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大鎌が魅せるは貴方の最期~畜生以下の存在には最期に夢を魅せましょう~  作者: いさな


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第32話 「悪意には悪夢を」

 悪とは何なのだろうか。


 見る角度によって変わるものだが、多分初対面の子供を裏路地に連れ込み囲う者たちは正義は持たないだろう。


 では、そいつらを全員殺して身ぐるみを剥いで資金源にしている俺は悪なのだろうか。


 希望を与える英雄だとしたら落第点もいいところではあると思うが、この世界を生きている普通の人としては正しいと思う。


「シャーマ様が見れば不快だと感じる行いをしている時点で処刑対象ではあるな」


 結局はそこだ。シャーマ様が物言わぬ死体になっているこいつらを見ても心を痛めることは無いだろう。


 なら、俺が死後の魂に慈悲を与えて悪夢を見せ続けることで改心する可能性に賭ける方が建設的だ。


 俺はアトラクトドレインを使い、死体全てを魔力に変えてから吸収していく。


 そして、残った衣服などは必要なものだけ抜き取り、ブレイクを使って塵に変えておいた。


「ここまで腐っている街なら全てを更地にしてもいいとは思うが、中には前を向いてひたむきな努力を続けているやつもいるかもしれない。その可能性を捨てるのは思考停止が過ぎるな」


 俺はすっかり暗くなった夜空を眺めながら物騒な考えを行動する前に捨て置く。


「それにしても......ただのチンピラだと思ったんだが、そこそこ戦えるやつらだったな。人攫いたちも初撃は避けてたし、ただ弱者を狩って胡坐搔いてるやつらでは無さそうだ」


 戦力が殺された俺の村の住人なら、全員でかかってもチンピラ一人に速攻殺されるだろう。これがこの街の基準なら相当高いことになる。


 流石に俺が負けることは無いんだが。


「――なあ、お前はどう思う?」


 後ろを振り向き、虚空へと声を響かせる。


 常人には何も見えないだろう。だが、俺の瞳には魂の色が見えている。


 気配を消してずっとこちらの様子を伺っていた者は、俺に気づかれていることを察知して瞬時に逃げの行動に出た。


「逃がしてもいいが......話くらいは聞きたいな。幻惑夢、発動」


 視界に入っていた逃亡者を囲むように地面から紫色の煙が出現する。逃亡者はもうすでに鳥かごの中、いちど煙の中心に入れば逃れることは出来ない。


「捕獲」


 合言葉と手を握る動作を合図に、中心に向かって紫煙は対象者を囲い込む。この煙に少しでも触れた者は幻のなかに囚われて、自分に都合のいい夢しか見れなくなる。


 ふらふらとバランスを崩した逃亡者はその場に倒れ動かなくなった。


「おやすみなさい、お姉さん。目覚めは良くしといてやる、サービスだ」


 ◇◆◇◆


「ここは......どこですか?」


「適当に入った宿屋だ。人攫いは入れられないとかいう勘違いをされて大変だったぞ」


 寝ていた逃亡者は俺の声が聞こえた途端、ベッドから跳ね起きて一定の距離を取る。


「せっかく殺さないでおいたのに酷い反応だな。疑われそうだったから拘束もしなかったんだぞ」


 まぁ、逃げたはずがいつの間にか眠らされていてそれをしたと思われるやつが話しかけて来たら警戒するのは当たり前だが。


「......何故殺さなかったのです、あの人数の首を瞬時に切り落とした貴方であれば私も殺すのが定石じゃないのですか」


「落ち着けって、俺は殺人鬼じゃない。街に入ってすぐに囲まれてな。あのチンピラ共はいい所に連れて行ってやると言いながら、俺を裏路地に連れ込んでリンチしようとした。それに反撃するのは正当防衛、だろ?」


 それに、魂は赤黒いやつしか居なかったのは確認済み。大方、今回みたいに金を盗った後は逃がしもせずに殺してきたんだろう。


 そいつらを俺が殺したから殺人鬼は心外だな。


「俺がお姉さんを殺さなかったのは情報が欲しいからだ。スキルがあったから気づけたけど、相当隠密行動が上手いだろ?だから、俺の知りたいことを教えて貰えるんじゃないかなってね」


「では、貴方が求める情報を教えれば命は助けるということですか?」


「当たり前じゃないか、こんな子供が情報を知ったから用済み〜なんて言うと思う?」


 俺は手を広げて無害であることを精一杯アピールしてみる。


 お姉さんは納得いかなそうな微妙な表情をしているが、そこは無理矢理にでも飲み込んで欲しい。


「あの手際の良さを見てただの子供だとは思えませんが......でも、助かるには情報を渡す方が良さそうです」


「ありがとう、お姉さん。俺が求めてるのは、この街の基本情報――誰がまとめ役なのかとかかな?あとは、悪人を気兼ねなく断罪できる場所だ」


「――街の情報ならすぐ渡せますが、断罪できる場所ですか......それを話すには何故その情報が欲しいのかを知りたいです」


 俺の見立ては間違ってなかったかな?このお姉さんはどっちも知ってそうだ。


 俺が断罪できる場所を求める理由は当然......


「シャーマ様のためだ。シャーマ様がこの世界を眺めたときに視界に畜生以下の存在が入るのが許せない。シャーマ様が要らないと判断したものを俺の手で処刑するため。シャーマ様は不幸な子供を作る根本から除去しようと考えている。なら、信徒である俺が率先して動くのは当たり前だ」


「そ、そうですか......狂信者タイプですか、また濃い場所になりそうですが仕方ありません。これも私が生き残るため、他の人には苦労させそうですが許してくれるでしょう」


 お姉さんは何か小声でブツブツ言っているが、納得してくれただろうか?


 俺のシャーマ様への想いを聞いて分からないことなんて無いはずなんだけど。


 お姉さんがまだ分からないのなら、シャーマ様の素晴らしさをループさせる夢でも見せようか。


 百万回くらい同じことを脳内に刻み込めばきっとお姉さんも分かってくれるはず。


 そんなことを考えながら待っていると、俺の様子に気づいたのかお姉さんはひとつ咳払いをしてから口を開く。


「わかりました、断罪できる場所というのに心当たりがあります。私が案内しましょう。まとめ役についてはその道中でお教えします」


「流石、お姉さん。こんな抽象的な問いに答えられた上に、案内までしてくれるなんて。そこはなんて場所なんだ?」


 いきなり連れてかれた先で集団攻撃に会う可能性もある。ちゃんとした場所なのかくらい聞いておかないと。


「これから向かうのは、裏の全てを扱い依頼を受ける場所、通称闇ギルドです。私も所属しています」


「闇ギルド......いいね、向かおう。――でもギルドなんて古い呼び方されるんだな。本の中でしか聞いたことないがそんな昔からある組織なのか?」


 俺がそう聞くとお姉さんは苦虫を噛み潰したような渋い表情をしてから、声を出す。


「いえ、トップの趣味です」


「そ、そうなのか。個性的でいいな」


 お姉さんの表情に免じて深堀はしないでおこう。


 トップが子供趣味みたいな発想で名前付けしたのが嫌だったのかな。


「まあ、そこに向かえば貴方の望む者は手に入るでしょう」

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