第43話 「商会長ゲロルと交渉」
「では、話を付けて来てくれ」
「はぁ......わかりました。約束は約束ですからね、ちゃんと話は通してきますよ」
そう言って店員は階段を上がり、おそらく商会長の元へと向かっていった。
店内の商品を見ながら待っていると少しして、店員が下りてくる。
「お客様、商会長がお会いになっていただけるそうですよ。ただ、これは商会長の善意です。決して失礼の無いようにお願いします」
「わかっている。突然襲い掛かられるみたいなことが無ければ、ちゃんと対応するさ」
「本当に大丈夫ですか......?頼みますよ」
店員に軽く釘を刺されながら、「着いてきてください」という声に従って階段を上がっていく。
上がった二階には正面に大扉があり、扉には商会長室と書かれていた。
「ここが商会長の居る部屋です。私がノックをしてから入りますのでその後に着いてきてください」
「わかった」
「――失礼します、お客様をお連れしました」
店員がノックをしてから大扉へ声をかけると、中から男性の声で『入れ』と聞こえてきた。
大扉を開けた先に居たのは、ガマガエルのように太り、脂ぎった肌の男性と、その横を守るように立つ筋骨隆々の獣人だった。
おそらく豪華な皮製の椅子に座っているのが商会長で、隣に居るのはボディーガードか用心棒みたいなものだろうな。
「こちらがココナ商会のトップ、ゲロル商会長です。お客様、自己紹介をお願いします」
......ここは相手のフィールドだし、敬語にしておくか。
「私はゼノヴェルといいます。ゲロル様、今回は店員との約束とはいえ私の無茶な願いを聞いてくださりありがとうございます」
「ゲッゲッゲ、よいよい。この店で一番高い商品を買ってまでワシに会いたい用があったのであろう?そこまでしてくる客を無下にはせんよ。なぁ、イノノフよ」
「はい、このコラプトで求められるのは戦闘力か財力だと言われています。そのうちのひとつを我々の商会で使っていただけたのです。であれば、商会長の判断は間違いありません」
ゲロル商会長が横の......イノノフと呼ばれた獣人に話しかける。
話しの流れからすると、ゲロル商会長は心の広い人のようだ。当然、善人でないことは魂の色でわかってはいるがそんな奴の方が少ないコラプトではしっかりと会話出来るだけ良い部類だな。
「それで......今日は何の用があってココナ商会に来たのかな?」
「ゲロル様に聞きたいがありまして、最近赤い宝石の付いたブローチを手に入れたのではないか......と」
俺の言葉を聞いたゲロル商会長はにやつきを増やして、好意的な表情から一気に商人の顔に変わっていった。
腕を組み、試すような視線を向けながら口を開く。
「どこでその噂をなどという野暮な質問はせん。ゼノヴェル、君はいくらでこのブローチを買う?ワシを満足させる答えを出せれば君に買わせてやろう」
やはり商人だな。余計なやりとりを吹っ飛ばしていきなり取引ときた。
このまま金を積んで解決してもいいが、それだけではゲロル商会長も商売人。安定した答えには満足しないだろう。ここは、得意な力を魅せるとしようか。
「では、ゲロル商会長が求める鉱魔獣を狩ってきましょう。どれだけ強くても構いません。価値があり、ゲロル商会長がブローチと同価値と思うものをおっしゃってください」
「ほう......面白い提案だ。だが、君にそれを達成出来る力があるのかね?ワシの頼みで有望な客を死なせるのは流石に遠慮したいのだが?」
純粋な心配というよりは、こちらを試すような目でゲロル商会長が問うてくる。
ここで力を試すためには......イノノフを利用させてもらうか。
「その心配はごもっともです。では、ゲロル商会長が信頼を置いているであろう、イノノフ様に私の強さを計っていただくというのはどうでしょうか」
「なるほどな、イノノフそれでいいか?」
「はい、私は構いません。――ゼノヴェルといったか。俺は何をすればいい?」
ここが平野や訓練所のような広い場所なら単純な手合わせでもいいのだが、わざわざ移動させるのも申し訳ない。
イノノフには龍の恐怖を感じてもらうか。
「では、今から私がスキルを発動させます。それに耐えられれば私の負け、逆にイノノフ様が足をつけば私の勝ちというのはどうでしょう?力の差を示すだけですので、傷が付くことはありません」
「良いだろう。――ゲロル商会長もその条件で良いでしょうか」
「了承した!では、イノノフに足を付けさせることが出来ればワシから鉱魔獣の討伐を依頼しよう」
「ありがとうございます」
俺は少し横にずれてゲロル商会長が見やすい場所に移動する。それに合わせて正面にイノノフが立つ構図へと落ち着いた。
「準備はいいですか?」
「ああ、いつでも大丈夫だ」
腕を組んで余裕の表情を見せるイノノフに上位種である龍の力の一端を魅せてやろう。
「龍の瞳、発動」
瞳に魔力が宿り、魔力量が俺よりも低い相手に恐怖と威圧感を与える。
俺の魔力量はマジックタンクにより、常人以上のものとなっている。
「ぐっああああああああ!!!!???」
イノノフは全身から汗を噴き出し、その場で跪いた。無理に耐えようとした分、反動が大きいのだろう。
叫び声を上げたあと、白目を向いて崩れ落ちた。
「――どうでしょうゲロル様。これで私に依頼を出していただけますか?」
「ゲッゲッゲ!!!最高だ!ああ、交わした約束に二言はない。相応しい依頼を君に与えよう!」
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