問題解決、問題発生1
「‘意外とこの子、気に入った’」
「この娘、見る目があるな」
メイリンが現れたことをみんなに伝え、動きがあるまでさらに数日待つことになった。
ヒカリとミヒャルの奪い合いになるので仕方なくルビウスとエドも動員した。
最初こそ不人気だったエドのことも、リーインは気に入ったようでエドもちょっと満足そう。
「ええいこの! いつまでこうしておればいいんじゃ!」
「ふっ、僕がモテモテだから嫉妬してるのだ?」
「ちがわい! お主はちんちくりんぬいぐるみ体型だから可愛がられておるだけじゃろうて!」
「ぬぅわにおぅ!?」
「こらこら……喧嘩しない」
ルビウスは子守にかなり不満げである。
対してヒカリはちょっと悟ったようにチヤホヤされている。
「私は可愛い?」
「‘うん、可愛いよ!’」
そんな隙間を狙うようにミヒャルは愛嬌を振り撒いている。
元より可愛がられるのが嫌いではない。
ヒカリのようにトモナリ至上主義でもないので、実はヒカリ人気を二分している。
ドラゴンたちに加えてユシルも合わせて五人の子供たちの相手をしている。
今のところはうまく回ってる。
「まあ便利な能力だよな。子守りまでできるんだからさ」
「すごいだろ?」
「私も一体欲しい」
「悪いな、サーシャ。あいつらはあげられないんだ」
「んな、子供みたいなこと……」
サーシャも子供たちの手前、ドラゴンたちを抱っこするのを我慢している。
「トモナリ君、みんな!」
「ミズキ、どうかしたか?」
ミズキが慌てた様子でゲートの中に入ってきた。
「なんか船近づいてくるよ!」
「船?」
トモナリたちは顔を見合わせる。
「ユウト、お前はこのまま子供たちを頼む」
「オッケー」
「俺たちは外に出るぞ」
何かある島ではないので、人が近づいてくるようなことはない。
それなのに船が来るというのはやはり問題発生と言わざるを得ない。
「僕も行ってくるのだ」
「‘行っちゃうの?’」
「トモナリは僕がいないとダメなのだ! みんなのこと守るのだ!」
「‘……頑張ってね、ヒカリちゃん’」
「うぬ! 任せるのだ!」
「ぬあっ!? ならば妾も……」
「‘ダメ!’」
「ぬうおぅ〜なぜだぁ〜!」
外に出ると真昼間。
ゲートの洞窟の中も子供たちのために明るくはしているが、やはり昼間の明るさとは比べ物にならない。
目を細めるトモナリはゲートから少し離れた海岸から海を見る。
「本当だ……こっちに来てるな」
一隻の船が島の方に向かって来ていた。
乗っている人は見えず、逃げるにももうだいぶ近づいていた。
船に乗っているのがメイリン、あるいは関係者ならないいい。
しかし敵だった場合は戦うしかない。
「ミズキとコウは隠れろ。いつでも敵を襲えるように」
「りょうかい!」
「分かった」
速度があるミズキと魔法で攻撃できるコウは奇襲ができるように備えてもらう。
一応敵襲を想定して、その場合の動きも考えてある。
トモナリも剣のルビウスをインベントリから取り出し、サーシャも盾とメイスを装備して戦いに備える。
緊張でトモナリの鼓動が速くなる。
いざとなればゲートに逃げ込む。
ゲートはレベル80以上は入ることができない。
それ以下のレベルならトモナリたちに勝てるような人はまずいないはずである。
食料も十分にはあるが、籠城戦はなかなかキツイものがある。
大きめの船がつけられるような場所は島にない。
海岸から少し離れて船が止まり、数人の人が降りてくる。
「メイリンがいるな」
アジア系の人が数人と外国人が数人。
その中にはメイリンもいる。
しかし敵に囚われたという可能性も排除できない以上は、トモナリの緊張は続く。
「ワン・メイリンさんの協力者のアイゼントモナリさんですね?」
日本語で話しかけられた。
サングラスをかけた日本人っぽい男性はスーツが濡れるのも構わずザブザブと海水をかき分けて進んでくる。
「あなたは誰ですか?」
トモナリであるとは答えないままに返事をする。
「私は日本覚醒者協会の我孫子と申します」
アビコはサングラスを外し、胸ポケットから手帳を取り出す。
パッと開くとそこに顔写真と名前が書いてあった。
「‘……成功したわよ’」
身分証も信用しきれない。
トモナリがメイリンを見ると、メイリンは笑顔を浮かべて手を振る。
「色々と事情があるようですが、こちらのアメリカの覚醒者協会が子供たちを保護しに来ました」
アメリカにイーリンたち子供の保護をお願いする。
それはどうやら成功したようであった。
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「‘私も含め、しばらくはアメリカにお世話になることになりそう’」
「‘そうなのか’」
どうやったのかは知らない。
ただアメリカはメイリンと子供たちを保護することに決めたようである。
しかし保護するといっても子供たちの所在は日本国内だ。
流石に秘密裏に連れてくる、ということも難しかったらしくて、日本に協力を要請したようだった。
「‘俺たち怒られないかな?’」
「‘悪いようにはさせないわ。協力して私だし、あなたたちに不利益になるようなことはないと誓うし……なんなら一緒に来るかしら?’」
「‘それは最終手段だな’」
言ってしまえばグレーどころかかなりブラックな領域のことをしていた。
バレないだろうと思ってやっていたのだけど、ガッツリバレてしまった。




