世界樹の加護2
『世界樹の加護の範囲内にいます!
魔力回復速度50%アップ
魔力消費量10%ダウン
怪我の回復速度30%アップ
能力ボーナスがつきます!
各種耐性がつきます!
世界樹があなたを見守ります!』
体が軽くなった。
そこにいた全員がそう感じた。
目の前に表示が現れて、襲撃と攻略で疲労した体が癒えていくような不思議な感じを抱く。
「長かったな」
ユシルが現れたり、世界樹ゲートで世界樹の意思に出会いはしたが、世界樹そのものはまだ目覚めていなかった。
これでようやく世界樹が目覚めたのだといえる。
「パパ!」
ユシルが満面の笑みでトモナリに抱きつく。
母親たる世界樹が本格的に機能し始めて嬉しいようだ。
『世界樹は感謝しています!
大地に根付いた世界樹は世界を守るでしょう!』
これで世界の中で最も安全な場所ができた。
万が一の事態が起きても、逃げ込めるような場所があるのはとてもありがたい。
少なくとも世界樹が後ろにいるのだと思えるのはとても心強い。
これでまた前を見て進むことができる。
世界樹の加護が届く範囲内にいるだけでもバフ効果が得られるなんて、実は回帰前にはなかった。
つまり上手く世界樹を育て、守り抜いたことによるボーナスということなのだろう。
「トモナリ! やったな!」
ユウトがトモナリの首にガバッと腕を回す。
世界樹のタネを手に入れてから色々と奔走した。
一応回帰前の知識はあったものの、全てを知っているわけではないので不足しているところも多かった。
木崎植物研究所の協力を始めとし、多くの人の助けを得て世界樹を完璧に近いレベルで育て上げられた。
ゲートは攻略しても消えてしまう。
そのために何かをしても残るものではなくて感覚として分かりにくい。
だが目の前の世界樹は風に葉を揺らし、暖かな魔力でみんなを包み込む。
何かを成し遂げたのだ、という結果が目の前にある。
「ああ……やったな」
思わずちょっと涙ぐむ。
達成感が胸に広がり、今ならなんだってできそうな気分になる。
「ビューン!」
ユシルが世界樹の方に飛んでいく。
「なんだ……?」
世界樹が一度大きく揺れた。
見上げるような世界樹の茂みの中にユシルが飛び込んで、姿が見えなくなる。
「何か持ってるのだ?」
ユシルが世界樹の方から戻ってきたのだけど、何かを抱えている。
「パパ! これママから!」
ユシルはリンゴのような赤い果物をトモナリに差し出した。
「これって……」
世界樹の力が宿った世界樹の実。
いわゆる霊薬として、摂取すれば魔力なんかを増やしてくれる貴重なものである。
「文字通り、実を結んだね」
それを見て、イヌサワが冗談を言う。
世界樹の実も最終的には目的の一つであった。
まさかこんなに早く手に入るなんて思いもしなかった。
トモナリの努力によって世界樹が実を結んだ。
「ありがとな、ユシル。世界樹にも感謝伝えといてくれよ」
「うん!」
なんとかまた一つ問題を乗り越えた。
ここからまだ世界樹はさらに成長するし、加護の範囲がどこまでなのか、効果があるのかとか調べなければいけないことは多い。
木崎植物研究所に多く任せることになるが、これからも世界樹との関係は長く続くことになるだろう。
「母さんの引っ越しもしなきゃな」
世界樹が覚醒したなら、今世界でも安全なのは世界樹のそばになる。
世界樹にゆかりを護ってもらって、また様々なことにチャレンジしていこう。
「……とりあえず、今は祝おうか」
何をするにもキツイだけではやっていけない。
迷路を崩したり、黒い鎧の兵士の処理は後回しにして、トモナリたちは盛大に世界樹の覚醒を祝ったのだった。
世界樹がこの世界に現れたというニュースは瞬く間に世界中を駆け巡った。
ありとあらゆる国、ギルドが興味を持ったのだけど、五十嵐ギルドが矢面に立ち、天照ギルド、木崎植物研究所も世界樹を守ろうと協力してくれた。
さらにはトモナリは以前協力した防衛省、そして覚醒者協会にも手を回し、国レベルでの世界樹を守ってもらった。
裏に一人の覚醒者がいることなどほとんどの人は知らない。
世界樹が世界にどんな影響を与えるのか。
それはトモナリにも分からないのであった。
ーーー第十章完結ーーー




