動歩兵のマーシャとハヤセ。
当然の事ながら、敵の反撃が開始される。
あたりに響く謎の警告音。
それとともに多角形集合体が連なって降り注ぎ、宙を舞い、発電ユニット左右の
マーシャとハヤセを襲おうとしている。
「援護して!」
「もちろん!」
アヤカ先輩の掛け声とともに伝統的通常火薬銃で援護するカミヤ。
マーシャの背後に迫った多角形集合体をカミヤが撃破する。
それに気がついたマーシャ、カミヤに声をかける。
「ありがとう!」
カミヤはマーシャを見る事なく、迫り来る多角形集合体に狙いをつける。
「早く! 重力機雷を!」
カミヤの言葉に深くうなずくマーシャ。
「うん! わかった!」
キリは一拍遅れたが意を決して、迫り来る敵の防衛兵器の複数の多角形集合体を
撃破していく。現在の敵に対し、伝統的通常火薬銃は意外と効果があった。
わからないモノだ。
基本が大切、ということか。
「敵は宇宙人じゃないのかよ!」
キリが敵の謎の多角形集合体を複数撃破していく。
「ヒトガタとは限らないわ!」
アヤカ先輩が敵を撃破しながら答える。
カミヤはクールに黙々と一つずつ撃破していく。
残存兵全員でマーシャとハヤセをカバーする機動歩兵群。
マーシャとハヤセの声が同時に各員のヘルメット内の通信モニターに響く。
「セット完了! 脱出します!」
カウントダウンが始まった。
人類側機動歩兵群はすぐさまその場所を離れ、地下洞穴ワームホールから安全地帯へと脱出を開始する。
* * * * * * * *
「絶対零度砲戦車群1号から5号へ。現状位置と角度をキープしてください!」
マヤは陸上機動戦艦の作戦司令室で、回転する敵ドーム基地回転防御の風圧で
飛ばされた各機の角度修正を行っていた。
「6号、7号ともに問題ありません。8号機、右上下角35度に修正してください。
9号そのままあと3秒、10号機バッチリです。」
マヤは続けて超電磁砲戦車群の位置角度修正の確認を急ぐ。
複数モニターに表示される地図と各機の位置角度情報。
マヤは目を激しく上下左右させ、任務を遂行していく。
「1号12時の方向に5メートル、そうです。2号から8号までそのままキープ。
9号、もっと上です。10号2時の方向にあと15メートル。」
風圧で飛ばされた戦車群の位置角度の配置が徐々にほぼ修正されていく。
「あとは発射に備えたそれぞれのエネルギーチャージ時間を再確認ね。」
その時、陸上機動戦艦の作戦司令室にハヤセからの通信が響く。
「こちら特別攻撃隊のハヤセ。
敵ドーム基地回転ユニットに重力機雷を仕掛けたわ。
爆発まであと5分! 現在残存兵力とともにそちらに全員で緊急帰還中!」
その報告にマヤの表情が明るくなる。
「先輩! ハヤセ先輩! ご無事で!」
マヤの問いかけに含み笑いの表情でハヤセが返す。
「当たり前よ、このくらい! あと何分でそちらの攻撃体制が準備できる?」
その声にマヤ、モニターの情報を素早く視線を移す。
「絶対零度砲あと5分、超電磁砲はあと7分です。」
ハヤセが返す。
「OK。わかったわ。敵ドーム基地回転ユニット停止後、すぐに打ち込めるわね。」
「はい!」
マヤの元気な返答を聞いてハヤセは続ける。
「全力ダッシュでそちらに戻ります。マヤ、後はまかせたわ!」
「先輩、お待ちしています!」
ハヤセとの通信を終了するマヤ、素早く攻撃部隊に指示を出す。
「絶対零度砲戦車群、および超電磁砲戦車群、エネルギー充填開始!
