第42話 「ココナ商会」
「結局、他には収穫無しか。無駄な時間では無かったが、一日探し回っても見つからないならココナ商会に行くしかないかな」
あれから太陽が沈んで夜を迎えるまでの間、俺はコラプトを歩き回りブローチについて調べていた。
ただ、ブローチ本体は当然場所に繋がる情報も、目ぼしいものは手に入らなかった。
となると、残された手段はココナ商会にしかない。
「だが、ここまで探って見つけられないなら納得はいった。明日はココナ商会で会長に会おう」
◇◆◇◆
ブローチの落とし物を探す依頼を受けた翌日、昨日のうちに場所を確かめていた俺は、ココナ商会まで足を運んでいた。
ココナ商会の見た目は何というか、成金といえばいいのか。明らかに高そうな装飾に金と茶で統一された塗装。
何も知らない人が見ても、ここは金を持っているとわかる見た目をしている。
「コラプトでこんな見た目をしてたらすぐ強盗にでも遭いそうなものだが、無事に営業出来ているということは武力を持っているのか、それとも裏と繋がっているのか」
俺としてはどちらでもいいが、交渉も一筋縄ではいかなそうだ。
「とりあえず入るか」
ゴテゴテとした装飾が付いたドアノブを回して、商会に入る。中は様々な商品が所狭しと置いてある。そのなかでも特に目立つのは、高そうなアクセサリーだ。
ガラスのケースに様々な宝石や鉱石を用いた指輪やネックレス、そしてブローチが並べられていた。
入ってきた俺を見た店員が軽く頭を下げたあとに口を開く。
「いらっしゃいませ、こちらココナ商会でございます。ごゆっくりお楽しみください」
「ご丁寧にどうも」
しっかりとした対応をしてくる店員だが、俺の瞳に映る魂は赤黒い色を発している。ただ、ここはコラプト。こんな街で正しく生きるのは不可能に近い。
魂の色だけで犯した罪の重さを計るのは難しい。それは昨日街を回って理解したことだ。
とりあえずはただの店員として接しよう。
「すまない、確認したいんだが今日商会長はいるのか?」
「商会長に何かご用ですか?アポイントは取っておられるでしょうか」
「いや、取っていないな」
「であればお会いすることは難しいです。商会長もお忙しいお方ですので、お時間は空いていないかと」
店員はこちらを冷たい視線で見つめてくる。まあ、相手からしてみれば礼儀のなっていないガキが到底無理な要求をしているという状況だ。
元々俺もこんな要求が簡単に通るとは思っていない。
「では、このガラスケースにある装飾品で一番高いものを買うといったら会わせてもらえないか?」
「貴方みたいな子供がですか?このなかで一番高いものとなると......このダイアモンドの指輪ですが本当に買えるんですか?」
店員はガラスケースを指でとんとんと叩きながら、ダイアモンドの指輪の値札を見るように示してきた。
その値段は、白金貨5枚――金貨500枚に相当する――だった。
確かに高いものだし、村に居た頃の俺が見ていれば泡を吹いて倒れるほどの金額だが、今の俺は盗賊やチンピラたちから巻き上げた金のおかげでこれくらいであれば問題無い。
「――これを買えれば商会長に会わせて貰えるか?」
「ええ、いいですよ。もし、これを購入出来れば貴方を上客と認めて、私から商会長にご紹介します。どうせそんなお金無いでしょうけど」
「その言葉、絶対に忘れるなよ?」
ため息をついてこちらを舐めている店員に軽い苛立ちを覚えながら、ガラスケースの上に五枚の白金貨を叩きつける。
店員は訝しげな表情をしながら、俺が置いた白金貨を見ると途端に顔色を変えて焦り始めた。
「こ、これは......本物の白金貨。それも五枚!?」
「お望みの金だ。これでそのダイヤモンドの指輪を買わせてくれるんだろ?ほら、早くしろよ」
「くっ......何てガキだ!――わかりました、これで貴方は上客として扱います!ちゃんと紹介しますよ......」
「おう、頼んだぞ。ちゃんとした客に失礼な態度を取ったんだ、商会くらいはしてもらわないとな」
店員は悔しそうな顔を隠そうともせずに、ガラスケースからダイヤモンドの指輪を出して、梱包を始める。
そういうところはちゃんとした店員なんだな。多少無理を言った自覚はあるから今回は圧をかけたりするのは止めておいてやるか。
「色々あったが、何とか商会長には会えそうだな」
こうして俺は特に興味も無いダイヤモンドの指輪と商会長に会える権利を得た。
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