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魔女たちは祝宴し続ける  作者: ロックプロジェクト
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35/80

チームファイブ出没注意

WITCH内 ‘‘4ちゃんねる’’


カテゴリー:公表

ジャンル:チームファイブ

スレッド:チームファイブがウザい



>‘‘チームファイブ’’出没注意!

>熊みたいに(笑)

>あら鈴クマの方がよっぽどカワイイわよ

向こうから鈴の音立ててくれるし避けようがあるじゃない

>どうして注意しないといけないの?

>それが個人宅まで調査に入ってるらしいのよ

>ウチ来た

事前に協議団からお知らせが届くの

団員の最低一人は立ち会うからって

>どこ見られるの?なんか聞かれる?

>なんせあの五人は、こそこそびくびくしてるわりに厚かましいの

大鍋風呂から暖炉から、スプーンの一本一本まで注意深く調べてた

特に魔法性のあるものは、「何のための道具だ」とか「使用頻度は高いか低いか」とか、挙げ句の果てに「どうやって使うか実演しろ」だって

家中のものを見せる羽目に

>えー、うっとうしい

>念の入れようが…

>ウチも来るのかなあ

>半分以上は回るんじゃないかって

>『特殊地域民俗文化財』に認定されるためにはしかたないみたいよ

>ユネスコの

>魔法技術をはじめ習俗、文化、生態系、住宅や持ち物に至るまで村の全てが対象になる

>わたしたち魔女も登録されるの?

>今のところそれはないみたい

『地域文化財』という名目だから

>副団長が説明してたじゃない、総会で

聞いてなさいよー

>治癒魔女は目だけ開けてるからね

たわいない魔法だこと

白目剥いてるからバレバレよ

>居眠りカモフラージュ

>違うわよ、瞑想してるのよ

>総会出席中に!?www

>帰ってからやんなさいよ

>目ぇ見開きすぎだから

まぶた吊っちゃってるから

>圧力かけすぎて目元老化するよ

>垂れ下がったまぶたを見て治癒と判別可能に

>もういい!

>もう十分

>しかし、急だよね

外の世界とつながったら何がどう変わるんだろ

>そんなもんなんじゃないの

>物事が移り変わるのって

>あたしゃ魔法動画をアップしたいね

ゆーちゅーばーにでもなろうかい

>前向きー

>視聴数伸びるだろうなー

>まあ【公表】の決定前後だって大きな混乱もなかったし、ほぼみんな前向きに捉えてるよな

>宇宙のエネルギーを見る天文魔女は、変化の兆しはしばらく前から掴んでたし

>治癒魔女も、人の身体に流れ込む気が変わってきているみたいだと言ってた

>だからそこまで驚かなかったね

>薬草魔女だけ仲間はずれ…

>いや、一番肝が座ってんのが薬草だよ(治癒)

>まじめな話、そうだよね

私もそう思った(天文)

>ヴァイオレットの影響かねぇ

>ヴァイオレットの影響だねぇ

>‘‘魔女サプリ’’を旗頭に先陣を切っていく薬草代表

>狭い村社会に意識が閉じ込んでないもの

>それこそ前向き

>地味で目立たないけど根強い!

>植物っぽい存在感!

>影薄くてもポジティブ!

>褒めてるかと思えば…

>魔力が弱いってことは普通の人たちに近いってことだ

>【公表】後は外との窓口役だね!意外に!


 

 

【公表】に向けた準備は着々と進んでいるようだった。スマホアプリ‘‘WITCH’’の不具合は改善されてスムーズに即時決済できるようになったし、『世界史』教育はカリキュラムを滞りなく消化していった。アンナと小間ねずみは図書室のデータベース化を精力的に片付けているし、成人向け経済セミナーでは、【公表】に伴う措置や変化についても全般的に論じられているようだった。

 日曜学校でも受講しているミスター・ルウの『世界史』の講義では、この世界の成り立ちを知るにつれ、その広さと複雑さに触れて気が遠くなりかけたが、ママはこの国にも行ってたな、ここにも、と思い出すと心強い気がした。




カテゴリー:村人

ジャンル:話題の人

スレッド:トッティのことを話そう

 

 

>トッティはああ見えていい人だったな

>いいひと?

>女好きの軽々しいイメージだけど、実際は性別問わずフレンドリーに話しかけてたでしょ

>なんか警戒心は湧かないんだよね

>そういえばそうだね

>悲しいことがあって泣きながら歩いてた時、あっけらかんとしたスマイルで律儀にナンパしてきて。

なんか笑っちゃった。

>私もそれあったかも

>わたしらみたいなおばちゃんにもきちんと声かけてたね

見上げたもんだ

>人恋しかったのかもね

>「ねぇねぇ、よかったら僕と一緒にお茶でもしない?」

>「静かなところで映画でも見ない?」

>いつも同じトーンで

>安定のナンパ野郎

>あの声聞こえてきそう

>いつもほんとバカなんだよねぇ

>そうそう、バカなの

>あんなバカでもいなくなるとなんとなく寂しいよ

>ほんとに

>なんで殺されちゃったんだろう…

>死んじゃったらもう二度と会えないんだね

>そうだね

>トッティ女性の優しさを求めてたのかなぁ

>お母さん早くに亡くしたもんね

>父親もトッティが生まれる直前だった

>家族に縁のない子だったねぇ

>けど、顔は広かったわ

偏屈なコニーGじいさんなんて、なぜか気に入ってトッティを弟子にしたがってたらしいよ

>相性かな

>彫刻に打ち込む職人タイプではもちろんなかったけど

>孤独さが同調したのかねぇ

>魔ダムにこづかいせびってるって聞いたけど、

>いい歳してふらふらしてるニートだと軽んじてたけど、

>ナンパされて雑に追っ払ってたけど、

>あの日のピンクの革ジャンには引いたけど、

>やっぱり

>ん

>やっぱり

>…寂しいよね




  ‘‘夏の礼拝’’では、教会に参集した村人たちがトッティの冥福を祈った。

 トッティは家族のいない独り者だった。事件後は、皆が思い思いに現場に花束を手向けたり、セクシー魔女のグラビアを供えたりした-ただし、追悼キャンドルに点火するのは遠慮した-が、フォーマルなお葬式は行われなかったのだ。

