第10話 新兵器Gボンバー/後編(第1部・全15話)
無人機ガルウイングのGボンバーが轟々と噴煙をあげて巨大トラクターの
レール搭載プラットフォームから上空へと発射される。
マヤが状況報告を続行する。
「5、6、7。Gボンバー、予定通り無事推進中。」
表示されるシミュレーションデータ、そしてリアル映像に空に打ち上がる
Gボンバーの追尾映像が映し出される。
マーシャが続けて指示を出す。
「右15度転換。」
「右15度転換。」
マヤが被せるように復唱する。
マーシャがマヤに顔を向けた瞬間、何を問いたいのか、マヤは察していた。
求めている回答を素早く返すマヤ。
「シミュレーション反物質生成ユニット、安定率52%、変わりません。」
マーシャが問いただそうとした件に何も言わずに理解して素早く報告を
するマヤ。だが、マーシャは無表情に淡々と状況を確認する。
「敵ドーム基地の反応は。」
メインモニターに表示される遠景リアル画像。
まるで電子顕微鏡の微細胞の活動を見ているかのようだ。
左右に配置されたツングースカ・ファープから発射放出されている白くキラキラ輝く冷波光線。
絶対零度光波砲が左右から敵ドーム基地に放射されている。
白くキラキラ光って『凍っていく』敵ドーム基地。
そのドーム本体から伸ばした無数の『触手』群。
遠目に見えるその姿はまさに『太陽虫』であった。
ニョキニョキと伸びていく『太陽虫』の触手が絶対零度光波砲を放つ
2機のツングースカ・ファープに伸びていく。
「触手、ツングースカ・ファープ本体に取りついています!」
モニョモニョと伸びていく触手が、まるで獲物を締め上げる蛇のように
巻きついて、ギシギシと2機のツングースカ・ファープを物理的攻撃している。
「ツングースカ・ファープの状況は?」
マーシャの問いにすぐ返すマヤ。
「過負荷増大。ツングースカ・ファープ本体のダメージ増大。
ジャイロ最大対応ですが不安定です。」
時間がない。
絶対零度光波砲で氷結され、運動体の動きを鈍らせもろくさせたところに
Gボンバーのシミュレーション反物質生成ユニットを暴走させて重力波爆弾で
敵を押しつぶす。
作戦計画ではそうであった。
卓上訓練でのシミュレーションではそうであった。
だが、現実はそう甘くない。
巨大な衝撃が走る。
地下深くシェルターに避難している作戦司令室に地面を伝ってその衝撃が伝わる。
まるで大津波の衝撃波のようだ。
激しく揺れる作戦司令室。
「まさか、地震? こんな時に?」
ハヤセがマヤに確認を取るが、マヤはすぐには返答できなかった。
何度もデータを目で追うマヤ。
そして。
「ベータ号、爆発しました!」
複数モニターにまるでスローモーションのように爆炎を上げるベータ号が
遠景リアル画像で表示される。
「敵の攻撃?」
データリアル画像や数値画像を今度は素早く確認するマヤ。
「いえ、自爆です。ベータ号、制御できず自爆しました。」
複数データによる表示画像では『太陽虫』の触手攻撃はベータ号付近では過疎であった。
マーシャは素早く確認する。
「アルファ号は、どう?」
ウニウニと迫り来る『太陽虫』の触手攻撃に絡まれ、本体を揺らされながらも
ほぼ安定的に絶対零度光波砲の集束冷波光線を放ち続けるツングースカ・
ファープのアルファ号。
「さすがはプロトタイプ。量産機とはやっぱり違うわ。」
一安心しているマーシャの元にマヤがGボンバーの飛行状況が報告する。
「Gボンバー、まもなく有効攻撃範囲に到達します!」
メインモニター上に位置関係を表示する光る点が激しく点滅している。
Gボンバーである。
遠景望遠追尾映像で特異あるガルウイングのGボンバーの飛行映像が追尾されている。
他のモニターにはGボンバーの攻撃範囲距離映像や敵ドーム基地の触手攻撃状況が
表示される。まるで顕微鏡で見たような微生物の『太陽虫』状態の敵ドーム基地
から伸びていく異形の触手。
緊張に包まれる作戦司令室の中にマーシャの声が響く。
「耐ショック対閃光防御!」
「耐ショック対閃光防御!」
マヤが素早く復唱する。
モニター上のレンジが、やがてGボンバーの攻撃可能範囲に到達し、
敵ドーム基地の間近に迫ったことが認識できる。
その時であった。
まるで空気を切る『シュッ』という音がまるで聞こえたかのようだ。
効果音のように、各自の脳内にてそれが再生された。
太陽虫状態の敵ドーム基地から、新たな『触手』が急速に伸びていき、
それは狙い定めたようにGボンバーの機体を貫いた。
それはまるで連結された『外骨格のミミズ』のような触手。
その先端は、まるで針のように細く見えた。
画面上ではそう見えたが、実際は針のように小さく細いわけはない。
まるで顕微鏡映像を見ている感じで、スケール等に距離感が麻痺して
バグっている感覚に囚われた。
そしてそれは一瞬の出来事であった。
わずか数秒の出来事でったあったが、それが数十分の出来事のように感じた。
『太陽虫』のような敵ドーム基地から射出された細くて長い触手が
はるか上空を飛ぶガルウイング状のGボンバーの本体を貫いた。
まるでカメレオンの長い舌のように。
水中から水上の獲物を狙って水鉄砲を発射して仕留める小魚のように。
次の瞬間、強烈な閃光爆発とまわりの空気を揺るがす気圧の変動を起こし、
Gボンバーは大爆発を起こした。
その爆発の衝撃波とその威力の波動は、敵ドーム基地にも影響し、
光と暗黒が混ざり合ったその波動はマーシャたちがいる人類反抗軍の前進基地
エリアまで何度も波を起こして到達した。
巨大な閃光爆発と波動を引き起こしたGボンバーは爆発と共に消失した。
そして、爆発の中心点・上空のグランドゼロの付近が一瞬にして真空になり、
まるで小ブラックホールのごとく付近の物質を小さな一点が強力に吸い上げて、
そして上空のそれは一瞬にして消え、すべては何事もなかった事のようになった。
気圧が急激に変化したため、気象が異常現象を引き起こし、
その一点を目指して360度全天から急速に雲が立ち込め、雷鳴が鳴り響き、
その後ゲリラ雷雨を超えた大雨が降り始めた。
まさに『風雲急を告げる』である。
作戦司令室は沈黙に支配された。
誰も声を発せなかった。
というより、あまりにも予想外のことが起きたので、
発する言葉が見つからなかっただけだ。
司令室の複数のモニターに分析表示された物は、
一同の予想をはるかに超えていた。
本来の攻撃目標である敵ドーム基地の1/4前後、天井部分はものの見事に
破壊され、ドーム内の構成物がリアル望遠映像でも確認できるぐらいの
結果を導いていた。
だが、あまりにも予想外で一同を無言にさせたのは、
爆発の衝撃で富士山の中腹エリアが爆発で削り取られ、山頂部分がガラガラと崩壊し始めていることであった。




