子供救出作戦3
「何があったんだ?」
「細かいことは分からない。けど本当は俺たちがここまで迎えに来る予定じゃなかったんだ」
流石にメイリンも一人ではない。
本当にごく僅かであるが、メイリンに同調してくれる人もいた。
今はメイリンがわかりやすく動いて当局の目を引きつけ、その間に仲間が子供たちを移動させるという作戦だった。
本来はトモナリたちは子供を匿うゲートで待機して、そこまで子供たちが連れてこられる手筈になっていた。
しかし港まで来てほしい、という連絡があったのである。
予想外の何かが起きている。
「来てほしい、そしてコンテナの番号だけ連絡があって、以降は何もなし……」
「だからこんな時間なのか」
今はもう夕暮れ。
人と会うのではなく、子供たちがいるだろうコンテナを探すためには人がいない夜でなければいけなかった。
「よし、できるだけ人に見られないように気をつけるんだ」
トモナリたちは目出し帽をかぶって顔を隠す。
怪しさ全開だが、万が一にも顔を見られると危険なので仕方ない。
「ヒカリとユシルはバレないように頼むぞ」
「うぬ!」
「任され!」
どうしたってヒカリとユシルは目立つ。
見つかればトモナリと関連付けられてしまうことはしょうがない。
そのためにヒカリとユシルには少し離れていてもらうことにした。
具体的には黒い布をかぶって姿を見えにくくして、高い位置から俯瞰して状況を見守ってもらうのだ。
基本的に監視カメラは上を撮らない。
カメラよりも上を飛んでいればバレる可能性はほとんどないと言っていい。
黒い布もかぶっておけば、一瞬カメラに映り込んだくらいじゃ何か分からないはずである。
「コウ、頼んだぞ」
「大丈夫、指示出しぐらいならできるよ」
今回コウはバックアップ役である。
魔法使いであるコウは強力な魔法攻撃を使えるが、その分身体能力は低め。
もし仮に敵や関係ない人に見つかった時の選択肢は素早く静かに相手を制圧するか、逃げるかである。
魔法は強いが派手で目立つ。
身体能力が低めで逃げる能力がやや劣るコウは待機となった。
「聞こえるな?」
マサキは手に持った無線機が機能しているか確かめる。
ゲート中でも互いに連絡が取れるようにと買った割といい無線機で、通信ができる親機をマサキ、ヒカリ、コウが持ち、ユウトたちはイヤホン型の子機を身につけている。
ちゃんと無線機が機能している。
トモナリの声が聞こえてみんなが頷く。
「子供たちを助け出そう」
準備をしている間に完全に日が落ちた。
昼間は貨物の積み下ろしで人も行き交っていたが、夜になると人の姿はほとんどなくなる。
ただ油断はできない。
警備員やカメラなど荷物を守るための必要な防犯はなされている。
トモナリたちは気配を消して港に入っていく。
「ただ意外と難しいよな……」
港は広い。
積んであるコンテナもいくつあるのか分からない。
コンテナに書かれた識別するための番号こそ知っているが、コンテナそのものがどこにあるのかは連絡にはなかった。
つまり港のどこかにある一つのコンテナを探し出さねばならないのである。
これは想像よりも大変なミッションだった。
「向こうにカメラあるよ」
「よし、回り込もう」
慎重に港の中を進んでいく。
防犯カメラを避け、コンテナを確認する。
「これって……見つかる?」
一個一個コンテナを確認していては莫大な時間がかかる。
「コンテナの色は青らしい」
「だいぶ絞り込めたな。あと……何万個だ?」
「俺だってもうちょっとヒント欲しいよ」
みんなの不満は分かるが、トモナリだって嫌がらせで少ないヒントで動いているわけじゃない。
手元にある情報がそれしかないのだからしょうがないのだ。
「トモナリ、横からけーびいんが来てるのだ!」
「オッケー」
ヒカリから無線で通信が入る。
上を飛ぶヒカリには他のものの動きがよく見えている。
「ストップ……」
トモナリたちはコンテナの影に隠れる。
「なあ、聞いたか?」
「何をだよ?」
「第三埠頭の方で、事件あったって」
「いや……聞いてないな」
「なんでも死体があったそうだ」
「死体?」
覚醒者なのか、剣を腰に差して武装した警備員が二人並んで歩いている。
ダラダラと歩いて見回りながら会話をしていて、声も大きく内容が普通に聞こえてくる。
「なんでもアジア系の死体らしいが、どこから来たのか全く謎らしい」
「へぇ、なんで死んでたんだ?」
「死体はボロボロだったなんて噂だよ。誰かが言ってたけど……亡命じゃないかって」
「そんなの言ってるの誰だよ?」
「佐藤のやつだよ」
「あいつはなんでも大袈裟に言うからな……」
会話が遠ざかっていく。
二人の警備員はトモナリたちに気づくようなことは全くなかった。
「……なんとも雑な警備だな」
トモナリは思わずため息を漏らしてしまう。
気づかれるようなことがなくて、トモナリたちとしては都合がいい。
けれどもあれでいいのかと思ってしまうのは、やはり根が真面目なのだろう。
「それよりも第三埠頭のアジア系の死体……」
警備員の不真面目さを追及するつもりはない。
それよりも二人がしていた会話の内容が気になった。




