意外な関係2
「‘子供たちは、中に?’」
「‘ああ、寝てるよ’」
「‘迷惑はかけてないかしら?’」
「‘子供にしては静かすぎて……心配なぐらいだ’」
「‘……あの子たちも教育を受けているから’」
メイリンは少し悲しそうな顔をする。
もう本物であることは間違いない。
トモナリが警戒を解くと、メイリンはスッとトモナリの横に来て空いていたキャンプ用の折り畳み椅子に座った。
「‘会っていくか?’」
「‘いいえ、起こしちゃ悪いもの’」
「‘そうか。そんなにすぐに行くつもりなのか?’」
夜が明けてからでもいいだろう。
トモナリはそう思うのだけど、メイリンはただ微笑んだ。
「‘やることが多いもの。早くあの子たちを安心できるところに送り届けてあげたいの’」
メイリンは子供には興味ないと言っていたが、トモナリにはそんなふうに思えない。
「‘…………あの子、リーインはどうしてる?’」
「‘リーイン? あの子は良い子だね。他の子のまとめ役みたいな感じだよ。今はたぶんヒカリのこと抱えてるのかな?’」
ゲートの中の様子は確認していないが、リーインはヒカリを抱きかかえてゲートに入っていった。
なんというか、無言系無表情少女にヒカリはよく抱きかかえられている気がする。
ちなみにミヒャルも出してやったら、別の子がミヒャルの子を抱き枕にしていた。
ルビウスは絶対拒否で、エドは抱き枕にされず少し落ち込んでいた。
オオサンショウウオみたいなエドも可愛いと思うのだけど、子供には不評だった。
「‘リーインのこと、気になるんだな?’」
「‘……そうね’」
トモナリもリーインのことが気になる。
正確にはリーインとメイリンの関係が気になっていた。
やっぱり二人はちょっと似ていると感じた。
それに加えてメイリンがリーインのことを気にかけていることから、トモナリは二人の間に何か関係があるのではないかと疑っている。
メイリンも、トモナリが何を考えているのか分かっていた。
「‘…………あの子はね’」
長い沈黙。
メイリンが意を決したように口を開く。
「‘私の妹なの’」
「‘妹?’」
「‘そうよ。実の妹。血のつながった姉妹。……あの子は私のことなんて知らないと思うけどね’」
なぜメイリンが国を裏切ってまで子供たちを助けようとしたのか。
その理由がようやく分かった。
「‘あの子が生まれる前に、私は覚醒者としての才能を見出されて家を離れた。だからきっと姉の存在なんて知らないの’」
メイリンは膝を抱える。
いつものような余裕を感じさせる雰囲気はなく、どこか寂しげな少女のようである。
「‘あの子が幸せになればよかった……でもこんなふうに生贄にしようとするのは、許せなかったの’」
「‘…………そうか’」
色々と聞きたいことはある。
けれどもトモナリは全ての疑問を飲み込んだ。
人にはそれぞれ色々な事情がある。
触れられたくないこともある。
今はメイリンの過去に触れるべきではないと感じた。
「‘いくらでも匿ってやるからさ。好きにやってこいよ’」
仲間だっていざとなれば捨て駒にする。
世界中のどんな相手だってメイリンは同じようにするだろうが、たった一人だけそうできない女の子がいる。
それがリーインであったのだ。
「‘優しいのね、ダーリン’」
「‘俺のことをダーリンと呼んでくれる女の子のためだからな’」
トモナリがフッと笑うと、メイリンは目を見開き、そして照れくさそうに笑った。
「‘そう時間はかからないわ。散々荒らしたから追っ手も来ないはずよ’」
メイリンは椅子から飛び降りるようにして立ち上がる。
「‘もう少し、お願いね。そしたらたくさんお礼してあげる’」
振り向いたメイリンは軽くウインクする。
「‘ああ、子供たちは任せてくれ’」
「‘それじゃあ行くわね。またね、ダーリン’」
メイリンは指ハートをしながら暗闇に消えていく。
あっという間に気配が感じられなくなり、トモナリはどっと疲れたような気になって近くに置いてあったクーラーボックスから飲み物を取り出した。
「リーインは丁重に扱わなきゃな」
国一つ挙げても捕らえられないようなメイリンを怒らせるわけにはいかない。
ヒカリにはもうちょっと我慢してもらおうと思ったのである。




