第31話 「舐めた門番」
それからゆっくりと歩いてコラプトに向かっていた俺が街の入り口に着いたときには、すでに空は日暮れに近づいていた。
入り口には身なりの整った門番らしき男が立っている。あいつに話しかければいいだろう。
正直、犯罪都市と呼ばれているくらいの治安なら壁を飛んでって強引に入ってもいいんだが、今回は正攻法で行くことにしよう。
これで追い返されるなら、その時に考えればいい。
「すみません、ここがコラプトですか?」
「そうだが、この街に何かようか?お前みたいなみすぼらしいガキには入ることさえ難しいと思うが」
なんだこいつ。最初から罵倒してきたのもそうだが、自分の方が優位に立っていると思ってニヤニヤと馬鹿にしている表情が特に腹立つ。
確かに、今の俺の服装は村に居たときと変わらないものだからな。多少田舎者には見えるかもしれないがここまで露骨に下に見られいわれは無いはずだ。
腰に手を当て、憎たらしい体勢を取りながら門番は話し続ける。
「まあ、俺は優しいから教えてやる。お前みたいなやつがここに入る方法は二つだ。誰かに連れられてその先で奴隷として売られるか、もしくは金貨3枚を俺に手渡すこと。前者ならまだ可能性はあったが、明日の金も無さそうなお前には無理だな」
そして追い返すように「諦めてどっかへ行け」と言ってから手を払った。
今ここで殺してもシャーマ様は許してくれるだろうか。
――いや待て、落ち着くんだ。龍の瞳にはこいつの魂は灰色に映っている。ということは多分だが、殺しはしてないただの小悪党なはず。
イラつくという理由だけでこいつを殺してしまえば、流石にシャーマ様へ顔向けできない。
俺は苛立ちを抑えるために深く溜息をついてから、懐に入れてあった《《金貨五枚》》を取り出して地面へとばら撒いた。
「おいおい、お前にとって貴重な金だろ~例え鉄貨だとしても勿体ないぜ」
「何か勘違いをしているようだが、それは金貨だぞ。それも5枚だ、拾わなくていいのか?」
「は?ガキがそんな大金持っているわけ......」
ちゃんと教えてやったのに俺の言うことが信じられないのか、疑いの目を向けてくる門番に向けて足元に落ちていた金貨を蹴り上げ、額に当てる。
「いてっ!?ガキがふざけんなよ!」
「しっかりと確認しろ、それがあれば俺も入れるんだろ?良かったじゃないか、金貨二枚分得したな」
門番が目の前に落ちた金貨を手に取り、確かめている間に横をすり抜けてコラプトの中にゆっくりと足を進めていく。
この金貨はあの人攫いどもから拝借したものだ。壊した魔蒸甲車にはあいつらの持っていた金が残ってたからな、これで当分は金に困らない。
もうあいつらはこの世にはいないし、迷惑料としてもらっても誰も不幸にならないだろう。
「な!?待てよ、ガキが!」
プライドを傷つけられたとでも思ったのだろう。門番は街に入ろうとする俺の手を掴み、また何か言おうとしてくる。
ここまで相手の言い分に従ってやったんだ、少し怖がらせるくらいの意趣返しはしてもいいか。
俺は龍の瞳を発動させて、手を掴む門番と視線を合わせる。
「まだ......何か?」
「ひっ......な、何でもないです。ど、どうぞお通りください......」
俺の瞳からしっかりと恐怖と威圧感を受け取ったのだろう。門番はその場で尻もちをついて汗を垂らしながら震えていた。
龍に見つめられただけでこれとは、残念なやつだ
怯えた子犬みたいなこいつに構っている時間も惜しい。とりあえず、裏路地にでも入って誰かに聞けば情報は集まるだろう。
そんなことを考えながら俺はやっとコラプトに入ることが出来たのであった。
◇◆◇◆
(門番視点)
「な、なんだあの化け物は......」
俺はこの犯罪都市コラプトで結構長いこと門番をやってきた。
ガラの悪いやつらにも怯まず、この街へ近づいてきた浮浪者やガキを追い払うという。それが俺の仕事だ。
俺なりの親切心で、理不尽な金額を吹っかけてこの街への入場を阻んでやることで、やつらの身を守ってやるんだ。
犯罪に手を染めてない一般人がこの街に入れたところで、どうせ借金漬けにされて奴隷にされるか難癖を付けられて路地裏で転がされる生活が待っているだけ。
なら、せめてもの情けでそもそもは要らないように止めてやるんだ。まあ、少しの金は頂くし、入れなかったせいで鉱魔獣や野盗にやられても知ったこっちゃないがな。
そして今回も村から出てきたような服装のガキが来たんで、同じように追い返してやろうと思ったんだけどなあ......
「俺はただ目を見ただけだぞ?なのに、あのガキから触れちゃいけないものに触れたような恐怖を感じた......人を何人も殺したことがあるような犯罪者でもこうはならねえ」
見た目通りの年齢ならまだあいつは13~14歳くらいだろう。そんなの、神導武器を授かってからそんなに経ってねえじゃねえか!
それなのにあいつの後ろに龍がいるように見えちまった......見上げるほどの巨体で俺のことを獲物だと認識して睨む龍の姿が、あいつの背後に立っていた。
「絶対あいつにはこれ以上関わらねえ......そんなの命がいくつあっても足りねえよ」
このときの俺は知らなかった。
あいつがこの街でどんなことをしでかすのかを。
そして、まさか、俺自身があいつにこき使われる生活が待っているなんて。
【作者からお願い】
もし少しでも、
「面白い」
「続きが読みたい」
と思っていただけましたら、
下にある☆をタップして
★★★★★にしていただけると嬉しいです
応援、感想お待ちしております




