子供救出作戦4
「まさか、メイリンの協力者か?」
メイリンではない人が子供たちを連れてくることは知っている。
それが男なことも知っている。
第三埠頭のアジア系の男の死体という話は、今起こるにしてはあまりにもタイミングが良すぎる。
全く別の人が突然港で殺されたなんて考える方が不自然というものだろう。
今トモナリたちに降りかかっているトラブルと、警備員たちが話していたトラブルには共通のものがあるのではないか。
誰もがそう思った。
「……どうする?」
「第三埠頭に行ってみよう」
話の内容としては、トモナリたちにとって良いものではなかった。
しかしあまりにもヒントが何もないこの状況においては、関係ないと聞き流せる話でもない。
トモナリは第三埠頭に向かってみることにした。
「第三埠頭はそこから左に行った方だよ」
無線で話を聞いたコウから指示が入る。
「ここで死んでたのか……?」
第三埠頭に着いてすぐ、中に入らないようにと規制線が張られているところがあった。
見張りなんかはおらず、立ち入り禁止のテープが潮風に揺れている。
一応事件現場を覗き込んでみるが、当然ながら死体なんかは残っていない。
「コンテナを探そう」
トモナリたちは第三埠頭のコンテナを確認していく。
「うーん、違うな」
まずは色を確認する。
コンテナの色は青だから、それ以外の色は無視。
青なことを確認したらコンテナに書いてある標識を確認する。
しかし聞いていたコンテナはなかなか見つからない。
「トモナリ! 誰かがトモナリのことつけてるのだ!」
「つけてる?」
もうちょっと細かく教えてくれたっていいよな、と苛立ちを覚え始めていたトモナリにヒカリから通信が入る。
「全員警戒。敵だ」
ヒカリの通信を受けてトモナリは警戒を強める。
全く気づかなかった。
トモナリたちだってしっかり周りを警戒しつつコンテナを探していた。
それなのにヒカリを含めてつけられて初めて相手に気づいたのである。
警備員なら真っ先に声をかけてくるはず。
声をかけることもなく、トモナリたちにも気づかれずに尾行してくる相手は警備員以外の何かだ。
今の状況を考えるに、敵だろうとトモナリは思った。
スルーすることはできない。
いつ襲われるかも分からないし、トモナリが考える敵ならば狙いは子供。
このまま子供たちを見つけてしまうわけにもいかない。
「‘貴様ら何者だ?’」
トモナリたちが警戒し始めたのを感じたのか、つけてきていた相手が姿を現した。
相手は二人。
どちらもアジア系の顔つきをした男たちである。
「‘荷物を確認してる警備の者だよ’」
幸い英語で話しかけてきたので、トモナリも英語で答える。
誤魔化せるとは思っていないが、正直に正体を話す気はなかった。
「‘そんなものをかぶっていて、警備だと?’」
男たちは顔を晒しているが、トモナリたちは目出し帽で顔を隠している。
今のところ見た目で怪しいのはトモナリたちの方だった。
「‘あんたたちこそ何者だ? 港の関係者には見えないぞ’」
「‘……俺たちは子供を探している。そして、子供を探している奴らも探してるんだ’」
男たちはインベントリから武器を取り出す。
一人は剣で、一人は槍である。
「‘お前ら……裏切り者の仲間だな?’」
「‘そういうあんたらは子供を生贄にしようとしてるらしいな?’」
「‘やはり……あの女の仲間か!’」
「みんな、くるぞ!」
男たちは殺気を放って襲いかかってくる。
「‘一人は残しておけ! ガキがどこにいるのか聞き出すんだ!’」
「ミズキとサーシャ、俺とユウトで戦うぞ!」
今回五姉妹は目立つので連れてきていない。
コウを除く四人しかいないので、それぞれ二人ずつで一人を相手にする。
トモナリとユウトで剣の男を相手にし、ミズキとサーシャで槍の男と戦う。
相手に対応するようにトモナリもインベントリから剣を取り出す。
ただし今回はルビウスではない普通の剣だ。
「チッ……速いな!」
剣の男の攻撃を受け止めてユウトは思わず舌打ちする。
攻撃そのものは案外軽く、受け止めることに問題はない。
しかし剣の男の攻撃速度はユウトよりも速い。
能力値としては力が低く、素早さが高いタイプなのだろう。
力が低いことは救いだが、それが弱点となるわけでもない。
力が低くとも武器がちゃんとしたものであれば、人間相手には致命傷を与えることは難しくない。
「はっ!」
「‘なかなかやるな’」
ついでにトモナリたちには一つ制限がある。
万が一相手に逃げられた時、正体がバレていると面倒なことになってしまう。
トモナリのスキルはどれも特殊なものである。
特にドラゴンズコネクトなんて、使うと見た目が変わってしまう。
スキル構成が特殊だとそれだけで相手のことを調べられる。
つまり使うスキルに制限がかかってしまっているのだった。
「‘ダークチェーン!’」
対して剣の男の方は普通にスキルを使ってくる。
魔力で作られた黒い鎖がユウトの腕に絡みつく。
「くっ! なんだこれ……力が……」
黒い鎖が絡みつくと、体の力が抜けてしまったような感覚に襲われた。
「ユウト!」
「あぶねっ!」
剣の男が迫り、剣がユウトの肩を掠める。
明らかに体が重たく感じられていた。




