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tears  作者: hanon
序章 -漣-
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3/4

3話

怒鳴り散らしたり暴力で怒りを示す人間よりも、淡々と冷静な態度で怒りを表す人間の方が怖い。

出会った時から和祢だけは怒らせたくない存在だった。


「なして佐野と朝生様まで?」

「朝生"様"?ちゅーか、今井くん危ないけえな」

「え?危なないけど?」

「だいぶ危ないで今井くん。まあ僕らも委員会で昼まだやけね」


朝生梨久。

1年で一番の美女と名高い。正統派という言葉がぴったりな女子だが、真面目で気の強い性格から高嶺の花と言われている。この真面目な高校では道明たちのようなヤンチャ系のグループの方が浮くのである。

才色兼備であるのに彼氏は本田慎一で、双子の弟が朝生空、そして道明や大地とも仲が良い。ヤンチャグループを仕切れるなんて、朝生さんは美人なだけではなく頼もしい人なのだ。と、尊敬され陰ながら『朝生様』と呼ばれているらしい。


千草綾も美人だが、こっちは無駄に高い背とふざけた性格で女子から絶大な人気を誇っている。和祢や麗奈、冬馬に圭介、大地と同じクラスなせいもあるし、一番はその長身でよく目立つから知っている。


「今井くんと…えー」

「石川。石川漣」

「石川くんは幼なじみかなんか?」

「中学からの付き合いやな」

「中2からね」

「仲ええんな」


和祢と漣が仲良くなったのは、中学2年のクラスに上がった時だった。出席番号順の席で、漣の後ろに和祢がいたのだ。それまで互いに特定の友達がいなかった二人は、言葉を交わしてみると妙に気が合った。

最初こそは和祢を『気の弱そうな奴』と決めつけていた漣だったが、仲良くなってみると和祢に申し訳ない気持ちで一杯になった。


「カズは変やけ」

「その言葉そっくりお前に返すわ」

「返していらんし」

「遠慮すんな。朝生さんと佐野くんは本田くんや大地くんと幼なじみなんよな」

「そこらみんな地元一緒なんよ」

「腐れ縁やな。衣川さんは冬馬くんと幼なじみやし、ちぐは藤枝くんと幼なじみっていう」


なんだ。幼なじみ繋がりか。

だったら和祢にもチャンスはあるな。ふーふーと熱いうどんに息を吹き掛ける麗奈を見つめ、漣は安心したようにご飯をお茶で流し込んだ。


「衣川さんてさ…」


一人だけ話には入らずにうどんをすすっていた麗奈に、佐野佑樹が声をかけた。麗奈は箸を休め、佑樹を見つめる。


「ケータイ持ちよる?」


佐野佑樹。

非常に和祢に近い雰囲気を感じるが、こっちのほうが和祢の数倍も掴めない奴だ。柔らかな物腰で、梨久とも仲がいいため真面目かと思えばヤンチャグループにも好かれているし、話してみると柔らかな物腰のままでかなりの毒を吐く。佑樹もまた個性が強いのだろう。


「持ちよるよ。なして?」

「交換しようで」

「わ、私も!」

「俺も俺も」

「俺も」


便乗した和祢に向かって佑樹が微笑むと、和祢は驚いた顔をして携帯を出した手を止めた。凍りついた笑顔のまま漣に顔を向けると、そっと携帯をしまおうとした。


「佐野くんほんま怖い」

「しまう必要ないやろ。な、佐野」

「うん、何も言うてないしね」

「わかってるやん…俺かて何も言うてないのに」


分かりやすい和祢と鋭すぎる佑樹が問題なのだと、漣は心の中で呟いた。それに対して目の前の女子二人は鈍すぎる。こちらの会話を気にも留めずに携帯番号を交換していた。



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