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口寄せ巫女と泡の子  作者: 淡雪みさ
第四章 過去との決別

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彼の亡骸



 お兄ちゃんの亡骸を葬儀で見た時、そこに中身を感じなかった。

 棺の中に彼は存在せず、ただ殻だけがそこに残っていた。


 その夏は猛暑日が続いていた。

 お兄ちゃんが死んだその日から、耳元でおかあさぁんと泣き叫ぶ声が聞こえるようになった。

 その声が耳障りで思考が捻れた。頭が少しずつ壊れていくような感覚があった。


 お兄ちゃんの死からほどなくして、私に「家族になろう」と言ってくれたおばあちゃんがいなくなった。


 私は気付いた。ぼんやりとした輪郭しかなかったはずの世界に、数多くの線が滲むように浮かび上がってきていたことに。

 その視界は、いつも少し焦点が合わない。まるで、背中に張りついた誰かの目を通して、これまで見えなかった世界を覗かされているようだった。

 歩くたび、肩甲骨のあたりに冷たい重みを覚える。息を吐くと、その重みがわずかに震え、視界も揺れた。

 おかあさん、とまた声がする。


 あの時お兄ちゃんを裏切って、悪者に仕立て上げた罰なのだと思った。

 お兄ちゃんはまだ、私のことを許していないらしかった。





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