同化する世界1
同化現象。
あるいは同期現象。
世界の侵略と呼ぶような人もいる。
それはゲートの中の環境が外の世界へ出てきてしまうことを指している。
ゲートの状態には段階がある。
まずはゲートが現れる段階。
これが普通の状態で、中には異世界の空間が広がっていて、そこに住まうモンスターがいる。
覚醒者たちは提示される条件を攻略して、ゲートを閉じて消失させていく。
次の段階はブレイクと呼ばれる現象で、モンスターがゲートから出てくる。
最初からブレイクを起こしていることもあるが、多くの場合では長期間攻略されないゲートで起こるものだった。
そして、最終段階が同化現象となっている。
ゲートの中の世界が外に影響を与え、変化を起こす。
何もない草原だった場所に突如として森が現れたり、温暖な土地が凍りつくほど気温が下がったりと、外がゲートの中の環境と同じになってしまうのだ。
ただ同化現象はそんなに起こることでもない。
ゲートに手をつけず、ブレイクが起きても放置し続けた先に起こるようなものである。
定期的にモンスターを討伐していれば、同化現象まで起こる確率はほとんどない。
だから最近になってようやく同化現象が起こるのだと認知され始めた。
「太平洋沖古代遺跡同化現象地……」
同化現象は管理されていると起こらないといっても過言ではないが、時に最初からブレイクが一つ跳びに起こることがある。
ブレイクが起こるなら、同化現象が起こることもあるのだ。
今世界中はあるニュースで持ちきりだった。
テレビやネットニュースにはとある島が映し出されている。
まるで全てどこかの遺跡のような島は一夜にして突如現れたものであった。
同化現象が起きた。
本来ならばゲートの中にあるはずの環境がそのまま外に出てきて、太平洋のど真ん中に島として現れてしまったのである。
「わぁ……すごいね」
ミズキがテレビの中継を見ながら思わず驚きの声を漏らす。
角が丸い四角い形をした島は外側に森があって、内側に巨大な遺跡が見えている。
どうやってあんなものが一夜にして現れたのかは誰にも分からない。
「不思議」
いかに同化現象だとしても島まで出てくると規模が違う。
「あれ、どうにかすんのか?」
世界樹の近く、五十嵐ギルドが居を構える町の中にトモナリたちのギルド用に建物を一つもらった。
せっかくならと二つ目のギルドハウスとして使わせてもらうことにして、ゆかりもこちらに引っ越す予定である。
一部綺麗に改装中だが、使える部屋に集まって今後の方針を軽く話し合っているところだった。
そんな時に舞い込んできたニュースを見て、ユウトはトモナリに視線を向ける。
こうした大きな騒動解決の影にはトモナリの働きがあったりすることはもう分かっている。
「まだ攻略できるかも分からないぞ」
トモナリはわざとらしく肩をすくめる。
どこかの国に現れたのならともかく、古代遺跡が出現したのは太平洋のど真ん中だ。
どこの国のものであると言えるし、どこの国のものでもないとも言える。
せめて領海なんかに少しでもかすっていればいいのかもしれないが、古代遺跡の島はどこの国にもかすらない。
このことが事態をややこしくしている。
見つかってそう時間も経っていないのに、もうすでに攻略の権利を主張するアメリカと中国でぶつかっていた。
アメリカは危険性や大義を押し出すのに対して、中国は独占する気だろうと批判をしている。
巨大な古代遺跡なんていかにも何かありそう。
利益を得るために行動するのはとても早い二国であった。
「興味ないとは言わないんだな」
「興味はあるよ。でもこっちも忙しいしな……」
トモナリはため息を漏らす。
五十嵐ギルドの方では連日問い合わせが止まらないらしい。
これまでは五十嵐ギルドが戦い、土地を解放をしても人々は見向きもしなかった。
それなのに世界樹が目覚めた土地と聞いて、手のひらを返すように土地が欲しい、住まわせてほしいと連絡がある。
それだけじゃなく世界樹そのものに対する問い合わせも多い。
‘俺たちは覚醒者であって、コールセンターじゃない。もう無視だ、無視!’
そんなことを言ってイガラシは問い合わせを無視し始めている。
無断で世界樹に近づこうとする輩まで出始めていて、天照ギルドも幾らか人をこちらに駐在させてくれていた。
世界樹を育てている時より、今の方が心配ごとが多いぐらい。
世界樹関連の騒動が落ち着くまでは気が休まらないことだろう。
「これから枝の剪定もあるしな」
さらに世間を騒がせそうなイベントが一つ予定されている。
世界樹の成長を促すために、世界樹の枝を剪定して切るつもりなのだ。
ユシルの許可も得て、どの枝を切るのかしっかり計画されている。
剪定そのものは別に注目すべきイベントではないが、注目すべきは剪定した後に残された世界樹の枝や葉っぱの方である。
世界樹の枝で作られた装備というのは品質が高いことで有名だ。
これまでゲートの中で報酬として得ることしかできなかったものが、これから生産できるようになるかもしれない。
そのために剪定した後の枝をどうするのかは大きく注目されているのだった。




