天才vs天才2
「こちらも全力でいくぞ!」
「‘なんだありゃ!?’」
「‘召喚獣か!’」
ウーたちは中国で育成された覚醒者であり、実力もさることながら人と戦うことにもためらいがない。
男たちの方はおそらく傭兵と呼ばれるような、世界を股にかけて活動する覚醒者だろう。
子供たちへの所業を見るに、殺人なども請け負う危険なタイプの傭兵であることが推測できる。
こちらも人の命を奪うことになんの感情もない。
レベル的にもトモナリたちに近いか上。
トモナリたちだってある程度は対人戦闘経験を積んでいるが、主な相手はモンスターである。
なんのためらいもなく人と戦えるという域にまで達してはいない。
つまりは手加減などしていられない戦いということである。
トモナリは初手でドラゴンたちを呼び出す。
「‘召喚したやつを狙え!’」
トモナリがドラゴンを呼び出すということはそれなりに有名になってきたものの、まだまだ知らない人の方が多い。
他の国で活躍する若い覚醒者などその方面にアンテナを張っていないとなかなか知ることもできないだろう。
ヒカリ含めた四体のミニ竜を見ても男たちはさほど脅威だとは感じていないけれど、敵の数が増えるのは厄介なことである。
エドは仲間を殺した相手でもあるし、トモナリを倒せば復讐ついでにヒカリたちドラゴンを止められると考えた。
「おおっと! そうはさせないぜ!」
「ご主人様は我々がお守りいたします」
けれども好き勝手にトモナリを狙わせるわけにもいかない。
結局は乱戦に近い形になっていく。
「‘クソガキ! お前は俺が捻り潰してやる!’」
トモナリの相手は傭兵の男たちのリーダーだった。
背が高く、かなりガッチリとした体格の男の武器は鉄球を鎖で繋いだすごく特殊な武器である。
どう使うのかは一目瞭然だが、普通に使う武器ではない。
直径一メートル強はありそうな鉄球には、いくつか穴が空いている。
鎖を握って回転させると風を切る音が大きく響き渡る。
「‘お前らみたいな正義感だけで動くバカを相手にするだけで報酬倍はありがたいな!’」
傭兵リーダーは鉄球を振って、トモナリに向かって縦に振り下ろす。
トモナリが飛び退いてかわすと、地面に鉄球が衝突して大きく陥没する。
「かなりの威力だな……」
「‘まだまだぁ!’」
地面の陥没具合を見るに食らったら危なそうだと、トモナリはちょっとヒヤッとしたものを感じた。
傭兵リーダーは鎖を引いて鉄球を引き寄せると、手で掴んでトモナリに向けて投げる。
「くっ!」
とんでもないスピードで飛んでくる鉄球を剣で受け止める。
腕が痺れるような衝撃が駆け抜け、トモナリは力を吸収しきれず後ろに飛ばされる。
「トモナリ、大丈夫なのだ!?」
「ああ、なんとかな」
トモナリは顔をしかめて手の痺れを治そうと、軽く手を振る。
「相手のレベルは80以上かもな」
力のステータスに偏っている感じがある。
「他のみんなは……大丈夫そうだな」
ウーたちが現れたのでトモナリたちの方が人数不利になる。
サントリとディーニ、それにルビウスが中国人覚醒者たちと戦い、ユウトたちが傭兵部隊を相手にしている。
コウが指示を出して、うまくまとまって相手しているので互角以上に戦えているようで安心した。
メイリンの方もウーと激闘を繰り広げている。
あっさり倒してしまうんじゃないかとすら思っていたのだけど、ウーもメイリンに全く引けを取っていない。
「‘よそ見か! いい度胸だな!’」
「おっと」
鉄球が飛んできてトモナリは横に飛ぶ。
どこかの均衡が崩れれば戦いの大勢は決するだろう。
トモナリは目の前の傭兵リーダーに集中することにした。
「ボーッ!」
「‘そんなもの通じるか!’」
ヒカリが火炎のブレスを放つ。
傭兵リーダーは鉄球を振り回して炎をかき消して、ヒカリに向かって鉄球を投げる。
「ふふん、そんなもの通じないのだ!」
鉄球が飛んでくる速度もなかなかのものだけど、自由に空を飛び回るヒカリにとってはそんなもの当たるはずもない。
「‘近づけば倒せると思ったか!’」
ヒカリに注意が向いた隙に、トモナリは傭兵リーダーと距離を詰めていた。
振り下ろされた剣を鎖で防ぐ。
たとえ魔力を込めていてもただの鎖から防ぐのは簡単じゃないだろうに、鎖にはわずかな傷がついた程度だった。
こんな武器を使っているのだし、ただの鎖つき鉄球ではない。
ゲートから見つかったアーティファクト武器な可能性が高い。
「‘おらっ!’」
鎖を短く持って鉄球を振り回す。
大きな鉄球は近くにいたままではかわせず、仕方なく傭兵リーダーと距離をとる。
「‘なかなかすばしっこいな。これならどうだ!’」
傭兵リーダーは鉄球を投擲する。
真っ直ぐに飛んでくるだけの鉄球などそう怖くない。
トモナリは横に動いて鉄球を回避する。
「‘ブースト!’」
傭兵リーダーがニヤリと笑って鎖に魔力を込める。
「なっ……」
鎖から鉄球まで魔力が伝わり、鉄球の穴から魔力が噴き出した。
後ろにあった鉄球が突如として襲いかかってきた。
「トモナリィ!」
とっさに剣でガードしたものの、トモナリはぶっ飛んでいく。




