古代遺跡地下坑道1
「どっち行くかな……」
古代遺跡への出入り口も一つではない。
正面から入っていくルートの他に、横や後ろにも古代遺跡に入って行ける出入り口がある。
さらには古代遺跡までいかず山の中腹には、古代遺跡の下に入る坑道があるのだった。
おそらく坑道も古代遺跡に繋がっているのだろうとは思うのだけど、繋がっていない可能性も十分にあり得る。
「もしかしたらお宝ゾーンかもしれないしな」
考えられる可能性として、普通に古代遺跡に繋がっていることもあるだろうが、繋がっておらず貴重なアイテムが置いてある場所なこともある。
トモナリは、人がギリギリすれ違えるぐらいの広さがある坑道を覗き込む。
出入り口から差し込む光の他に坑道の中に明かりはなく、奥の方はただひたすら闇が広がっている。
アメリカの方は坑道を無視して古代遺跡の行ってしまったので、坑道の情報はほとんどない。
「どーすんだ?」
「難しいな」
ただ遠回りになるだけの道。
そんな可能性も否定できない。
他の人も古代遺跡の攻略を急ぐ中で、メリットが見えにくい坑道は後回しにされがちだった。
これが他の人が入ってこないゲートの中ならじっくり攻略もされるのだろう。
「人がいないなら意外と調べてみてもいいのか?」
逆に近道という可能性もある。
今は古代遺跡の方に他の国の覚醒者もいるだろうし、接触のリスクを避けて坑道から攻略する選択肢も考えられるのだった。
「……よし、ヒカリに聞いてみよう」
「むっ、僕なのだ?」
みんながトモナリの判断を持つ。
回帰前の記憶に古代遺跡の攻略情報はほとんどなく、坑道の存在もキャンプでの情報共有で初めて知った。
順当に考えれば古代遺跡の方に向かうべきだろう。
ただなんだか坑道にも惹かれるものがある。
迷ってしまって決められない。
だからヒカリに判断を任せることにした。
こういう時は野生の勘が大事である。
「どうする、ヒカリ? ここ行ってみるか?」
「ぬぅ〜」
急に判断を任されることになって、目を閉じたヒカリは腕を組んで小さくうなる。
「お宝……そう、お宝の匂いがするのだ」
ゆっくりと目を開き、ヒカリは坑道を指差す。
「行くのだ! ここには何かがあるのだ!」
「んじゃ、ここから攻略していくか」
ヒカリは坑道に何かを感じ取った。
今回はヒカリの勘に従うことにして、トモナリたちは坑道に入っていく。
インベントリから魔力で動くライトを取り出して、先の方を照らす。
誰も入っていない、とは流石に思っていない。
罠がある可能性もある。
「エド、頼むぞ」
「任せておけ」
ダンジョン由来の罠もあるかもしれないし、また誰かが仕掛けた罠もあるかもしれない。
暗い坑道の中でワイヤーを使ったトラップを見つけることは難しいので、ここは一つドラゴンの力を借りることにした。
トモナリはエドを呼び出した。
ミニ竜の姿ではデカいオオサンショウウオのようなエドは、翼もなく地面を這って移動する。
エドに先頭を進んでもらう。
足元に罠があればエドが気づく可能性は高い。
仮にエドが罠を発動させてしまっても、低い体勢のエドに罠は襲いかからないでトモナリたちの方に飛んでくることになる。
距離が空いていれば罠への対処もできる。
「ごーごー」
「ふふ、可愛らしいものだな」
ユシルはエドにまたがっている。
エドは特に怒るでもなく、微笑ましくユシルを受け入れていた。
「むっ!」
「ひょわっ!?」
「敵が現れたぞ!」
坑道の横道、そこで影が動いたことをエドを見逃さなかった。
大きく後ろに飛び退くと、驚いたユシルはエドの背中にしがみつく。
エドがいた位置に石の拳が振り下ろされた。
「ゴーレムだ!」
ヌッと姿を現したのはゴーレムだった。
門で戦ったものよりもゴツゴツとした、いわゆるゴーレムと言われてイメージするような姿をしている。
「……狭いな」
坑道の中は少しだけ広くなっていたが、横に三人並べるかぐらいの幅しかない。
高さはそれなりにあるけれどゴーレムは頭を擦りそうになっていた。
戦うことを考えたら前に出られるのはせいぜい二人だ。
「なら私が行くぜ!」
サントリが飛び出す。
「俺がフォローする。みんなは後ろから照らしてくれ!」
「僕もなのだー!」
明かりはみんなに任せることにしてライトをインベントリにしまって、トモナリはサントリを追いかける。
横も縦もあまり関係ないヒカリもトモナリに続く。
「だりゃああああっ!」
サントリは両腕に炎をまとわせる。
赤々と燃える炎は坑道の中を明るく照らす効果もある。
「吹き飛べ!」
風切り音を坑道に響かせ、上から突き出されるゴーレムの拳をかわす。
お返しにゴーレムの腕を殴りつける。
サントリの炎が爆発を起こし、爆風が駆け抜けた。
腕が粉々に吹き飛んで、ゴーレムは痛みに怯むようにバランスを崩した。
「雷神!」
トモナリはモーノから与えられた雷神スキルを発動させる。
天井近くまで振り上げられたゴーレムの腕に、太い雷撃が叩き込まれて大きな音が轟く。
「はっ……姉さんがいてくれるみたいだな!」
ゴーレムの両腕があっという間になくなった。
サントリはトモナリの雷に嬉しそうに歯を見せる。