敵ドーム基地回転防御の停止後、すぐに攻撃に移ります。
各機、攻撃体制を維持してください!」
カウントダウンが始まる。
ハヤセやマーシャ、キリ、アヤカ先輩、カミヤたちの残存機動歩兵たちは一路地下洞穴ワームホールを伝って安全地帯へと帰路している。
敵ドーム基地を睨むマヤたちの人類攻撃群が攻撃体制を進めていく。
敵ドーム基地は未だ沈黙せず、水平回転ギザギザパワーカッターで
回転防御を継続している。
マヤがコンソールモニターを注視していく。
重力機雷のカウントダウンが進む。
重力機雷攻撃が成功すれば、敵ドーム基地の回転防御が止まり、人類側の攻撃が有効になるはずだ。
時が流れる。
一向に時間が進まない。
普段平時はさほど気にならないが、こう言う時だけ時間が進むのが遅く感じる。
まだか?
まだなのか?
カウントダウンが進む。
そしてまもなく、その時を迎える。
「重力機雷、発動まであと30秒!」
マヤの瞳に回転防御を繰り返す敵ドーム基地の姿が映る。
彼女の瞳は次に絶対零度砲戦車群と超電磁砲戦車群の状況に移る。
進行状況に問題ない。
数値は問題ない。
配置に問題ない。
間に合うはずだ。
行ける!
カウントダウンは着々と進み、15秒を切る。
マヤは指示を続ける。
『12』
「全機、敵ドーム基地内での重力機雷の衝撃に注意!」
『8』
「各機、エネルギー充填そのまま続行してください!」
『4』
「ターゲット標準、再確認お願いします!」
『1』
「来ます!」
その時はきた。
だがすぐには結果は出なかった。
一瞬の沈黙。
一同の氷結。
敵ドーム基地は何事もないように見えた。
一瞬の不安。
時の長さ。
変わらない。
失敗か?
そう思った時、あたり一体を揺らす衝撃が走った。
ブレた。
世界がブレた。
目の前の敵ドーム基地がブレる。
ともに閃光と振動が同時に発生する。
それはまるで地震のよう。
それはまさに爆発の衝撃。
敵ドーム基地の輪郭が幾度も揺れてブレる。
敵ドーム基地が一瞬爆発の影響で大きく膨らみ、その後急激に収縮していく。
敵ドーム基地内に穴が空いてブラックホールに吸い込まれるように内部が
クシャクシャして崩壊していくのがわかる。
轟音と地響きとともに、敵ドーム基地の回転防御がゆっくり停止する。
来た!
時は来た!
これで直接攻撃可能だ!
マヤは少し焦って噛みそうになりながら、全軍に指示を出す。
「絶対零度砲、発射お願いします!」
その言葉を合図に、付近に展開し準備しターゲットを絞った絶対零度砲戦車群から一斉に冷波動砲の複数の白き輝く筋が敵ドーム基地を目指す。
回転防御が止まった敵ドーム基地はなす術もなく光の筋の如く絶対零度砲を受けて白く氷結していく。
ビキビキと凍っていく音がまるで聞こえてくるようだ。
複数モニターの表示に氷結して物質破壊可能の表示が出る。
マヤは続ける。
「続けて、超電磁砲戦車群、撃ってください!」
その言葉を合図にキラキラと光る金属の砲弾群が、複数の光の筋を作って目標の敵ドーム基地へと飛んでいく。
内部崩壊して空気が抜けた風船のような敵ドーム基地に複数の金属砲弾の塊の光の筋が飛んでいく。
ボコボコボコと穴を開けて崩壊していく敵ドーム基地。
超電磁砲の複数の金属砲弾の雨霰で果てしなく物理破壊を起こす敵ドーム基地。
爆発と土塊と氷結崩壊した敵ドーム基地構成物が混ざり合って噴煙となり、付近に充満する。
物事が崩壊する時のスピードはとても早い。
もはや『敵ドーム基地』と言う固有名詞は成立しなかった。
敵の攻撃拠点で制圧・破壊された残骸・廃墟へとその姿を変えた。
敵は完全に沈黙し、作戦は成功した。
第1部 完




