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奪還するは我が青き星  作者: 宙美姫
第1部 地球攻防戦
14/22

第14話 押し寄せる脅威(第1部・全15話)

それは『肉団子』であった。

それは巨大な『肉団子』。

ちょうど地下洞穴ワームホールの直径に合わせたかのようなサイズだ。

つまり。

「避けろ!」

「壁に避難しろ!」

各員の言葉や指示が機動歩兵の通信装置にこだまする。

「キリ君、壁際へ!」

「もちろんです!」

アヤカ先輩の言葉にキリも反応し、ともに同じ行動をとる。

地下洞穴ワームホールの壁に逃げ張り付く各員。

転がり込む巨大な『肉団子』をギリギリでかわす者もいれば、

肉団子にぶち当たり、巻き込まれ無惨な状態になる者もいる。

キリとアヤカ先輩はかろうじて第一波を交わす事はできた。

だが、第二波、第三波とそれは押し寄せてきた。

必死に壁に張り付くキリやアヤカ先輩。

小道は?

小道はないのか?

以前の侵攻の際、キリは気道に逃げ込む事で難を逃れた。

しかしこのエリアには小道はない。

逃げ込んで入り込む小道は見つからなかった。

何度も転がってくる肉団子に隠れて耐える一同。

まるで敵ドーム基地内に巨大な『フンコロガシ』でもいるかのようだ。

止めどもなく巨大な肉団子が転がってくる。

タイミング良く攻撃すれば粉砕ができるのかもしれない。

だが一同は必死に壁に張り付いていた。

反撃できる体制のものは誰もいない。

気を許すと地面に落ち、肉団子に潰されてしまう。

その時である。

突然、転がりくる肉団子が何枚もの薄いスライス状に刻まれていく。

連続して薄いスライスに刻まれた肉団子群。

その流れに間が空く。

見ると、地下洞穴ワームホール上方の洞穴入口から武器を構える機動歩兵が一体。

肉団子の流れが一旦止まった隙に、地上の洞穴入り口から

地下洞穴ワームホールへと降りてくる機動歩兵一体。

そのカラーリングと武器装備は他の隊員装備とは少し違っていた。

地下洞穴ワームホール内に着地したその機動歩兵はセンターに立ち、

再び迫り来る肉団子に向けて手にする武器で応戦する。

ヴーンと空気振動を引き起こし、武器の先端から複数のレーザー光線を放つ。

レーザーカッターである。

水平に発射された複数枚のレーザーカッターは押し寄せる肉団子を

薄いスライスに変えて攻撃を無効化する。

その様子を見た、壁に張り付いていた一人の機動歩兵が地面におり、

助けに来た機動歩兵の横に立つ。

「自分が絶対零度砲で援護します!」

カミヤであった。

「ありがとう! 助かるわ!」

そう答えたのはマーシャであった。

肉団子連続攻撃でピンチに陥っていた機動歩兵群を地上から

地下洞穴ワームホールに入り、助けに来たのはマーシャであった。

「これ、まだ新型のテスト版で、イマイチ、こう何というか。」

マーシャの戸惑いにブレることなく答えるカミヤ。

「大丈夫。俺が止めて見せます!」

その言葉に破顔の笑顔で答えるマーシャ。

「うん、お願い!」


カミヤが迫り来る肉団子に絶対零度砲を放つ。

みるみる冷却化して氷着し動きが鈍る肉団子。

そこに素早く水平レーザーカッターを放つマーシャ。

カミヤとマーシャの二人が見事なコンビネーションを展開する。


それを見たアヤカ先輩は、感心の言葉を上げる。

「おおー、見事。」

アヤカ先輩はそう言ってキリを見て声をかける。

「キリ君、私たちも援護に行くよ!」

そう言ってアヤカ先輩は張り付いた壁から二人がいる地面に舞い降りた。

「え? え!」

キリはしばし呆然としていたが、さすがに自分だけずっと壁に張り付いて避難している場合ではない。

遅れて地面に飛び降り合流し、四人で並んで攻撃対応するキリ。

カミヤが、アヤカ先輩が、キリが絶対零度砲を転がってくる肉団子に放射する。

動きが鈍った冷凍肉団子に、マーシャが水平レーザーカッター波を放射して

スライスする。

どのくらいの時間が経ったのだろう。

基本流れ作業的ではあったが、かなりの長時間だったような気分にキリたちは

感じていた。

巨大肉団子の流れが止まった。

在庫は全て使い果たしたのだろう。

静かになった状況でマーシャがキリたちに声をかける。

「作戦補助、ありがとう。このまま前に進みます。」

あたりにスライスされた肉団子の残骸が所狭しと転がっている。

キリは思わず肉団子の残骸に視線を送る。

『肉団子』と言うだけあって複数の『肉』類がミンチされ混ざっているようだ。

キリは思わず声を上げる。

「これは?」

視線を前に向けたマーシャが呟く。

「それは敵に攫われて捕まった『有機物』の残骸群よ。」

