敵はモンスターだけじゃない2
「ぐおおおん、なのだ!」
ヒカリが近づくとゴーレムも動き出す。
ゴツゴツとした岩で出来てはいるが、やや丸みを帯びたフォルムは割と洗練されたデザインだとトモナリは思った。
「おお、なんか特撮みたいだな」
ヒカリがゴーレムと組み合う。
ゴーレムはデカ竜ヒカリとほぼ同じサイズで、遠くから見ていると着ぐるみ同士で何かの撮影でもしているかのよう。
「ぐぬぬ……おぬぬ……」
力は拮抗している。
ヒカリが押したと思えばゴーレムが押し返し、余計になんだかプロレス感。
「ぐににに……ちりゃー!」
しかしヒカリとゴーレムには大きな差がある。
ゴーレムには無尽蔵の体力があるということだ。
どれだけ押し合いをしてもゴーレムは疲れない。
対してヒカリは疲れてしまう。
押し切れないのならヒカリの方がちょっとだけ不利なのであった。
ヒカリは体を回転させ、力を込めて押していたゴーレムのバランスを崩させる。
「必殺、なのだ!」
そしてゴーレムにはない武器である尻尾で叩きつける。
太い尻尾で殴られると普通に痛い。
ゴーレムはゴロゴロと地面を転がっていく。
「ドヤァ!」
ヒカリはしっかりとトモナリの方を振り向いてドヤ顔を披露する。
「ヒカリ、来てるぞ!」
「ぬわっ!? ふぎゅっ!」
ゴーレムもいわゆるアンデッド系である。
つまり痛みを感じず、多少のダメージぐらいには全く動じない。
すぐに起き上がったゴーレムはドヤ顔で油断しているヒカリを殴りつけた。
今度はヒカリが地面を転がる。
「怒ったのだー! ボーッ!」
ヒカリもすぐさま起き上がり、口を大きく開けてブレスを放つ。
赤い炎が広がり、ゴーレムに襲いかかる。
荒れ狂う炎にゴーレムが包まれて、姿が見えなくなる。
「やったか?」
「……いや、ゴーレムは無事だ!」
炎がゆらめき、隙間からゴーレムの姿がチラリと現れる。
炎の中をゴーレムが突き進む。
燃えない岩の体は炎のダメージが薄い。
ゴーレムは炎も関係なくヒカリに近づいていき、大きく拳を振り上げる。
「ぬぅん! ぬおおおん!」
炎の中から飛び出してきた拳をヒカリがかわす。
反撃でゴーレムを殴り、尻尾で足を払う。
倒れたゴーレムを踏みつけ、頭を潰してやろうと足を振り下ろしたところでゴーレムがヒカリの足を掴む。
「にょわー!」
ゴーレムはヒカリのことを投げ飛ばして体を起こす。
「おぉ〜……」
「凄い戦いだね」
手伝おうと思えば手伝えるだろう。
しかしトモナリたちは思わずヒカリの戦いに魅入ってしまう。
ヒカリがやる気を出していることだし、トモナリもギリギリまで手を出すつもりはない。
B+ゲートの小ボスを単独で相手にできるのなら、ヒカリの実力もだいぶ上がったものであると感心していた。
「これなら、どうなのだ! ヒョー!」
炎が効かないと学習したヒカリは別のブレスを放った。
白い氷のブレスは吹雪のように空気を凍らせながらゴーレムに迫る。
目の前すら見えないブレスの中で、ゴーレムは前に進んで行こうとする。
ただ炎の時と違う変化がゴーレムに現れた。
「体が凍りついていく」
熱くなっても岩に大きな変化はない。
けれどもゴーレムの体の表面が凍りつき始めた。
みるみると凍りつく面積は広がっていき、ヒカリまであと数歩というところでゴーレムは完全に氷漬けになってしまった。
「僕の新技披露なのだ」
ゴーレムが動けなくなった。
ヒカリは翼を大きく広げて高く飛び上がる。
「あれは……」
ヒカリの体に電気が走り、バチバチと音が鳴る。
手に魔力を集めて魔力の爪を作り出して、電撃にもまとわせる。
モーノが加わってトモナリも雷の力を操れるようになった。
そしてヒカリもちょっと頑張って同じように雷を使えるようになっていた。
ルビウスが仲間になって炎を使えるようになり、エドやミヒャルを真似て土や水なども使えるヒカリの学習能力は意外と高い。
モーノとトモナリが電撃を使うのをみて、ヒカリもこっそり練習していた。
目の前に参考にできるものがあると吸収してしまうヒカリは優秀なのだった。
「どどーん!」
ヒカリは急降下して、氷漬けになったゴーレムに爪を振り下ろす。
雷が落ちたような轟音が鳴り響く。
「‘凄いわね’」
ゴーレムは氷ごと真っ二つになってしまった。
「トモナリー! やったのだー!」
デカ化のタイムリミットを迎えて、ポンッとヒカリが小さくなる。
ピューンとトモナリの胸に飛び込むヒカリを受け止めて、頭を撫でてやると満足そうに笑顔を浮かべる。
「ちゃんとコアも破壊されていますね」
ゴーレムはバラバラにしたって死なない。
コアと呼ばれる心臓部を破壊せねば倒さないのだけど、ヒカリの電撃によってコアは粉々に砕け散っていた。
これならばちゃんと倒したと見ていいとディーニも安心した。
「僕も強いのだぁー!」
ヒカリはチラリとメイリンのことを見る。
メイリンへの対抗心で一人で戦ったけれど、トモナリが想像していたよりもヒカリは強かった。
なかなか単体で戦うところを見ないので、大なり小なり驚きはあったのだった。
もはや単なるマスコットではないのだ。




