天才vs天才4
「わっはっはっー! 気づかなかったのだ?」
「‘チッ! お前ら全員ぶっ殺してまた連れ戻せばいいだけの話だ!’」
所詮は子供。
逃げたところで何ができるわけでもないし、遠くにも行けない。
どこかに助けを求めようにも古代遺跡は孤島だ。
外に出ればモンスターがウヨウヨいるわけだし、安全なところから動かないだろうという確信がある。
「‘こっちも忘れてもらっちゃ困るぞ!’」
「‘くっ!’」
ヒカリに気を取られている間に、トモナリが傭兵リーダーの後ろに迫る。
「‘この……卑怯だぞ!’」
「‘残念ながら俺とヒカリは一心同体だからな!’」
「僕とトモナリは一緒なーのだー!」
ヒカリも加わって、二人で傭兵リーダーと戦う。
二対一では卑怯と傭兵リーダーは言うけれど、トモナリとヒカリは二人で一つである。
他の人との共闘ではない。
卑怯なんてことを言われる筋合いはないのだ。
「ポポポポー!」
「‘こんなもの効くか!’」
ヒカリが放った火の玉を短く持った鉄球で振り払う。
「でもこっちはお留守だな!」
「‘ガッ……!’」
後ろに回り込んだトモナリが剣を突き出す。
傭兵リーダーは体をねじるも回避しきれず肩を貫かれる。
ここまでで傭兵リーダーの戦い方は把握した。
かなり能力が高いのだけど、それは純粋に基礎的なステータスが高いというのみではなくてスキルも能力アップのものを揃えているのだろう。
デメリットがないか、少ないタイプ、あるいはスキルの組み合わせやアーティファクトなどでデメリットを打ち消している。
上手くスキルを手に入れたような雰囲気があった。
能力アップ系スキルを取り揃えると純粋に強い。
しかし弱点というか、切り札的な爆発力を持つ逆転の手がないことが大きなデメリットにもなる。
鉄球は強かった。
トモナリの想像以上の武器だったが、素早い相手や多数の相手と戦う時に効果を発揮しきれないところがある。
「ズバァー!」
「‘な……俺が…………こんなガキどもに……’」
「‘いうほど俺もガキじゃないぞ’」
ヒカリの爪が傭兵リーダーの顔面に深い傷跡を残す。
ガキガキというがトモナリももう高校は卒業している。
東洋人は若く見えるなんてことがあるのかもしれないけれども、子供と言われるような年でもない。
「まあ、おっさんからすればガキなのかな」
それでも気持ちは少し分かる。
回帰前に若い子を見た時、強くても若いし子供だなと思うことはあった。
そんな感じなのかもしれないと思う。
「‘でも、子供じゃないから……やらせてもらうよ’」
「‘くそっ……!’」
トモナリが剣を振りながら傭兵リーダーと交差する。
傭兵リーダーの手から鉄球が滑り落ちて、地面に転がる。
「ちょん!」
ヒカリが傭兵リーダーの頭を軽く爪で押す。
するとずるりと首がズレて、傭兵リーダーの頭は地面に落ちて鉄球の横に並んだ。
「しょーりなのだ!」
トモナリの予想通り、傭兵リーダーに状況を逆転させるようなスキルはなかった。
ヒカリは両手を上げて喜んでいる。
「……あっちはまだ勝負がつかないようだな。俺たちはユウトたちの加勢に行くぞ」
トモナリはチラリとメイリンのことを見る。
ウーとの激しい戦いは、まだ続いている。
ーーーーー
「‘なぜ祖国を裏切った!’」
メイリンとウーは激しく剣をぶつけて戦う。
青い剣は自在に飛ばし、赤い剣を手に持って戦うメイリンの激しい攻撃をウーは巧みにさばいていた。
「‘元々好きじゃなかったの。私のことを洗脳して、好き勝手操ろうとして、私も女の子よ? 自由に羽ばたきたいと思う時があるのよ!’」
メイリンの突きをウーは剣で受け止める。
手足もほっそりとした可憐な女性の一撃に見えるのだけど、ウーは踏ん張っても大きく後ろに押し返された。
「‘裏切ったのは向こうのほうよ’」
まるで氷のような目つき。
睨むだけでも低レベルの覚醒者なら殺せてしまいそうな視線に、ウーはゾクゾクとしたものを感じていた。
「‘私の家族に手を出すからこんなことになるの’」
不満はあった。
されど裏切るつもりはなかった。
制約はあったものの割と好きにさせてもらえていたし、国の力を背景にした様々な恩恵もあった。
やらされる仕事についてもメイリンは特に気にしていなかったから、辛いと思ったようなこともない。
子供を生贄にすることもまだ耐えられた。
しかし子供のたちの中にメイリンの妹がいたことは耐えられなかった。
家族の幸せのために。
これがどこかメイリンの心の支えになっていた。
自分がこうして活躍することで家族が幸せになり、国全体でも幸福になる。
だからここまでやってきた。
なのにそんなメイリンの支えを踏みにじったのは国の方だったのである。
「‘踏み越えちゃいけないところがあるの。誰にでも……私にも’」
「‘分からんな。国のために犠牲になるのならこれほど光栄なことはないだろう’」
「‘もうそこから違うの。私はそんなことに光栄なんて感じない。だから……あなたとの会話は永遠に平行線なのよ’」
どれほど言葉を交わそうと、盲目的な人間と交わることなどないだろうとメイリンは思う。
仕方がなく、諦めるしかない。




