古代遺跡5
「‘ほんと、不思議よねぇ’」
トモナリの能力は、今のトモナリ一人を見ていては測れない。
ドラゴンズコネクトでどの形態になるかによって少しずつ能力も違うし、ヒカリとユシルというトモナリを手助けする存在もまたトモナリと同一視すべき。
メイリンはオートマタ五姉妹のことまで考えてはいないが、トモナリと戦うと一口に言っても目の前の青年一人とだけ戦うことにはならないのだ。
「無視、するな!」
サーシャがメイスでレッドゴブリンの頭を殴りつける。
グシャリと湿った鈍い音がして、レッドゴブリンは膝から崩れ落ちて倒れる。
「ふい〜、結構大変だったな」
レッドゴブリンは隙をつくような攻撃もしてくるのでそこそこ面倒な相手だった。
「大変だった、ぐらいで倒せるなら上出来だよ」
そもそも古代遺跡はゲートの難易度としてB+だ。
Bクラスの想定レベルは一応70前後から90近くになる。
+までついていることを考えると必要なレベルは80以上となることだろう。
まだ古代遺跡ではなく、その周りの森のモンスターであるけれど70から80ぐらいのレベルが必要な相手と戦ってまだ大変だったとこぼせるぐらいなら、まだまだ余裕であると言ってよかった。
「もうちょっと倒して回りながら古代遺跡の近くまで行ってみようか」
もちろんみんなの能力値は高いのでレベルに縛られて考えて心配などしていない。
レッドゴブリンはインベントリに回収して、トモナリたちはさらに古代遺跡に向かって進んでいく。
尻尾と耳が大きいコボルトや大きなツノの生えたウルフなど、通常なら弱いモンスターと知られているものの強化版のモンスターが森の中では出現した。
特殊な能力を持っているというより、純粋に強くなったような感じだった。
「‘全く問題なさそうね’」
「‘自慢の仲間たちだからな’」
「‘羨ましい……’」
「しょーりなのだー!」
「やったな、ヒカリィー!」
「ウェーイなのだ〜!」
双頭のオークを倒し、ヒカリとユウトはハイタッチする。
流石にスキルまで完全に温存しておけるような余裕はないものの、メイリンが手を出すまでもなくモンスターに対処できていた。
レベルを詐称しているのではないかと疑いたくなるほどの実力であるとメイリンは思った。
「‘……交流戦でも一緒だったものね’」
「‘あの時一緒だった奴らとは……’」
「‘今はもう敵同士。味方だった時でも仲良しってわけじゃないもの’」
「‘そうなのか。うちの連中は気さくでいいぞ?’」
「‘私人見知りするタイプなの’」
メイリンは冗談めかして笑う。
「ようやく着いたね」
ジャングルのような鬱蒼とした森を抜けて、古代遺跡の近くまで出てきた。
遠くから見えるほどの古代遺跡は巨大だなと思っていたけれど、近づいてみると改めて巨大さを思い知る。
「ここを攻略するのか」
「ご飯必要そう」
「確かに時間かかりそうだな」
一日でサラッと攻略できるような大きさには見えない。
不測の事態も想定して、食料なども持ち込んだ方がよさそうだった。
「ぬっ、トモナリ! 誰か来るのだ!」
「みんな、隠れるぞ」
高めに飛び上がって古代遺跡を見ていたヒカリが、遺跡の方から誰かが来るのを見つけた。
トモナリたちは古代遺跡から離れた森の中に身を潜める。
「中国ではなさそうだな」
「別の国……あるいは集団も来ているって話だったからな」
アメリカの覚醒者ではない。
しかしアメリカと競い合っている中国の覚醒者でもない。
浅黒い肌をした中東系の男たちは、どちらでもない第三国である。
敵か味方かは分からないが、見た目だけで判断するなら柄が悪い。
「モンスターだけじゃない……他に攻略しようとする覚醒者も敵になるかもしれない」
「面倒だね……」
トモナリたちは対人戦闘の経験がある。
全くためらいないとは言えないものの、人を倒す覚悟はある。
それでもあまり人と戦いたくはないのが本音だ。
「……とりあえず一度ベースキャンプに戻ろう。攻略はまた仕切り直しだ」
今日はモンスターと戦うことができるかの確認だった。
このまますぐさま攻略するつもりはない。
男たちにバレないようにしながら、トモナリたちは撤退したのだった。




