第33話 「表の小物、裏の巨悪」
「早速向かおうか、その闇ギルドとやらに」
「ええ、私についてきてください。......とその前に自己紹介くらいはしておきますか。私はカルネリアといいます、少し長いのでカルネと呼んでください」
ああ、たしかに流れで連れて来て話を進めてたからまだお互いの名前も知らなかったか。
「俺はゼノヴェルという。ここから遠くにある村出身の子供だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「戦闘経験もあるチンピラを全て殺し、私の隠密を見破った人の経歴がそれだけというのは信じがたいですが、いいでしょう」
何処か納得がいかないような表情で俺を見るカルネは、部屋の扉を開けて外へ出ていった。
俺も自分の荷物を持ってから、先に出ていったカルネを追うように部屋から出て下に降りていく。
すると、そこにはカルネと昨日俺のことを人攫いと勘違いした宿屋の店主であるパーソルが立っていた。
「お、姉ちゃんも目を覚ましたのか。俺はパーソルだ。この犯罪都市コラプトのなかではマシな経営をしていると自負している宿屋の親父だぜ」
「カルネリアです。昨晩は泊めていただきありがとうございました......宿泊料をお支払いします」
「坊主から聞いてないのか?うちは先払いが基本だからな。昨日のうちに坊主が二人分払ってあるぞ」
パーソルが俺を見て、「伝えてなかったのか?」と言ってくる。
「起きてからすぐに予定があったので伝え忘れてました。今日は一度出てきますが、俺は今後もこの宿屋を利用させて貰います。代金はそのついでですよ、カルネさん」
「......ありがとうございます」
多分カルネは連れ去られて恩を着せられたように感じているだろうが、ここは素直に話しを合わせてもらおう。
「それじゃあ、出かけてきます。パーソルさん、またあとで」
「おう、今度は拾い物してくるなよ~」
「こんな珍しいことはそうそうありませんよ、では」
そう言葉を残した俺は後ろで頭を下げているカルネと一緒に宿を出ていった。
◇◆◇◆
街道を歩きながら、カルネと共に闇ギルドに向かっている。
まだ朝早い時間だからか、外に出ている人も少なく、昨日見たようなチンピラのような柄の悪いやつも見えない。
そんな静けさのなかコラプトをゆっくりと観察しているとカルネが話しかけてきた。
「あの、貴方パーソルさんに私のことをなんて説明したのですか」
「あ?今日街に来て宿屋を探してたら路地裏で寝てる女がいたから心配で連れて来た。何があったのかはわからないが宿泊料は払っておくって伝えたぞ」
「そうですか......貴方が眠らせておいて、ですか」
なんか小さな声で文句が聞こえたが、その方が話が早かったんだから納得してくれ。
そもそもこいつが隠れて様子を見てたのも原因だしな。
「――それで、この街のまとめ役について教えてくれるのか?」
「そうでしたね、説明する約束でした。とはいえ、この街には二人のまとめ役がいるとされています」
二人?俺の村のように村長の一枚岩では無いってことか。
「一人は犯罪都市コラプトの領主であるポルコ・マートンジュです。ポルコは代々この街を治めてきたマートンジュ家現当主です。彼が就任後すぐに納税額を跳ね上げ、裏で盗賊団と繋がったことで、この街が犯罪都市と呼ばれるようになりました」
「随分とあくどいやつだな。そんなことをしたのに止めるやつはいなかったのか?義憤に駆られて立ち上がったやつとか、正義感の強い無鉄砲なやつとか」
「最初の頃はそのような者もいたのですが、ポルコは偽の罪を着せることで処罰していったようです。正しい領主だった彼の祖父や父も不審死を遂げていますし、子供も同じような思考なのでこれからに期待は出来ませんね」
あくどいことをいくらしても、咎めるやつがいなければお終いか。それで何人の民が死んでいったのやら。
「コラプトはすでにポルコが招き入れた盗賊団の巣窟です。力が無いものは虐げられ、暴力が全てを支配する。それがここでの日常になっています」
「じゃあ、ポルコが居る限りはこの街から犯罪は無くならないってことだな。住人全員が平等に力を付けるなんて不可能だしな」
罪を取り締まる側が腐ってるなら、その恩恵を受け取る民も腐っていく。それを変えようとするのであれば、全てを更地にするか心変わりをさせるか、か。
俺がどちらを選ぶかはそのポルコとやらの顔を拝んだときに考えるとするか。
「そしてもう一人、コラプトで表の悪がポルコだとするなら、やつは裏の巨悪。ベノム盗賊団の団長、ベノム・スカーレットです。女性でありながら、盗賊団を纏め上げるその姿から『血毒の蛇』とも呼ばれています」
ポルコの招き入れた盗賊団が裏の世界を牛耳り、表は圧政で搾り取る。そうして金を巻き上げた住人に残されるのは奴隷になるか死を待つしかなくなるだろう。
この構図を作ったのはベノムだろうな。ポルコが頭の回るやつだとしても、ここまで綺麗な悪党の楽園を作れるとは思えない。
ポルコはベノムに利用されている可能性がある。大方、甘い言葉に誘われた豚だろうな。
「用意周到なやつだな、そのベノムとやらは。聞いただけでこの世に居るべきじゃない害獣だっていうことがわかる」
「噂程度ですが、この街に外から来る悪党どもは全てベノムの息がかかっているらしいです。そうして、善良な市民を消していき最後には自分の国を作りたいのでしょう」
ただの盗賊がよくここまでやったものだ。それだけは認めてやるとしよう。
「だが、話し方から察するに目的の闇ギルドはベノムの手には落ちていないんだろう?」
「ええ、闇ギルドはトップが作り上げた独立組織です。私は元々この街で生まれましたが、知らなかっただけで私の生まれる前には存在していたらしいですよ。一般人には秘匿されており、その存在を知る者もほとんどいなかったようです」
なら、少しは安心だな。流石に盗賊団のお仲間と会うのは現状だと避けておきたい。
それに、こんだけの悪党が幅を利かしているコラプトで存在し続ける組織っていうのにも興味が出てきた。
「さて、そろそろ着きますね」
そう言って俺の少し前を歩いていたカルネは横道へ入っていく。
そして、よくあるような酒場の前で足を止めると後ろを振り向き、俺を正面に捉えた。
「ここが闇ギルドの隠れ蓑......『泥酔の酒場』です」
【作者からお願い】
もし少しでも、
「面白い」
「続きが読みたい」
と思っていただけましたら、
下にある☆をタップして
★★★★★にしていただけると嬉しいです
応援、感想お待ちしております