 春のワルプルギスから盛夏へ。あの事件からしばらく時間が経過しているが、やっと集い合って祈る機会を持てたことに安心する気配と、酷い殺人に対するもの恐ろしさとが綯(な)い交ぜになって静寂な礼拝堂を満たしていた。トッティを焼き滅ぼしたのは、古豪(こごう)の怨念と化した聖トゥーラなのではないか、というまことしやかな疑惑はまだ消えていない。

 祭壇に据えられた聖トゥーラの立像が、今日はやけに大きく見える。まるで一堂に介した末裔たちを涼しげに睥睨(へいげい)しているかのようだった。首に掛けられた銀の十字架が、高窓から射し込む夏の光を跳ね、頭(こうべ)を垂れる村人に順々に当てていく。目鼻の薄い白磁の顔だけが、逆光で暗い陰を凝(こご)らせている。

 焼死した聖女の陰の形相---聖像とは名ばかりで、一皮剥けば焼け爛(ただ)れた顔に目だけをぎらつかせ、虎視眈眈と生贄の首を狙っているというのだろうか。一人殺ってやったぞ。次はあいつにしようか、いやお前だ、と、積もりに積もった怨みを宥めるために子孫の命を奪う。浮かばれない宿怨を殺意に代えて。

 しかし、いくら桁(けた)外れの魔女といえども、五百年も前に没した女性が呪いで現代人を殺すだなんて荒唐無稽なことがあっていいわけがない。ましてやこの魔女村の起源そのものの初代聖女が今さら村を祟るだなんて、いくら魔法が使えるわたしたちにしたって常識外だ。そう自分自身を論理的に説得していないと、十字架を掛けた不気味な聖女像の前から逃げ出してしまいそうだった。


 散会後、村人たちが三々五々帰っていっても、神出鬼没ながらすでにあちこちで見慣れた白衣のおじさん五人組が、片時もメモを取る手を休めることなく調査活動を続けていた。今日は四季の礼拝および教会の調査中なのだ。

「昨日なんて、‘‘天文魔女館’’の天文台につかつかやって来て、望遠鏡やパソコンを調べようとしたらしいわよ」

「そんなもんに魔法かかってないって。ただの機械でしょ。外にもあるでしょうに」

  及び腰だが仕事熱心な‘‘チームファイブ’’に目を眇(すが)めて、口さがない魔女たちが囁き交わす。

 そんな風景を眺めながら、わたしは跪くアンナの傍らに所在なく佇んでいた。アンナは今まで季節の礼拝への出欠はまちまちだったが、今日に限っては参加者が全員引き払ってしまった後もまだ祭壇の前で両手を組み合わせている。静かに冥福を祈り続けているのか、やり場のない恋しさを封じようとしているのか、目を閉じた横顔からは判別できなさそうだ。あるいはその両方かもしれない。

 気付いた時には、わたしたちの方へ‘‘チームファイブ’’が向かってくるところだった。作り付けの信徒席の材質調べはどうやら完了したらしい。なにやら噛み合わないやりとりをしながら、今度は虫眼鏡を気休めの盾代わりにじりじりと四聖女像へ近寄っているようだ。

「それぞれが何か持っているね、ジョン」

「ニック、お前!あれほど名前を呼ぶんじゃない、と…」

「どっちもいい加減にしろよ」

「やべぇ、俺女(・)子(・)高(・)生(・)みたいな魔女と目ぇ合っちゃったよ」

「女子高生は大丈夫だ」

 祈るアンナはまだ動かない。なら、それはわたしのことだ。おあつらえ向きに今日は杖を持っている。失礼な‘‘ナンバー4’’にはこれ見よがしに杖を振って花びんのヒマワリでもけしかけてやろうかしら、と思ったけれど、やめておくことにした。薬草は外との窓口役だという掲示板のコメントを思い出したからだ。

「女子高生も赤ちゃんも若い人も、おばさんやおばあさんだって大丈夫ですよ。理由なく魔法なんてかけませんから」

と述べるに留めておく。

 話しかけられてしまった五人は、驚きの表情を浮かべ数秒間停止した。その間に反芻して理解した内容がまともだったことで事態を呑み込んだのか、納得した顔つきで一致して、仲良く一斉に首肯(しゅこう)した。なんだか白い作業着を着た首振り人形のようでシュールだった。

 余談ではあるが、今日の村人たちはまるで式服には当然の仕上げであるとでも主張するかのごとく、黒いとがり帽子とローブの正装に揃いも揃ってサングラスをかけていた。いつの間にか流行っている。ミスター・ルウは、外の世界から来た生身のファッションリーダーとしても認知されたようだった。ミスター・ルウの影響を受けるということは、目新しい外からの風を浴びるということだ。ネタなのか本気なのかわかりかねるが、きつめに毛先を巻いた魔女が増加している事実も否めない。

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