ルビウス、修理2
「この形が剣にとってベストであると、どう扱おうとまた同じ形に戻ってしまう」
「違う形にしようとしても、元の形になるってことですか?」
「その通りだ。あらかじめ決められたものでもあるようにその形に導かれる。これを同じ形になるところから再現性があるというのだ」
「じゃあ打ち直しても元の形に戻ってくれるんですね?」
「ああ、だから心配はいらない、ということだ」
再現性が良く働くこともあれば、面倒になることもある。
手に入れた武器が持ち主にとって扱いやすいとは限らず、時には扱いやすいように変えたい時もあるだろう。
しかし再現性がある武器はいってしまえば、形を変えることができない武器であるとも言える。
形を変えることができないというのは、デメリットであると表現することもできるのだ。
しかしトモナリはルビウスに不満を感じたことはない。
赤い見た目は派手であるけれど、剣の形としては特に使いにくいことはなかった。
やや大きめ、やや重ためではあるものの、剣の個性として許容範囲である。
今やルビウスはトモナリの手に馴染んでいる。
同じ形である方がありがたいぐらいなのだった。
「では剣をお願いしても大丈夫ですか?」
「ああ。ついでに前に作った防具もメンテナンスしておこう」
ルビウスにもエドにも負担をかけてきた。
一度しっかり見てもらうのもいいだろう。
トモナリはエドの鎧もインベントリから取り出す。
「どれぐらいかかるかは分からん。ひとまず遅くとも一週間後ぐらいには一度連絡入れよう」
「分かりました。何もかもありがとうございます。料金などは……」
「いらん」
「えっ、でも……」
「金を受け取ると仕事になる。仕事になると面倒だろう? あくまでも俺が趣味でやるのだ」
今サタケはオウルグループの所属である。
個人での作業は禁じられていないが、外部の人が金を払って依頼するのに多少の面倒もないとは言えない。
お金のやり取りは無しで、あくまで個人のお願いという形で処理してくれようとしている。
「でも……」
鎧のメンテナンスだけならともかく、剣を打ち直してもらうのにタダでというわけにはいかない。
トモナリは流石に申し訳なさそうな顔をする。
「気になるなら……娘のことを頼む」
サタケはエドの鎧をチェックしていく。
「なんの因果か……俺と同じ職業になってしまった。戦うのも大変だがこの仕事も辛い」
サタケは小さくため息を漏らした。
「戦闘系職業ではないから、戦いが激しくなるほどについていけなくなる。そうなるとやはり戦いには赴かず、装備の手入れが主になる」
「戦闘系でも才能が乏しいと、ついていくのは大変になりますからね」
「そうだな。戦闘系ではないと余計に大変だ。だが俺たちがやるのは覚醒者の命を守る装備に関することだ。その責任は非常に重たい」
いかに覚醒者だろうと多くの人は生身では戦えない。
武器や防具、アーティファクトなどの装備は大切なものである。
装備を作り、メンテナンスまで担う職人は覚醒者の命を預かっているのと同義なのだ。
「時に不安になる。俺の腕が未熟で、あるいはメンテナンスで見通しがあって、ほんのわずかなミスから覚醒者が命を落とすんじゃないかってな。そして俺は安全な場所から無事を願うしかないんだ」
特定の技能を持っているために戦場に出ないサポートの役割は楽、だなんていう人もいる。
確かに戦わないので命を落とす可能性ははるかに低い。
だからといって楽なんてことはないのだ。
「無事に帰ってきてくれて、ホッと安心する。装備を壊したら怒るが、覚醒者をちゃんと守ったのだなと誇らしくも思う。俺は戦場にいないが、共に戦っている。そんな役割だ」
サタケがジッとトモナリのことを見つめる。
「娘は……ナナはそんな道を歩もうとしている。支えてやってくれ。あの子は俺以上の腕前になるだろう。導いてやってほしい」
「…………分かりました」
ナナがトモナリのギルドに来るかどうかはまだ確定ではない。
ただ来たいというのなら、受け入れるつもりだ。
「……しかし娘に手を出すことは許さないからな」
「もちろん、ですよ」
なんでこんな板挟み感を味わわねばならないのか。
トモナリは苦笑いを浮かべるしかなかった。




