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魔女たちは祝宴し続ける  作者: ロックプロジェクト
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テスト中に考え事をしていたら、レーザー当てられそうになった

 テストの時間は、先生の魔法で動かされたカンニング監視ロボが教室を見回る。落とした消しゴムを拾おうとしても、不正行為と見なされピカッと光線を当てられるので要注意だ。そうすると、言い訳無用で単位剥奪に処される。

 結局レポートは、アンナに貸してもらった聖ローザの本を読み、薬草技能を絡めて書いた。ローザの丸薬についてママにもインタビューをしたが、ゆっくり聞いている時間がなかったため大ざっぱだ。どうあってもペーパーテストは落とせない。

 ミセス・ゼムフィーラの人差し指が、機械の頭に軽く触れる。杖がなくても魔法はかけられる。目撃時に何か誤解してしまった可能性も否定できないが、小間ねずみを打った前科のあるミセスには、できれば杖は持ってほしくない気がする。

 時間限定の教室の支配者となったロボから、電子音で開始の合図が鳴った。ピォッ、ピォッ、ピー。

 



『魔女村史』単位認定テスト 推定年号497年4月29日

 


 Q. 「魔法」の定義を述べよ。

 

 ベリィのA.

  主にエネルギー、気、オーラまたは波動と呼ばれる生気の流れを意志的に変えたり強弱をつけたりする行為。また、その結果変化を受ける現象のこと。

 


 -たった今ミセスの手で作動させられ、監視の目を光らせながら回遊しているロボは、おそらく通電ならぬ通(・)気(・)によって魔法作用を及ぼしているのだと思う。


 

 Q. 中世魔女狩りの契機となった書物と、その公刊によって及ぼされた世界的影響について書け。また、魔女狩りについての私見を述べよ。

 

 ベリィのA.

  1486年ドイツの異端審問官による『魔女の鉄槌』が刊行された。絶対的な権威を持つに至ったこの書物により、いわゆる魔女の存在が誇張され、架空の悪徳魔女像が波及した。

 さらには、『魔女の鉄槌』を批判する行為自体も魔女であることの自白とされ、拷問を用いた魔女裁判が西洋全域に行われた。集団妄想と根拠なき迫害によって主に火刑により殺された犠牲者の数は、一説に数百万人に上るといわれる。これには女性のみならず男性も相当数含まれている。

 魔女狩りは、深く反省すべき過去の過ちであり、歴史の汚点である。

 


 -うん、テキスト丸暗記だから、解答は我ながら完璧。それに、村の立場上も個人の感情としても、魔女狩りは非難の対象でしかないのだ。

 

 

 Q. 中世に端を発するわが村の歴史的展開について、地勢的・生態的観点から述べよ。

 

 ベリィのA.

  大陸の森林地帯の奥地に位置するわが村は、北に峻険な山岳、東に大河を有する。両者を曲線でつなぐように、最大幅二二メートルの深い溝<トゥーラの聖痕>が走る。<トゥーラの聖痕>は、その名の通り、始祖の魔女聖トゥーラによる落雷の影響を受けたものとみられている。

 それらにちょうど楕円形に囲われ、あるいは守られた一定の区域が、「魔女村」や「魔女の森」と自称するほどに、魔女を育成するに適した土壌となった。

 元来「魔女の森」は、自然のエネルギーが集約するパワースポットであった。<最初(はじまり)の四人>の一人である天候魔女トゥーラが浄化・聖化したことで強化保護されたといわれ、生態的にも外部との不干渉地帯となって独自の進化を遂げたものである。

 他では見られない生物としては、ペガサス、小間ねずみ、大羽カラス、クロギツネ(雌)、精進コブラ、鈴クマ、雪シカ、洞窟コウモリ(絶滅)、小人など。植物には、一般種の性質が強く出るものが多い。

 


 -ケン・トゥ・ウルスを例に挙げるか迷ったが、外した。

 たぶん迷子だった狼犬のイノは、森で生まれた仲間だ。野苺を摘みに行ったあたりで保護したのは、小学生の頃だった。野生の生まれだから人間の気配の少ない場所を確保するはずだが、そこは一輪車の轍(わだち)も多い森の入り口だった。まるで、わたしと出会うために待っていたかのように。

 ブラッキーは、全身真っ黒の普通の中型犬だ。近所の家で子犬が産まれた時にもらってきた。六匹のきょうだいの中で一番臆病だったのがブラッキー。しかし、彼女のスーパーシャイニーな黒光りはただごとじゃない。鼻もつやつやのハート形。

 血縁関係ではないのによく似た円(つぶ)らな瞳で愛想よくしっぽを振る二匹が目に浮かぶ。あぁ、早く帰ってもふもふさらさらしたいなぁ。ぷちぷちの肉球を押したいし、まずぎゅっと抱きしめたい。

 

 

 Q. 現代におけるわが村と王国との相互関係を簡潔に説明せよ。

 

  ベリィのA.

  中間の森を隔てて隣接する魔女村と王国とは、緩やかな連帯で対等な関係を築いている。厳密に言えば魔女村は王国に所属しないが、『特別保護区』として国土に準じる地域とされている。

 

 

 Q. 自身の魔女特性および卒業後の希望進路を書け。

 


 -お、これは採点できない設問だから、書けば満点のサービス問題。

 


 ベリィのA.

  私ベリィ・ウスペンスカヤは、薬草魔女の家系に受け継いだ薬草魔法および技術を駆使して、主に植物に関する実践的研究と製品開発、製造に勤しむ予定です。

 

 

 -平たく言えば、既に小売したり直産ハウスに卸したりしている‘‘BERRY’’ブランドの継続だ。今のところ、得意のハーブティの種類と効能をもっと充実させたいと考えている。やはり女性向け商品が売れ筋だから、これから真夏にかけて、効果抜群の‘‘美肌ブレンドホワイティ’’なんてどうだろう。ローズヒップとハイビスカスを取り寄せて、カップの中できれいなピンクから美白に変色するように加工して。でも、明度高い白色だと食指が動かなさそうだから、少しピンクを残して薄めのいちごミルク色にしてもいい。

 

 いずれにしても、卒業まであと一年を切っている。最低限の単位を取りそろえて卒業すればもう成人だ。家業にならい薬草を扱って、生涯自分を養っていく責任がある。【公表】されるとしてもまさかすぐに村を出るわけでもないし、さしあたって個人的な生活が激変するわけでもないからそんなに気負いはないが、自立した大人扱いだから少し緊張はす…あ、監視ロボの顔がまっすぐにこちらを向いている。斜め上を見て妄想している女子生徒を認知しかけていた。

 間一髪でセーフ。危なかった…光線(レーザー)寸前だった。

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