敵はモンスターだけじゃない3
「魔石あったよ」
コアとはまた別にゴーレムの頭のところに魔石を見つけた。
手のひらぐらいの大きさがある魔石はインベントリに余裕があるトモナリが持っておく。
「ぬふふふふ……」
頑張ったヒカリはトモナリに抱っこされている。
赤ちゃんでも抱えるように横抱きにされたヒカリは嬉しそうにヌフヌフと笑いが漏れている。
「何変な声出してんだ?」
「ぬふぅ〜」
まあなんだか幸せそうだからいいか、とトモナリはそのままヒカリを抱っこして進んでいく。
「ん? あそこに何かあるよ」
少し登ってきて、家が立ち並ぶ平らなところにやってきた。
ここに並ぶ家もほとんど崩れていて、壁や床の一部が残っているぐらいである。
家の壁の間に何かがあるのをミズキが見つけた。
「宝箱じゃねえか?」
サントリが壁の間を覗き込む。
薄暗くて見えにくいが、箱状のものが置いてある。
何だかいかにも、という感じの宝箱であった。
「お宝なのだ!?」
宝箱と聞いてヒカリもトモナリの腕から飛び出す。
「取りに行ってもいい?」
「のだ?」
「んー……でも怪しくないか?」
ミズキとヒカリでチラチラとトモナリのことを見る。
宝箱にロマンはある。
ごく稀にゲートの中に宝箱があって、貴重なものがゲットできることもある。
ここはゲートの世界が外に出てきたもので、宝箱があることは否定できない。
しかしながらあまりにもあっさりした場所にある。
ちょっと探せば見つかるような場所に宝箱があるのは怪しい。
「罠かもしれないぞ」
宝箱に見せかけた罠。
そんなものもある。
あからさますぎるだろうとトモナリは思った。
「それでも確かめずにはいられないでしょ! ね、ユウト!」
「えっ、おれ? まあ、確かに男子たるもの宝箱はスルーできないけどさ」
「よしいけ! 宝箱開けるんだ!」
「おい! それが目的かよ!」
確かに罠っぽい。
そうミズキは思った。
だから代わりにユウトに行ってもらうことにした。
実際ユウトの方が体力の値が高い。
一般的に体力が高い方が頑丈であり、多少のダメージには動じなくなる。
「お前の方が素早さと器用さ高いだろ! 罠があってもかわせばいいんだよ!」
対してミズキの方が素早さや器用さが高い。
素早さは動きの速さ、器用さは体の動きに関する能力値である。
罠があったとしても回避の可能性が高いのはミズキの方であった。
「まあまあ……ユウト、行ってこい」
「おおおい!」
「お前の方がレベル高いだろ?」
「うっ……まあそう言われると」
戦いの場において男性女性の差はない。
男だから女だからとあまり差別はしないのだけど、総合的な確率を考えた時にユウトの方がレベルが高くて罠でも生き残る可能性が高い。
その点でいえばトモナリかメイリンがメンバーの中で最も安全なのだが、なぜかユウトかミズキの二択となっている。
「ユシルつけてやるから」
「守る!」
ユシルは両手を上げてやる気の顔をしている。
できる限りリスクは避けたい。
防御ができるユシルをユウトにつけて、宝箱をチェックしてもらう。
「チェッ……いくか」
「頑張れ!」
「頑張るのだ〜」
ため息をついて、ユウトは壁の間に入っていく。
ギリギリ人が通れるぐらいの間を慎重に進んでいく。
壁の間には光が入ってこなくて、少しひんやりとしている。
ミズキとヒカリが後ろから応援していた。
「ゴクリ……」
ユシルはいつでもユウトを守れるように手に汗を握って周りを警戒している。
「あっ?」
モンスターが飛び出してくる。
何かが飛んでくる。
そんなことを警戒していたユウトは足に引っかかるものを感じた。
ふっと足元に視線を落とした瞬間、宝箱がわずかに開いた。
「ユウト!」
「守る!」
宝箱から何かが飛び出した。
ユウトは完全に油断していたが、ユシルはちゃんと宝箱のことを見ていた。
手を伸ばして魔力のバリアを張る。
飛んできた何かはユウトの目の前でバリアにぶつかって弾かれる。
「うわっ、あぶね!」
クルクルと回転しながら地面に落ちたそれは、矢であった。
「何だよこれ……トモナリ!」
ユウトは矢を拾い上げてトモナリに向かって投げる。
「これは……」
矢を見てトモナリは顔をしかめる。
「罠だな。しかも……ダンジョンのものじゃなさそうだ」
矢は比較的新しい。
それだけじゃなく、矢尻はモンスター用に大きく特殊な形状をしている。
ダンジョンの中の環境を考えるに、偶然矢尻がトモナリたちの世界で使われるようなものと同じになるはずがない。
つまりこれは誰かが仕掛けた罠なのだ。
「宝箱は空だ! ただなんか罠のための装置があるだけ」
矢を観察している間にユウトは宝箱を開けていた。
宝箱には矢を飛ばすための装置があるだけで、お宝も何もない。
ユウトは宝箱を抱えて戻ってくる。
「ただの罠だったな」
トモナリたちも宝箱の中を確認する。
古めかしいカラクリなんてものではなく、シンプルな作りのトラップ装置が中に仕掛けてある。
「ワイヤーは艶消し。プロの仕業だな」
ユウトが足に引っ掛けたのは細いワイヤーだった。
引っ張ると宝箱の罠が作動するようになっているが、見えにくいように艶のない黒色に塗ってある。
完全に人を狙った罠である。




