天才vs天才3
「‘ただの変な武器だとでも思ったか!’」
ぶっ飛ばされたが、ガードは間に合った。
それでも強い衝撃に脇腹に鈍い痛みを感じる。
トモナリも鉄球に妙な穴が空いているとは思っていた。
破壊力はあるものの扱いにくく隙の大きな武器で、使う理由がいまいち分からなかった。
やはり見た目とただ頑丈なだけが取り柄の武器ではなかったようだ。
「大丈夫だ。ヒカリ、こっちに」
「うむ」
トモナリがヒカリを近くに呼んで作戦を伝える。
「‘様子見は終わりだ! 捻り潰してやる!’」
傭兵リーダーは鉄球を引き寄せてキャッチする。
そして振りかぶって投げる。
魔力が鉄球の穴から噴出し、鉄球は一気に加速していく。
さらに鉄球の横からも魔力が出て、横に高速回転し始める。
「怪力……!」
迫り来る鉄球に対して、トモナリは一歩大きく足を踏み出して両手で剣を持つ。
怪力スキルを発動させる。
スキルを発動させても見た目上はほとんど変わらないのだけど、よく見ると腕が筋肉質になって一回りほど太くなる。
さらに魔力物質構成で腕を覆う。
「ハァッ!」
トモナリは剣を振り上げる。
高速回転する鉄球と剣が衝突して擦れ合い、ひどく甲高い音を立てる。
「ハァァァァッ!」
鉄球を弾き飛ばす。
怪力を使ってギリギリ。
腕は痺れているが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
トモナリは一気に傭兵リーダーと距離を詰める。
「‘へっ! なかなかやるな! だがこうするんだよ!’」
「なっ……!」
鎖が緩んだ状態で鉄球は宙を舞う。
すぐには引き寄せられないだろうと思ったら、傭兵リーダーはニヤリと笑った。
傭兵リーダーの手から鉄球がフッと消える。
そして、次の瞬間手元に離れたところにあったはずの鉄球が現れた。
「‘くらえ!’」
「くっ!?」
投げつけられた鉄球がトモナリの肩をかすめる。
「インベントリの活用か……」
鉄球は鎖で繋がっていて、鎖は傭兵リーダーの手元にある。
手元にあればインベントリに収めることができる。
離れた鉄球を引き寄せるのではなく、一度インベントリに収めてから取り出すという手段で素早く鉄球を手元に戻したのだ。
普通じゃ思いつかないようなやり方。
鉄球が鎖で手元に繋がっているからできる芸当なのであった。
「エド!」
「むっ? おお、今日は忙しいな」
鉄球での戦いに相当慣れている。
とっさにインベントリに入れて手元に戻すなんてやり方は簡単に思いつかないし、実際の戦闘で一瞬であっても武器を手元から消してしまうなんて胆力と慣れが必要なことである。
鉄球の扱いのみならず、戦い方を見ていても場数を踏んでいることを感じさせる。
トモナリも一つ力を引き上げることにした。
数がいた方がいいと思っていたが、そうも言っていられない。
「ドラゴンズコネクト!」
エドを呼び寄せてドラゴンズコネクトを使う。
同化している最中は召喚もできない。
エドの分みんなの負担は大きくなるけれど、エドが抜けても対処はできそうだとトモナリは信じている。
トモナリの姿が変化していく。
ロングコート姿のトモナリに、傭兵リーダーは片眉を上げる。
「‘まだ何か隠していたのか。しかし俺には勝てないぞ!’」
傭兵リーダーは鉄球を振り回し、勢いをつけてトモナリに向かって飛ばす。
「当たるか!」
トモナリは鉄球を横に飛んでかわす。
「‘逃すか!’」
鉄球から魔力が噴き出し、軌道が変わってトモナリのことを追いかける。
「くっ!」
今度は正面から完全に弾き飛ばすのではなく、剣を当てて軽く軌道を逸らして鉄球を回避する。
「‘ほらほらどうした! 逃げ回っているだけじゃ勝てないぞ!’」
軌道を変えて後ろからも飛んでくる鉄球に、トモナリはなかなか攻めあぐねていた。
仮に上手く掻い潜ってもインベントリに入れて出すという方法で、すぐに鉄球を手元に戻してしまう。
特殊な武器であるが、扱い方が上手くて意外と隙がない。
力も強そうだけど、鉄球から魔力を自在に噴出させるところを見ると魔力もそこそこ高そうだった。
「フッ……」
「‘何笑ってやがる!’」
「‘お前の敗因は俺を倒せなかったことだ’」
「‘はぁ?’」
トモナリが動きを止めてニヤリと笑った。
その不遜な様子に傭兵リーダーは顔をしかめる。
負け惜しみの言葉のようにも聞こえる。
他の奴らの援護でも期待しているのかと思ったが、メイリンもユウトたちもまだ戦っていた。
「‘ここまでは俺の戦いだ。ここからは……俺たちの戦いだ’」
「‘何を……’」
「後ろなのだ!」
「‘なにっ! ぶあっ!?’」
傭兵リーダーの後ろにヒカリが現れた。
突然聞こえた声に驚いた傭兵リーダーが後ろを振り向くと、ヒカリが尻尾で殴りつける。
「ヒカリ、どうだ!」
「ふむ、ちゃんと無事に送り届けたのだ!」
途中からヒカリはいなかった。
様子を見ていたとか、他の戦いに参加していたのではなくこの場にいなかったのである。
「‘ぐっ……ガキが…………あのクソモンスター!’」
傭兵リーダーは気づいた。
いつの間にか檻に閉じ込めていたはずの子供たちがいなくなっていることに。
ヒカリは戦いの途中で子供を避難させるようにトモナリから言われていた。
戦いに巻き込まれたり、人質にされたりしたらたまらない。
そのために完全に戦いに気が逸れた隙を狙ったのである。
途中でモンスターに襲われるリスクはあったので、ヒカリにゴーレムの心臓を持たせて元来た道を戻って地下坑道の方に連れて行った。
そこまで行けば周りには完全にゴーレムしかいない。
トモナリもそれがわかっているからあえてあまり積極的に攻撃は仕掛けなかった。




