古代遺跡地下坑道 2
「よっしゃ! ぶっ飛ばすのは私の得意分野だからな!」
サントリは拳に込める魔力を増やしていく。
渦巻く火炎が瞬く間に大きくなっていき、坑道の中がサントリの炎に明るく照らされる。
「吹き飛べ!」
サントリが腰を回して拳を突き出すと、炎が噴き出してゴーレムに襲いかかる。
熱された空気は逃げ場がなく坑道の中を駆け巡り、熱風となってトモナリの頬を撫でて去っていく。
「僕の出番なかったのだぁ〜」
ゴーレムの上半身が消し飛んだ。
熱されたゴーレムの断面が軽くプスプスと音を立てて、そのままゆっくりと後ろに倒れて動かなくなった。
「ゴーレムのコアも破壊できたみたいだな」
コアが残っていたら下半身だけでも動いたり、再生したりする。
サントリの一撃によって上半身ごとコアも破壊してしまったようだった。
「古代遺跡の外とモンスターが違うようだな」
古代遺跡の外にいたのは普通の生物としての体を持つモンスターであった。
対して古代遺跡にいるのはゴーレムのようである。
ゴーレムは大きくはアンデッドモンスターに分類されるが、細かく見ていくと普通のモンスターとは違う。
自然発生するものもいるが、高度な魔法技術によって作り出すこともできる人工モンスターだと言われている。
「ここのはどっちだろうな?」
人工的に作られたものだろうが、天然物だろうが大きな差はない。
ただトモナリたちの世界において、ゴーレムを作る技術はあるだろうと言われつつも自分たちで作れるところまではきていない。
スキルでゴーレムを作ることができる覚醒者はいるけれど、それは個人のスキルであって広く使える技術ではない。
それだけゴーレムを作るのは難しいということだ。
人工ゴーレムだとしたら古代遺跡の文明のレベルが相当高いことになる。
これから何が待ち受けているのか、想像もできない。
「ただ……ゴーレムは待ち受けていそうだな」
そして人工ゴーレムだとしたら、多少前向きな考えも出てくる。
わざわざ坑道にまでゴーレムを配置しているということは、古代遺跡に繋がっている、あるいは何かを守っているという可能性があった。
ここまできて引き返すことはしない。
トモナリたちは坑道の奥へ進んでいく。
他の覚醒者の気配がないなと思っていたが、何体かゴーレムと遭遇したところを見るにやはりあまり人は入っていないようだった。
坑道の広さの都合があるので、二、三人ずつ交代でゴーレムと戦っていった。
こうした狭くて戦いにくい環境も、坑道を他の人が避ける要因だったのかもしれない。
「なんだここ?」
「採掘現場……っぽいね」
少し広い場所に出てきた。
壁際に大きな木箱や今にも朽ちてしまいそうなツルハシが置いてある。
軽く状況を見た感じでは採掘をしていたように見える。
木箱は空だし壁に何かの鉱物が露出していることもないので、何を採掘していたのかは想像もできない。
ただ坑道はちゃんと坑道として利用されていた。
「……何かの音が聞こえるな?」
「これは……もしかして採掘する音?」
坑道の中にカンカンと音が響いている。
一定のリズムで聞こえてくるその音は、ツルハシで壁でも叩いているものに聞こえた。
その音も一つではなく、複数の音が重なって聞こえている。
トモナリたちは警戒しながら進んでいく。
「……ゴーレムが」
「採掘してる?」
一本道だったので音が聞こえる方へと進んでいくしかなった。
先の方から光が漏れて見えていて、トモナリを先頭にして明かりを消して先の様子を確認する。
そこはだいぶ広い空間となっていた。
壁際には何体ものゴーレムがいて、ツルハシを振り下ろして岩を壊したり、壊れた岩を運ぶゴーレムもいる。
「ゴーレムに採掘させてるのか」
「それはいいけど……この数相手にするの大変そうだね」
広い空間にゴーレムは何十体といる。
全てを倒すのはトモナリたちでも苦労しそうだった。
「でも他に行ける道なかったしな」
このままここを通り抜けていくしか道はない。
採掘現場からはいくつか道が伸びているように見られるが、ここを避けていく道はなかった。
「……引き込んで戦おうか」
広い空間でゴーレムに囲まれるとひとたまりもない。
ここは相手を制限して戦うのが最良の選択である。
ゴーレムを引きつけて坑道の狭い道で戦えば、一体ずつを相手にすることができる。
いざとなればそのまま逃げてもいい。
「じゃあ、俺が囮になるから、ミズキとユウトで最初は頼む」
「分かった。気をつけてね」
「転ぶなよ?」
ゴーレムを引きつける囮はトモナリが引き受ける。
頭にヒカリを、肩にユシルを乗せて、そろーっと採掘現場に入っていく。
カンカンと採掘する音が鳴り響き、反響し、うるさい。
「………………あれ?」
トモナリがある程度採掘現場に入ったらゴーレムがツルハシを振り下ろすのやめて、周りが一気に静かになった。
襲われるかもしれない。
そう思って身構えていたトモナリだったが、数秒の沈黙の後ゴーレムたちは再び作業に戻ってしまった。
ゴーレムが襲いかかってこなくて拍子抜けである。




