第38話 「でくの坊の盗賊団長」
部下が殺されたことで血が昇っているのか、顔を真っ赤にしているベアノフは拳を握りしめて恨みの籠った視線を向けてくる。
「さっきは不意を突かれたが、正面で戦えばお前に何て負けねえ!!地熊の暴斧『機動』!!!」
ベアノフのキーワードに反応して身体から赤黒い光が溢れ、右手に集まっていく。
光が形成したのはベアノフより一回り大きい片刃の大斧だった。鋭い刃というよりも相手を潰すための鈍重な様相をしている。
「それがお前の神導武器か」
「ああ、俺はこの斧で何人も殺してきた。そして、そのリストに今からお前も加わるんだよ!」
「お前程度に俺が殺せるのか?ぬくぬくと雑魚狩りしているだけの熊ごときに」
人型の畜生で少しばかり力を持ったやつと対峙するのは初めてだが、何とでもなるだろう。
俺とベアノフは同時に互いの神導武器を構えた。
「じゃあ、死ねやあああ!!」
じっくり様子を見ても良かったのだが、怒りで耐えられなかったのだろう。ベアノフが先に斬りかかってきた。
「不可視の歪曲発動」
俺は重力魔法の不可視の湾曲を発動させて周囲に重力のバリアを張る。
ベアノフの斧はバリアに阻まれて俺の横を通っていく。
「うおおおおおお!!!!」
何度も何度も俺に向けてベアノフは斧を振るうが俺の身体に届くことは無い。このままずっと待っていてもいいのだが、それでは意味が無い。
シャーマ様のもとへ送る前に、来世も後悔し続けるほどの恐怖を植え付けおこう。
「暗影の力よ、俺の身に宿り神の威光を示せ」
俺の心臓から光を通すことの無い暗闇が放出して身体に纏わりつく。闇は線となり俺の身体を覆うローブを作り出した。
シャーマ様の代行者として、そして暗影の信徒として畜生以下に判決を下そう。
「おい、ガキ......何なんだよその姿は!?」
「何か......そうだな。お前には勿体ない神の力だ。ベアノフ、俺からお前に向けて最上の死を与えてやろう」
俺は暗影の力をエンチャントしてからブラッドチョッパーを縦に振るう。
大鎌から放たれる黒の斬撃はベアノフの左腕を吹き飛ばした。
暗影の力は再生を止める。
「ぐっああああ!!!!」
「おいおい、片腕が一本無くなっただけで叫ぶなよ。お前に殺された人たちはそれ以上の苦痛を味わって死んだんだぞ」
その程度で叫び出すなんて情けないやつだ。
血が噴き出している左手の断面右手で抑えながらベアノフは俺のことを睨みつける。
「ちくしょう......なめやがって!!!そんなに死にたいならすぐに送ってやるよ、獣化!」
ベアノフが何かスキルを発動させた。すると、ベアノフの身体が徐々に変化していく。
全身に毛が生え、右手の爪が発達し、筋肉も盛り上がっていく。変化を終えた姿を例えるなら赤毛の熊かな。ただ、その手には斧が握られているが。
二足歩行の熊に変わったベアノフは口から荒い息を吐いて魔力を溜め始めた。
『おいガキ!調子に乗ったその面をぐちゃぐちゃに潰してやる......!!暴熊の破砕撃!!』
興奮しながら、アーツを唱えたベアノフの斧が俺に向けて振り下ろされる。
正直いえば、怒りに支配された攻撃なんていくらでも避けられる。ただ、こいつの心をへし折るには完璧に制してこそだよな。
「ブラッドチョッパーよ、蓄えた血を解放しろ」
俺はベアノフの斧に合わせるように、ブラッドチョッパーをかち合わせる。
単純な力でいえば押し切られるかもしれないが、幸いなことに弾き返すために必要な血は先ほどの盗賊たちから頂いた。
処刑台の刃から凄まじい量の血が噴出して斧を吹っ飛ばす。さらに、血の勢いは衰えることなく、弾き返した血の奔流が鋭い刃となってベアノフの全身をズタズタに切り裂いた。
「毛が赤いから血が出ているのかわからないな。――どうした立てよベアノフ」
『ま、まだだ......!!まだ俺には超回復スキルがある!まだ俺は戦える!』
回復系のスキルを持っていたのか。ただな......
「はあ~......」
『な、なに溜息をついてるんだ!俺の牙は折れてないぞ!?』
哀れな熊が騒いでいるが、頭に血が昇り過ぎて現実が見えていないようだ。ここは優しさで教えてやるか。
「気づいて無いのか?傷、治らないだろ?」
『は?そ、そんなはずは......』
ベアノフは自身の身体を眺めて俺の言葉を確かめる。だが、どれだけ待ったところで血が止まることも、無くした腕が生えることも無い。
「これが暗影の力だ。一度付けられた傷はもう治らず、お前が死を迎えるその時まで身体に刻まれる」
『な、なんだそのでたらめな力は!?』
断罪の光で奪われて残り少ない魔力を使い果たし、回復出来るスキルも通用しないとなればあとはほっておけば死ぬ命だ。
だが、最期は俺の手でベアノフを殺すことに意味がある。
最早、動く力も残されていないベアノフの首に大鎌の刃をかける。
「さあ、これで終幕だ。最後に言い残すことはあるか?」
『俺が......俺がこんなところで終わるなんて!お前のことは死んでも忘れんぞ!』
「そうか......では、さようならベアノフ。死してなお続く夢を魅せてやろう」
俺は目が血走るベアノフを見つめながら首を跳ねる。
残ったのはころころと転がる首と頭の無い胴体だけだった。
『殺した貴方は夢を魅る発動』
【作者からお願い】
もし少しでも、
「面白い」
「続きが読みたい」
と思っていただけましたら、
下にある☆をタップして
★★★★★にしていただけると嬉しいです
応援、感想お待ちしております




