敵はモンスターだけじゃない1
「まずはエリア1だな」
古代遺跡は真ん中に大きな城のような建物があり、周りを囲むようにいくつか大小の廃墟が立ち並んでいる。
さらにその外側には、もはや建物の形もなしていない廃墟が残されている。
よく見ると古代遺跡は山になっていて、外側から内側に螺旋状に登っていく形となっていた。
分かりにくいけど全体として見ると大きな城のようでもあった。
森から出て山の下、崩れ落ちた建物跡が点々と残る場所のことをエリア1とひとまずアメリカは呼んでいた。
「あっちにレッドゴブリンがいるよ!」
まだ少し壁が残された建物跡にレッドゴブリンがたむろっている。
真ん中には焚き火まで用意してあって、レッドゴブリンの知能の高さがうかがえる。
こうしたモンスターは先に攻略を始めた時にも討伐を行なっているのだが、時間が経つとふらっとどこからか現れて復活してしまうのだった。
「気づかれたか!」
崩れた建物の柱だったものに登って周りを見張っていたレッドゴブリンが、トモナリたちに気づいてやかましく鳴く。
焚き火を囲んでいたレッドゴブリンたちも、見張りのレッドゴブリンの声でハッとトモナリたちの方を振り向いた。
「くるぞ!」
周りをしっかり捜索しながら進んでいきたい。
モンスターがいては落ち着かないので、トモナリとしてもレッドゴブリンを倒すつもりだった。
「‘メイリンも頼むぞ!’」
「‘ダーリンのお願いならね’」
初日は腕試しもあってメイリンはほとんど動かなかったけれども、今日からはメイリンの働いてもらう。
言葉の関係もあって、メイリンには細かな指示を出さずに自由に動いてもらう。
「かぁ〜、あの人強いなぁ」
トモナリたちはメイリンが強いということを分かっているけれど、サントリはメイリンがどんな人か知らない。
襲い来るレッドゴブリンを、まるで埃でも払うように切り捨てていく。
能力的な高さもあるが、戦闘経験においても高い経験値があることを感じさせる圧倒的な戦いぶりだった。
「この形で問題なさそうだな」
下手に連携をとったり指示を出したりするよりメイリンは自由に動いた方が全体的な戦力バランスがいい。
一応メイリンの行動を気にかけつつ、このままのスタイルで行っても大丈夫だろうとトモナリは思った。
「……この作り、いわゆる曲輪ってやつかな?」
何か崩れた門のようなものを見て、コウがつぶやいた。
「くるわ?」
「日本のお城なんかで見られる区画の名前だよ。お城の周りを防衛や生活のためにいくつかに区切ってある場所で、本丸とか二の丸とかそんなの聞いたことない?」
「あーなんだか、うっすら聞いたことあるような気がする」
「そんな感じの作りなのかなって思ったんだ」
「つまり……どゆこと?」
「ここは一つの巨大な城。あるいは城郭都市、とでも言ったらいいのかな? そんな場所だと思うんだ」
「なるほどなのだ」
「本当に分かってる? ヒカリちゃん〜?」
「ももも、もちろん分かってるのだ!」
話を聞き、ウンウンと頷くヒカリの頬をミズキがつっつく。
ヒカリは真剣な顔をしているが、実際はあまり話を分かっていなかった。
「古代遺跡ってとりあえず呼んでるけど、ここは一つのお城だったんじゃないかってことだよ」
「ということなのだ。ミズキ、分かるのだ?」
「ヒカリちゃんだってわかってないくせに!」
「元お城か。あり得ない話じゃなさそうだな」
今いる場所は完全に廃墟になっているが、中央の巨大な建物はお城っぽい。
周りの環境が攻略に関係ないことも多いのだけど、時には周りの環境から推測されることが攻略に影響を及ぼすこともある。
お城っぽいということはどこか頭の隅に留めておいてもいいのかもしれない。
「ただ今はもうモンスターの根城になってるようだな」
門っぽい廃墟を抜けた先には、また建物っぽい廃墟が並んでいた。
そこには頭が二つ生えているダブルヘッドオークがいる。
何かしらの文明や人の気配を感じる廃墟だが、いるのはモンスターばかりである。
「……あー、復活してるのか」
さらに進んでいくとまた門のようなものがある。
開け放たれているので門を通ることに問題はないのだけど、門を守る存在がいるのが問題なのであった。
門のど真ん中に大きなゴーレムがいる。
やや丸みを帯びた形をしたゴーレムは守るべきものがないにも関わらず、そこに立ち続けて侵入者を阻んでいた。
門番ゴーレムも何回か倒されている。
けれども時間が経つと復活する。
こうした要素もまた古代遺跡の攻略を困難にしているのだった。
「ここはサクッと倒すぞ!」
まだまだ序盤。
中ボスどころか、小ボスぐらいの存在なので、こんなところで躓いていられない。
「ふっふっふっ……ここは僕に任せるのだ!」
ヒカリは密かに燃えていた。
メイリンが思ったよりも強い。
トモナリがメイリンになびくとは思えないが、それでもダーリンと呼んでトモナリに色目を使うメイリンは厄介な敵だった。
強さでもトモナリの気を引かねばならないとヒカリの鼻息は荒い。
「ぐおおおん! やるのだぁー!」
「あっ! ヒカリ!」
ヒカリはデカ竜姿になってゴーレムに向かっていく。




