古代遺跡攻略4
「美味いけど……やっぱりあったかい料理がいいよな」
室内では火も使えないし、ゲートのど真ん中ということもあって食事も簡易的なもので済ませる。
インベントリに余裕があるなら事前に料理を作って持ってくるなんて荒技もあるのだけど、なんせ今回は家から来ているわけでもない。
サッと食べられる簡単な料理や携帯食料も悪くはないが、どうしても手の込んだものには勝てないのだ。
他にも温かい料理はニオイが立ってしまうので、とかそんな理由でゲートでは食べないような人もいる。
「羊羹なのだ〜!」
甘いものの補給も大事。
ヒカリはトモナリから羊羹を出してもらって食べている。
何とも贅沢な高級羊羹丸々一本喰いである。
「‘それ、美味しそうね’」
「むっ! あげないのだ!」
口いっぱいに羊羹を頬張るヒカリを見て、メイリンは目を細めて笑う。
ヒカリはメイリンから羊羹を隠すようにしながら食べている。
「‘羊羹いるか?’」
「‘あんなに大きいの食べきれないわよ’」
「‘小さいのもあるぞ’」
トモナリはインベントリから大きな箱を取り出した。
「うわっ、これ全部お菓子?」
大きな箱の中にはお菓子がぎっしりと詰め込まれている。
ヒカリがこれまでもらってきたものもあれば、ちょいちょい買い足しているものもある。
「そう。ぜーんぶお菓子だよ」
「はぁ……遭難してもしばらく生きられそう」
これまでは適当にビニール袋にまとめていたのだけど、流石に種類も数も多くなってきたので大きな箱に整理した。
集めて分類してみると意外と色々あるもので驚いた。
お菓子の中でもヒカリのお気に入りのものは、ヒカリコレクションとして別に分けてある。
今食べている羊羹もそのうちの一つだ。
「‘ほれ’」
トモナリは箱の中から手に持って食べやすいサイズの羊羹を取り出す。
ヒカリが食べているものの小さいバージョンである。
「‘これだけたくさんあるなら遠慮はいらないわね’」
メイリンは笑顔で羊羹を受け取る。
箱の中には遠慮するどころか、むしろ食べてあげた方がいいぐらいの量のお菓子がある。
「これもらってもいい?」
「ああ、好きに食べてくれ」
トモナリも時折お菓子は食べるものの、箱の中身が減っている感じはない。
食べてもらえるとありがたい。
「んじゃ俺はこれもらうかな」
「私これ」
ちょっとしたお菓子パーティーを経て、しっかりと体力を回復させる。
「攻略再開だな」
「いくのだぁー!」
緩んだ気を引き締めて、トモナリは部屋のドアをゆっくりと開く。
「……また廊下か」
戦わなくていいのはいいのだけど、あまりにも戦いがないとそれはそれで不安になる。
部屋の外は廊下になっていて、ゴーレムやモンスター、他の覚醒者の姿はない。
そもそも壁を壊した時点でかなり大きな音が鳴っている。
それでもモンスターが来なかったのだから、周囲にはいないのだろうと予想はしていた。
「天窓……明るいな」
廊下は明るい。
見上げると天井には一定間隔で天窓が設置されていて、外の光を取り込んでいた。
ここまでの坑道なんかは非常に暗かったので少し新鮮である。
「……てことは上がないってことになるな」
天窓があることからもう一つ分かることがある。
さらに上に階がないことになるのだ。
あっても屋上。
つまり古代遺跡の建物としては最上階にいるということが確定した。
上の階にいるのは窓から見た景色で分かっていたものの、想像よりも上にいた。
「もしかすると……ボスも目の前…………なのかな?」
「おっ、なら楽でいいな。さっさと終わらせて帰ろうぜ」
最上階にいるならボスが近い可能性も高い。
ミズキは少し緊張した顔をしているが、サントリは早く終わっていいと笑う。
「ボスか……流石に少し緊張するな」
かなり広めの廊下を進んでいく。
この古代遺跡のゲートの難易度はB+だ。
そこから予想されるボスの強さもCに近いBではなく、Aに近いB、あるいはAクラスのボスなこともあり得る。
メイリンがいると言っても楽ではないかもしれない。
「ここが……一番奥か?」
進んでいった突き当たりに部屋がある。
割と豪華なドアをしている部屋は何かがありそうだと感じさせる。
アイコンタクトを取ってみんなそれぞれ構える。
トモナリとサーシャが前に立ってドアを開け、後ろのみんながすぐに動けるように備えておく。
「いくぞ?」
「うん」
トモナリがドアノブに手をかけ、サッと開く。
間髪入れずにサーシャがスキルを発動させながら部屋の前に飛び出した。
「…………?」
けれども特に予想していたような衝撃はない。
「大丈夫そうだな」
それほど予想外ということでもない。
ボスがいる場所に踏み込まねば攻撃してこないタイプのボスも割と多い。
ドアを開けただけで戦闘が始まらなくても不思議なことではなかった。
「…………あの先、だな」
「そうだな。流石にあからさまだよな」
部屋の中にもボスはいなかった。
しかしその代わりに、部屋のど真ん中には大きな穴が空いていた。
どう見ても穴の先には何かある。
それがボスだろうことはその場にいた全員が確信めいたものを感じていた。




