同化する世界2
「多分儲けは出るだろうし、多少は恩返しできると思うけどな」
まだ成長途中とはいえ、世界樹の枝が出回れば騒ぎになるだろう。
当然ながら世界樹の枝には高い値段がつくはずである。
五十嵐ギルドも天照ギルドもトモナリのお願いで協力してくれた。
黒い鎧の兵士を倒して得られた魔石は売却して利益を分配はしたものの、お金を支払う代わりなどの条件は決めていなかった。
大きな人数が動いたのだから当然大なり小なりお金は必要となる。
黒い鎧の兵士の魔石だけでは、ちょっとお礼というのにも心許ないぐらいの金額にしかならなかった。
世界樹に関われるという利権を見越しての協力であったことは間違いないだろうが、将来ばかりではなく目の前のお金も大事だ。
世界樹の枝の売却で少しは恩返しができれば、とトモナリは思う。
「同化現象……他のところでも起きてるんだね」
コウが他の同化現象について調べる。
同化現象という言葉がもう確立していることから分かるように、古代遺跡よりも以前に同化現象は現れている。
国外のことなのであまり耳に入らないだけで、同化現象が起きてしまった国では問題となっていた。
「あっ、でも国内でも……あるんだ」
ちゃんとゲートを討伐している地域では同化現象がほぼ見られないのだけど、放棄された土地や国の中で辺境の土地という目が届かない場所はどうしてもある。
本来ならば深い森だった場所が、湿地になってしまったところがあった。
「ゲートが増えると、こんなことも増えるのかもな」
「ああ、増えるだろうな」
難しいゲートや試練ゲートが増え、手が回らなくなると同化現象も当然起きてしまう。
回帰前の最後近くの荒れた世界も同化現象が原因であった。
攻略できなかった試練ゲートの世界が外の世界を侵略してしまった。
自然豊かな世界ならともかく、最も勢いが強かったのが荒れ果てた世界だったものだから最悪であったのである。
もちろん有益なゲートの同化現象もある。
不毛な土地でゲートも放置されていたところが、同化現象で土壌の改善がされた事例も回帰前にはあった。
「同化現象はともかく、俺たちもそろそろ名前を高めなきゃな」
基盤は整ったといっていい。
終末教などの脅威があるので、目立ちすぎないようにしていた。
今は世界樹が目覚めて、ゆかりの安全も確保された。
目立たないところではトモナリの名声も高いのだけど、いまだにトモナリたちは無名の覚醒者、ギルドでしかない。
「ていうかさ……」
「ん?」
「うちのギルドの名前って、何?」
ミズキがふと疑問を口にした。
なんとなくのままトモナリたちと合流したが、ギルドの名前も特に気にしないままだった。
それで不便なことも何一つなかったし、ミズキがギルドの名前を背負って挨拶するようなこともない。
「うちのギルドはドラゴンズライトギルドだよ」
「つか、今更?」
「だって合流してすぐ仕事だったし!」
たとえギルドでなかろうとトモナリたちとは合流するつもりだった。
たまたまギルドを興していたというだけで、どんなところかはあまり気にしていなかった。
「最初はドラゴンギルド……が候補だったんだよな?」
「シンプルでいいかなと思ったんだけど、流石に安直すぎって……」
ギルドの名前に関しては紆余曲折があった。
トモナリとしては何でもいいかなと思う反面、ギルドの名前はこれからトモナリたちの代名詞となる大切なものでもある。
ギルドとして活動する必要があったので、最初はとりあえずドラゴンギルドとして届を出した。
しかしドラゴンギルドではあまりにもそのまますぎるというユウトの意見もあって、少し捻ってドラゴンズライトギルドとなった。
「ドラゴンズライト……」
ミズキがちらっとヒカリのことを見る。
ドラゴンはそのままドラゴンのことである。
ライトはヒカリを少しいじったものだ。
ドラゴンのヒカリ。
ドラゴンズライト。
ヒカリでもあるし希望の光的な意味でもある。
「へぇ、まあいいんじゃない?」
ミズキとしてはドラゴンギルドでも大差ないのだけど、ドラゴンズライトギルドと聞いてヒカリが口の端にお菓子をつけてドヤ顔をしている。
ヒカリは自分の名前がつけられたようでドラゴンズライトギルドという名前を気に入っていた。
「失礼します。ご主人様」
「ディーニ、どうかした?」
控えめにノックして、ディーニが部屋の中に入ってきた。
「お客様が来ています」




