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だって君は

※挿絵があるので注意です。

ヴゥーーーーーーーーーーーン

わずかな振動でモノレールが走り出す。

可愛いキャラクター達に彩られたモノレール内の装飾が

この現状を非現実的なものにみせる。


周りは今からパークへ行く人たちの笑顔だ。

そこへ肩で息をしてる二人はひどく浮いているだろう。

ここでちぐはぐなのは、きっと私たちなんだろう。


周りも「?」と

すこしいぶかしげに遠巻きからこちらを見ているような気がする。


あ…ちがうか、葛木秋夜だ。

皆、葛木秋夜の美貌に目を持ってかれてるんだ…。



現状を整理したくて、状況を把握しようとしてみたけど…

集中、しきれるかーーーーー!!!


え、えぇ?

えぇええぇえぇええええ?!

追いかけて、、、きたの?!

あんで?!そこは空気読んで逃げ去る私を見送るもんじゃないんです?!


目の前で肩で息をする葛木秋夜に瞠目する。


全力疾走したせいと、追いかけられていた(そして追いつかれた)

という事実に驚愕しすぎて

あふれる寸前だった涙は完全に遥かなる時空の彼方に

行ってしまっていた。


「…えぇ?!え?!あの、え?あ、あんで…!」

「ふぅ、杉浦さん、足早いね。インパラみたいだ」


え、インパラ?サバンナに生息してる?

たとえが大自然すぎじゃね?


いやそんなインパラとか、今はどうでもよくって

なぜに、葛木秋夜は私?を追いかけてきて

ここにいるのか、である。


全力疾走した疲労感で

もう一度同じ距離を同じ速度で走るのは無理だし

そもそもモノレールは出発しちゃって最悪でも5分はこの空間に 

二人でいないといけな…いけなくもないな!


車両換えたらいいんじゃね。一緒にいるこた、ないよね。

移動しよかな。


てか、この人なんで、追いかけてきたの…。

普通ありえなくないですか…?

こ、こわいな…。

まだトドメ刺し足りてないとか思ってんのかな。

充分だよ。

充分トドメさされて敵前逃亡までしてっからそこは安心しといてよ…!

まさか敵将が追いかけてくるとは思いもしてなかったよ…!



………よし、ここはズガーンいってやろう。

そうだいってやろう!!


「…あ、あの。他の子達ももうすぐ待ち合わせ場所に来ると思うんで

 葛木君は、すぐに戻った方がいいと思います…

 み、みんな、心配すると思います…!」(超小声)


くっくっく。どうですか。

皆の心配と、葛木秋夜の良心に訴えかける戦法でもって

実は「はよう、ここから立ち去れい!!」と言っているというね!

自分は良識ある人間である事を装うのがミソです。


「じゃ、それじゃアノ、私は体調がわるいので…これで…」(超小声)


…あれだけ全力疾走をしたのを目撃されてるってか

追いかけられてるのでこの言い訳は我ながら苦しいけども…!

向こうにとって私は嫌いな相手なんだから

そこはスルーしといてください。


流れるような動きで車両を換えようと移動し始めたら

葛木秋夜もなぜかしらついてくる。


は、はぁあい?!

察して下さいよ。

汲み取って下さいよ。

あなた、私の事、嫌いなんですよね?!

私も「なんでいんの?」とまでいわれて

ここにいるほど図太くもなければ

たくましくもねーんですよ!

いかん、また泣きそうになってきた…!

感情がまた、ぶれだす…!!!


「待ってほしい。さっきのは…失言だ。謝るよ」

「…?」

「さっき。君はどうしているのって俺いっちゃったけど…

 あれは…その、説明に困るんだけど

 君がいて困るとか嫌だって、意味じゃないんだ」


え、なんです?一体何をいっていやがるんです?

もうそんなフォローとかいいですしおすし…。


「あ、ここ席が空いてるよ、座って?」

「え、いや、え?」

「いいから、ね」


圧倒的な美貌のまえに逆らう事も出来ずまんまと座らされて

葛木秋夜は右手でつり革をもち左手でポールをもって

私はなんだか葛木秋夜に閉じ込められたような気持ちになる。


え、とりあえず逃げないんで

目の前に立つのやめてくれません?


と言いたくとも、小心者なので言えないから

肩を縮こまらせて座るしかない。言われるがママです。

さーせん、長いものには巻かれてしまいがちです…。

…いかん、もう、なにがなんやらわからんぞ…。


頭上で「ふぅ」と大きく息をつく音がきこえた。

ちらり、と目だけあげて顔を伺ってみるとそこには

「悩ましげ」かつ「艶美」に視線をさまよわせる葛木秋夜がいた。



挿絵(By みてみん)



か、勘弁してくれ…フェロモン垂れ流しよくない…。

やっぱあれだな、こういうのは二次元にかぎるな…。

三次元で直面してもニヤつくどころか心臓に悪いわ…


などと若干現実逃避しつつ、とりとめもなくしょうもない事を考えていたら

葛木秋夜が今までさまよわせていた視線を私にあてて

悩ましげに口を開いた。


「さっきの件なんだけど…」

「え、は、はぁ」

「ほんと、ごめんね…」

「え、はぁ…はい…?」

「うまく、説明できるかな…あのね

 俺ってさ、言い方が悪くなっちゃうけど…

 わかりやすく言うと

 人が近くにいると落ち着かないんだ。


 あ、ピリピリするとかそういう意味じゃないよ。

 なんていうか、頭のどこかで他人が近くにいるってことを

 意識しちゃって心の底からは落ち着けない…っていうのかな…。

 ー神経質、、なのかな…。多分。」


「はぁ…」

わかるような気がする。

現にいま、近くにあなたがいて落ち着きませんのでね。

なんていえないのでこれまた黙ってる。


「それが…あの、杉浦さんは………それがないんだ。」

「へ」

「なんていったらいいのか…。空気、、みたいな…」




はーーーーーいはいはいはいはい!

はい!!!

葛木秋夜より私の唯一の得意スキル「空気」に

お墨付きもらいましたーーーーーーーーーーー!!!!!!


神経質と自称する人に、「空気みたいだ」って

それどんな存在感のなさだってのよ。


はぁ……………もう

かえって乙女ゲーやりたい…。

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