子供救出作戦2
メイリンは言ってしまえば他の国で活動する教育を受けている。
しかしトモナリたちはそうしたものとは全くの無関係に生きてきた。
そもそも国から離れるという行為の時点で、トモナリたちには大きな障害がある。
そこでトモナリたちは直接の救出以降のところで協力する運びとなっている。
「そっちはどうだ?」
「ん、いい感じ」
ゲートホームレスという言葉がある。
基本的にゲートの中は危険なのだが、イレギュラーがない限りはゲートに近寄らないという性質がある。
なのでゲート周りのことをセーフゾーンと言ったりもする。
そんな性質を活かして、ゲートに住み着く人がいた。
テントなどを持ち込んでゲートの横で寝泊まりして過ごす。
ゲートの中にいれば外からは見えないし、ゴミを捨てても何をしても文句を言う人もいない。
勝手にゲートを見つけて住み着く人もいれば、ゲート攻略の権利を持っていて時々モンスターを出して小銭を稼ぎながら住んでいるような人もいる。
ともあれ、ゲートが危険であることは間違いないのだけど、一方で上手く利用することもできる。
「風はないから固定する必要はないな」
トモナリたちは南の方にあるとある島に発生したゲートにいた。
動いていると暑いぐらいの外気温であるが、ゲートの中は洞窟になっていてひんやりとしている。
ゲートの中の真横に大きめなテントを設置して、中にはマットレスなんかを並べる。
「連絡は?」
「少し前に救出に成功して、今は大きく迂回して南アジアを経由してこっちに向かってる。三日前に連絡があって、そろそろ着くはずなんだ」
「まさか不法入国の手伝いすることになるとはな……」
今トモナリたちがやろうとしていることは、かなりの大問題である。
他国の子供を匿って隠そうとしていた。
メイリンはアメリカと交渉して亡命するつもりのようで、色々と話がつくまでトモナリたちに子供を匿ってほしいというのがお願いなのであった。
子供を生贄にするのは許せない。
しかし冷静に考えると危険な行いをしていた。
「問題だから……こっそりやらないとな」
どこかにバレると怒られるというレベルでは済まないだろう。
ただトモナリは今回の出来事が、メイリンの分岐点になるのではないかと考えていた。
回帰前メイリンは傭兵だった。
今回の計画ではアメリカに亡命するはずが、なぜか傭兵として裏稼業への道を進むことになったのだ。
「この作戦は失敗した」
なぜメイリンは傭兵になったのか。
きっと回帰前にも古代遺跡が出現して、子供を生贄にしようとしたのだろう。
そしてメイリンはそれを止めようとした。
だが、失敗したのだ。
子供を生贄にしないようにできなかったのか、あるいは逃がそうとして逃さず殺されてしまったのかはトモナリにも分からない。
しかしメイリンはアメリカに亡命するような理由を失い、ただ祖国を離れてフリーランスの覚醒者となった。
「子供たちを守りきれなかった……のだろうな」
メイリンは生きていたし、古代遺跡を攻略して何かを得たのはアメリカだった。
つまり子供は生贄にされなかったのではないかとトモナリは思っている。
そうなれば子供たちは口封じにでも殺された可能性が高い。
メイリン一人では守り切ることができなかったのだろう。
「となると俺たちも襲われるかもしれないな」
トモナリは、子供たちを取り戻すために刺客が送られてくるかもしれないと予想している。
けれどももし仮にこのことを上手く乗り切ったら、メイリンの信頼を得られる。
回帰前の時には世界でもトップクラスに強かった覚醒者が味方につくかもしれないのだ。
メイリンは傭兵として金で雇われればなんでもした。
他の覚醒者を攻撃して潰したりすることもあって、世界の戦力が損なわれていたことも否めない。
メイリンが正しい道を歩めるようにアシストするだけでも、未来の戦いが楽になる可能性がグッと上がる。
そのためにみんなを犯罪に巻き込むのは心苦しいのだけど、みんなトモナリがやるのなら手伝うと言ってくれていた。
「ん? おっと……」
ゲートの外は森の中で、島ということもあって人の出入りはない。
けれどもギリギリ電波が入るというちょっと便利なところでもあった。
ゲートから出てスマホを確認したら連絡が入っていた。
「…………みんな、移動の準備だ」
トモナリは連絡の内容を確認して顔をしかめる。
そして、ゲートから出てくるみんなの方を振り向く。
「なんかあったのか?」
「ああ、トラブルだ」
ーーーーー
密入国は楽じゃない。
大人が一人こっそり入るのと違って、何人もの子供をこっそりと連れてくるのは相当困難なミッションとなる。
「なんかこうなると犯罪臭すごいね」
どうやって子供たちを連れてくるのか。
今回メイリンが考えた手立ては船での密入国だった。
「こんなかのどれかに……子供たちが?」
船でと言っても小舟で乗り込んでくるということではない。
子供たちは海外から来る貨物の一つに紛れて港にやってきていた。
大きなコンテナが大量に並ぶ港のどこかに、子供たちが中にいるコンテナがあるのだった。