マーシャが装着している色違いの機動歩兵は上官のものだ。

エリート選抜部隊である突撃兵団のアヤカ先輩やカミヤたちの物とは

微妙に装備も異なっている。

言葉のイントネーションから、この上官は多分マーシャであろうとキリは思った。

だが、肉団子の残骸を見て、それ以上問う事を止めた。

それはまるでミイラのように干からびた『人間』や『動物』の『破片』が

混ざり合った骨肉ミンチであった。

『有機物』。

マーシャが言った言葉にその意味が隠されているのだろう。

確かに、敵ドーム基地が出現する前からも、動物たちが攫われ人が行

方不明になる事件が増えた。

やがてそれは敵ドーム基地が出現してからはっきりと判明した。

敵ドーム基地を攻撃した兵士たちが、大量に捕まり捕虜になる事態が複数起きた。

そして捕まった動物や人々、兵士たちが帰ってくる事はなかった。

誰一人、動物一匹たりとも戻ってはこなかった。

肉団子にされた『有機物』の残骸を見ると、それはきっと捕虜とかではなく

『何かの燃料』にされたであろう事は薄々気がついていた。

肉団子はまさにフンコロガシ、廃棄物の塊だった。

敵はそれを攻撃材料にしたのだろう。

『有機物』の『残骸』は、まさに生気を吸い取られたミイラのようであった。


残存兵は約1/3に減っていた。

だが、敵ドーム基地攻略破壊のため、マーシャを始めキリたち機動歩兵は

前へと進んでいく。

徐々に地下洞穴ワームホールの直径が大きくなっていく。

敵ドーム基地の振動と作動音が段々と大きくなっていく。

まさに敵本陣に近づいたのであろう。

各員のモニターに表示されている地図情報がそれを告げている。


そこはまるで広い大ホール。

巨大で広大な円筒形の建設物、いや構築物といった方が正確なのか。

全体的に白く石灰群と言うか、巨大な貝殻の中にいるようだと言うか、

まさに他の世界から来た異形の建築物であった。

円筒形の壁は螺旋状に上に向かっている。

この螺旋状の『階段』を登っていけば、敵ドーム基地の中枢部に行けるのだろうか。

そこにどんな奴が待っているのか。

だが今は、この敵ドーム基地の回転ギザギザパワーカッターを止めなくてはいけない。

その動力部はどこなのか?

どうすればそこに辿り着けるのか?

壁には複数の盛り上がった『線』のようなモノが至る所に走っている。

複数の『線』が1箇所にまとまって集中している部分がある。

他の者とは配色が異なるカラーリングの機動歩兵を装着したマーシャが、

その集中した部分を確認する。。

マーシャの機動歩兵の身体から伸ばした細長いセンサーを

そこにブッ刺して『アクセス』する。

マーシャはそれが『情報伝達パイプ』、または『血液が流れる血管』で

ある事は知っていたようだ。

「おおまかなこの基地の全貌はおおよそ再確認できたわ。前回入手したドロップアイテムの不足部分と照合もね。」

前回入手したドロップアイテム。

それを持ち帰ったのはキリたちであったが、今はそんな話題を出す余裕はない。

「回転しているのはこの敵ドーム基地の外側の外殻部分だけだ。私たちが今いる中は回っていない。行けるわ。」

そう言って円筒状の構築物の上方を見るマーシャたち一同。

上層部の方から、何か複数の物体が『舞い降りて』くる。

「まあ、まさか、何の抵抗もないわけ、ないよね。」

まるでその言葉が合図のように、侵入者であるマーシャたち機動歩兵群に対し攻撃が始まった。


上層部から降り注ぐ白く鋭い槍の雨。

それは『骨』のようであり、『グラスファイバー』の槍のようであった。

地球の重力をも利用してか、それらは結構の質量を持っていた。

加速度的に降り注ぐ『白い槍』は未警戒であった機動歩兵の装甲をも

貫いて行った。

「散開!」

各員それを避けるため、広い大ホールの壁際へと逃げていく。

マーシャとカミヤが、キリとアヤカ先輩が二人一組で、

手にする絶対零度砲で降り注ぐグラスファイバーの槍の雨を凍らせる事はできた。

しかし先ほどの肉団子とは違う。

猛スピードで落下してくる大量のグラスファーバーの大雨を、高重力圧力砲や

マーシャのレーザーカッターで粉砕することは間に合いそうもない。

他の機動歩兵たち数名は、まるで神父に杭を打たれたドラキュラのように

朽ち果てていく。

どうする?

どうなる?

果て度もなく降り注ぐグラスファイバーの槍の雨に動けず壁に張り付く一同。

壊れる事なく割れる事なく降り積もるグラスファイバーの槍の雨はやがて林へ、森へと変動していく。

動けずこのまま埋もれてしまうのか。


「お待たせ!」

その時、声がした。



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