敵はモンスターだけじゃない4
「箱も見た目だけは豪華だけど、中身は安っぽい。ゲートの中のものじゃなくて、作り物だな」
「分かってたけど……なんだかガッカリだな」
こんなところに宝箱があるなら先に攻略している人が見つけているはずだ。
万が一の期待はしたものの、多分何もないだろうということはどこかで分かっていた。
「これの問題はまた別のところにあるな」
「問題って何なのだ?」
「見てみろ」
トモナリは矢を光に照らす。
「なんなのだ?」
「先がちょっとテラテラしてるだろ?」
「そう言われればそうだね」
よく矢尻のことを見ると、光を反射して艶やかさがある。
何かが塗ってあるようだ。
「多分毒だな」
「うげっ、毒?」
ニオイもないし、見ただけでは分かりにくい。
けれども矢の先端に塗るものなんて毒ぐらいである。
「仕掛けは新しい。多分外から持ち込まれたもの。そして矢には毒」
「いかにも、殺す気だな」
サントリは罠を仕掛けた奴の底維持の悪さを感じずにいられなかった。
矢でも当たりところが悪ければ覚醒者を殺せる。
しかし反射神経のいい覚醒者なら急所を避ける可能性は十分にある。
毒は急所を避けられた場合でも相手を殺す可能性を高めるための保険だ。
それだけ殺傷力を高めた凶悪な罠を仕掛けた奴がいる。
「誰かは知らないけど……他の攻略者を殺すことも厭わない奴らがいるってことだな」
わざわざ罠まで仕掛けるような危険な連中がいるということである。
他の覚醒者を警戒した方がいい、と言われていた。
それを冗談だと捉えていたつもりはないけれども、想像していたよりも危険な相手だった。
「これは持っていこう。後で毒の分析をお願いしようか」
なんの毒を使ったかで相手が特定できる可能性がある。
それに相手が同じ毒を多用する相手なら解毒薬も必要になる。
矢は持ち帰って調査をお願いすることにした。
「今後もこういう罠があるかもしれないな」
警戒しなければならないことが一つ増えた。
ダンジョンのモンスターや罠とは別に、罠の仕掛け方を知っている人が仕掛けた罠がある。
「…………俺たちの目標は攻略だ。怪しいものには極力手を出さないようにしていこうか」
良いものが手に入るかもしれない。
そんな期待を振り切るのは大変だが、トモナリたちの目的は古代遺跡の攻略である。
それも全員が無事で攻略せねばならない。
余計なリスクは避けるべき。
「いいのか?」
「俺にとってのお宝はみんなだからな」
「おー、言うねえ、うちのご主人様は」
「茶化すな」
「歯が浮くようなセリフ言うからさ」
安全第一。
危険な攻略だからこそ、最大限に安全を優先していく。
「おそらく罠を仕掛けた連中は遭遇すると敵対することになるだろう。気を引き締めていくぞ」
「めんどくさいわね」
「まあ、トモナリ君がやることに楽なことなんてないと分かってるんだけどね」
やはりよほど追い詰められない限り、人同士の争いは絶えることがない。
下手するとモンスターよりも人間の方が厄介だと感じるような時もある。
「‘まっ、私の前に立ちはだかるなら全員斬り捨ててしまえばいいのよ’」
今はメイリンがいる。
むしろ敵対する相手の方が可哀想なのかもしれない。




