ルビウス、修理1
「いきなり連絡してすいません」
「いや、いいんだ。君には個人的な恩があるからな」
「久しぶりなのだ!」
「初めましてなのだぁ!」
ルビウスは普通の剣ではない。
直すにしても専門の知識が必要となる。
そこら辺で直してくれと言っても直せるものではないので、専門家に相談することにした。
トモナリには以前知り合った覚醒者装備を専門にする覚醒者の鍛冶職人の知り合いがいる。
それがサタケである。
トモナリの後輩であるナナの父親であり、覚醒者製造部門の一員としてオウルグループに雇われている。
以前エドの素材を装備にするのに協力してもらった縁があって、その時の連絡先を今でも持っていた。
「できればもっと細かく連絡してほしかったものだがな。作って終わり……というのは二流三流のやることだ。作った後まで面倒見てこそ、一流というものだ」
「あはは……すいません。色々忙しくて。それに、オウルグループに所属なされてますし……」
継続的な装備のメンテナンスが必要なことはトモナリも理解している。
しかしゆっくりと人に武器や装備を預けている暇もなかったことは、また事実である。
それにサタケが気軽に連絡できる人でないことも大きい。
確かに一度装備を作ってもらったが、それ以上でもそれ以下でもない。
友人と呼ぶような関係でもないのに、他のところに所属する人に装備に関してでも連絡するのははばかられたのだ。
しかしルビウスが刃こぼれしている現状では、そんなことも言ってられなくなった。
トモナリが今連絡を取れる人の中で、覚醒者の装備に精通しているのはサタケぐらいである。
恐る恐る連絡をしたら、二つ返事で会うことを約束してくれたので安心した。
「所属はしているが、個人で誰に逢おうが文句は言わせない。クビにしたいならしてみればいい」
サタケは笑う。
オウルグループの方にもトモナリは貸しがあるので、サタケと会うことに文句はつけられないだろうと思う。
サタケ自身もプライベートな時間で何をしようと制限をされるつもりはなかった。
「クビになったら君のところに行こうか。娘も君のところに行きたがってみるみたいだし……な」
なぜかそっとハンマーを握るサタケの背中から怖いものをトモナリは感じる。
「……別に、タンノさんとはそんな関係じゃ……」
「分かっているさ……だが、ここに来るというのなら俺はプライドを捨ててもねじ込むのに、あっさりと断られたものだからな……」
ナナとサタケの関係も今はかなり良好で、同じ鍛冶職人という職業を持つところからナナは父親への敬意も持っていた。
サタケはナナに自分のところで経験を積まないかと誘ったのだけど、ナナの第一希望はトモナリたちのギルドなので断られた。
少しがっくりとうなだれるサタケを見るに、誘ったらこちらに移ってくるのではないかとすらトモナリはちょっと悪いことを考える。
しかし他のギルドから人を引き抜くのは、そこそこ御法度な行為である。
オウルグループとは今のところ良好な関係を築いているのだから、わざわざ悪化させるようなことをする必要はない。
サタケから来たいというのなら止めることはしないだろう。
「それで……今日は剣だと言っていたな」
「ええ、こちらを」
トモナリはルビウスをインベントリから取り出す。
入学してまだ間もない頃に入手して、そこからずっとルビウスはトモナリの武器の相棒であった。
ほんの少しの欠けだけど、小さなところから大きな損傷をもたらすこともある。
直せるなら今の状態のうちに直してしまうことが大切だ。
「確かに小さな欠けがあるな」
サタケがルビウスを手に取る。
かつては触ると燃える呪いの剣のような存在であった。
自分が認めていないものが触るな、という防御反応だったのであるが、トモナリという主人を見つけた今はそうツンケンする必要もない。
サタケがルビウスを手にとっても炎上することはなかった。
「ふむ……ヒビが広がっているわけじゃなさそうだ」
ハンマーで軽くルビウスを叩いて、刃の状態を確認する。
「この剣は一体何でできてるのだ? ミスリルではないな……いや、ミスリルも混ざっているのか?」
『あまり気分は良くないのぅ』
サタケはルビウスのことをまじまじと観察する。
おじさんに見つめられても嬉しくないルビウスの声がトモナリには聞こえてくる。
「これも君の関係か?」
「ええ、ドラゴン関係です」
「ふむ……ならばドラゴンの素材を混ぜ込んでいるのだな」
「直せますか?」
「欠けは大きくないが、欠けたところに金属を継ぎ足すなんてこともできない。一度溶かして打ち直す必要がある」
「……それって大丈夫なんですか?」
トモナリは不安げな表情を浮かべる。
剣を打ち直すとなると大きな作業である。
サタケの腕前を疑ってはいないが、ルビウスも普通の剣ではないのでどうなるか分からない。
「こうした特殊な剣は再現性がある」
「再現性?」
「なのだ?」
「なんなのだ?」
あまり聞いたことがない話であるとトモナリは不思議そうな顔をし、ヒカリとユシルは可愛らしく首を傾げる。




