四つのゲート3
「守る!」
ただの兵士に魔法使いが混ざり始めた。
仲間の命すら顧みない魔法攻撃をユシルがシールドで防ぐ。
ユシルが自動で防御してくれるのは意外とありがたい。
思っていたよりも防御力は高いようで、ちょっとやそっとじゃ破られそうにない。
「少し休憩しようか」
黒い鎧の兵士を倒し、ひたすらに前に進んだ。
町の中心にある城は城壁からだと遠くに見えていた。
それがいつの間にか目の前まで来ている。
水が入っていない深い堀があって、城へ続くはね橋が降りている。
はね橋を渡れば城に突入できる、というところで黒い鎧の兵士が出てこなくなった。
まだ黒い鎧の兵士が出てくるならそのまま進んでいくところだが、出てこないなら一息つくことにした。
「飽きたのだ!」
振り返ると黒い鎧の兵士の死体が積み重なるようにして残されている。
外での襲撃三回を含めて、ここ数日ずっと黒い鎧の兵士と戦っていることになる。
血が出たりしないモンスターなので汚れるようなことはないものの、同じ相手とばかり戦うのはやはり飽きる。
ここに来てヒカリも不満を口にした。
「汚れないのはいいけど、意外と硬いし面倒な相手だよな」
あたかも人が入っているように見える鎧だが、実際中には人はいない。
黒い何かが詰まっているのであり、特に血などの体液が噴き出すことはなかった。
黒い鎧の兵士はいわゆるアンデッド系統のモンスターなのだろうと思われた。
ただ鎧は鎧なので硬い。
さらにはアンデッド系統のモンスターは痛みを感じず、死をも恐れずに攻撃してくるので多少のダメージには怯みもしない。
腕を切り落とされようとも、それでも突き進んでくる黒い鎧の兵士は厄介な相手であった。
「でも能力の割に動きは単純だから助かるよね」
黒い鎧の兵士はそこそこ強い。
パワーもスピードもあるモンスターだが、武器を振り回す技術はミズキから見て微妙なところだった。
ただ武器を振り回すだけのような動きなので、対処は難しくなかった。
弱い分には別にいいのだけど、少しだけ違和感も感じる。
「パパ! アレ!」
「アレ?」
はね橋前は見通しがいい。
敵が現れればすぐに分かるので交代で見張りをしながら体を休めていた。
ただ休むだけじゃなく、インベントリに入れてあった飲み物やお菓子などでちゃんと調子を整える。
抱えるようにしてどら焼きを食べていたユシルがハッとした顔をしてトモナリの髪を引っ張った。
髪を引っ張られると流石に痛いなと思いながらユシルを見る。
ユシルは城の方、やや上に視線を向けている。
「アレ……あれは……」
城の最上階近くにバルコニーがある。
そこからトモナリたちのことを見下ろす存在がいた。
黒い鎧の騎士。
以前世界樹のゲートの中で戦った、これから現れるだろう試練ゲートのボスともなっているモンスターがいる。
トモナリたちも何人かがやられた。
結果的に黒い鎧の騎士との戦いは幻想だったために怪我人はいなかったが、強くなって少し調子に乗っていたユウトたちの伸びかけていた鼻が叩き折れたことは言うまでもない。
「何が、目的だ?」
まるでトモナリたちを観察するかのように、ただじっと見下ろす。
襲いかかってくる気配はないものの、観察されているような視線が絡みついて気持ちが悪い。
トモナリの異常な雰囲気にみんなも黒い鎧の騎士に気づく。
警戒による緊張感が高まり、空気がピリつく。
「……今は戦わないのか」
トモナリも睨みつけるようにして黒い鎧の騎士を見ていたが、降りてくることもなく黒い鎧の騎士は踵を返して城の中に戻っていった。
黒い鎧の騎士の力を知っているトモナリはほっと息を吐き出す。
「だが安心もしていられないな」
あんなところに黒い鎧の騎士がいたということはこれから出てくるということだろう。
ゲートの難易度を考えた時に、黒い鎧の騎士が本当の力を持って立ちはだかるとは思えない。
しかしこれなら戦うことになるのなら危険な相手であると言わざるを得ない。
「あいつが軍団長なのか?」
試練の攻略条件としては軍団長を倒せとなっていた。
黒い鎧の騎士が軍団長なのだろうかとユウトは首を傾げる。
「さあな……城の中に入っていけば分かるだろ。休憩は終わりだ。先に進もう」
黒い鎧の騎士の出現でみんなの神経が再び尖ってしまった。
下手に休憩すると、精神的に疲れてしまう。
ここはこのまま戦いに突入するのがいい。
「へぇ、ちょっと強そうだな」
はね橋を渡り、開け放たれた門から城の中に入っていく。
城に入ってすぐは広いホールになっていて、そこにモンスターが待ち構えていた。
これまでの黒い鎧の兵士と違った雰囲気の個体が三体。
黒い鎧の兵士の鎧は飾りなどないシンプルなものだったが、城のホールにいる個体の鎧は飾りがあって豪華だった。
特に真ん中の黒い鎧の兵士は頭に赤い羽のような装飾までついている。
赤い羽の兵士は持っていた槍をグルグルと回して、トモナリたちに先を向けて構える。
「よし……いくぞ!」
明らかにただの黒い鎧の兵士より格上だ。
トモナリは先頭を切って赤い羽の兵士に向かう。




