第20話 「ただ慈悲を与えるために」
夢月の鉱魔人へと変化した俺は食事の代わりに魔力を摂取することで空腹を補うことが出来るようになった。
それにより、マジックタンクを持っている俺は食い溜めのようなことが可能になった。一応、空気中の魔力を吸収することは可能だが多くの魔力を含む肉や水などを直接、腹に入れた方が効率が良い。
そのおかげで、食事という時間を無視した鍛え方が出来るようになったことで睡眠以外の時間を全て自己研鑽に投資した。
最初に向き合ったのは大鎌術だった。俺の頼りになる相棒であり、最大の攻撃力に繋がる神導武器。試練の影響で大鎌自体が強化されることは無いが、技術を磨くことはできる。
「試練の大鎌はほぼ一撃で壊れる得物。その特性を意識した特訓が必要だな」
これまではアンバーバードの目を使って止めることで後隙を消していた。だが、今の状態で使えるか未知数だし、そもそも停止能力が効かないやつもいるはずだ。
技術を伸ばす方向性は一撃必殺を目指すか打撃を混ぜるか......
「ここは打撃を混ぜた大鎌術を目指そう。魔力操作がⅩになったときのように大鎌術も進化する可能性がある。それを見越してやっていこうか」
洞窟の外に出て、試練の大鎌を出現させる。今までと同じように袈裟刈り、首刈り、地滑り、刃穿ちと順々にアーツを発動させて組み込める動きを考える。
どのアーツを使ったとしても鉱魔獣に攻撃すれば壊れる。なら、後隙を作る打撃が必要か。
右手に試練の大鎌を持ち、左手で拳を握る。常に肉体強化が施されている鉱魔人の身体があれば重心を崩さずに相手を殴れる。
俺はわざと大鎌を近くの木に振り下ろして壊し、左手で近くの岩を殴りつける。少し遠くにあって届かないと思ったが、アメジストスライムの関節が発動して緑に輝いたあと腕が伸び、岩を砕く。
「なるほど、ちゃんと吸収した力は残ってるんだな。結構無理な動きもスライムの柔軟性があればいけると」
これは良い発見だ。まだまだ試せていない鉱魔獣の力もあるし、まだまだ伸びる可能性が見えてきた。
「後は鍛え上げるのみ」
◇◆◇◆
それから俺は8ヶ月間、己の身体を理解し研鑽を積む日々を送っていた。
これまで気づく余裕の無かった弱点や案を見つけさせてくれる。
スキルひとつでも使い方を変えるだけで着実に理想の姿へと近づく。
夢魔法と月光魔法は相手を惑わし、幻覚を魅せることに特化した魔法だということもわかった。経験をすれば新しい発見を見つけ、また取り掛かる。
そんな気づきと反省を繰り返した8ヶ月も今日で終わる。
最後に俺は自分に課した最後の課題を達成したことで、無意識に力んでいた身体から力を抜き息を吐いた。
「長い8ヶ月だった......最高の慈悲を与えられる。――そう確信出来るところまで来た」
身体に付いた汚れをリフレッシュで消してからステータスを確認する。
名前:ゼノヴェル
年齢:12歳
種族:夢月の鉱魔人
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【神導武器】
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【特殊】試練の大鎌
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【スキル】
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【通常】農作業Ⅰ【通常】毒耐性Ⅹ【通常】痛覚耐性Ⅹ【通常】気絶耐性Ⅹ
【種族・特殊】混沌魔力操作
【得意・特殊】外法の大鎌術Ⅲ
アーツ〈総合大鎌術・魔光斬・メメントモリ・トラディメントサイス・ソウルブレイク・マルスピリオド〉
【特殊】マジックタンク【特殊】無知の血【特殊】魔力の解放【特殊】即時回復
【特殊】魔力創造〈鉱魔力・死魔力(鉱魔力+光+夢+月光)〉
【固有】殺した貴方は夢を魅る
【外器】狂魂の魔鉱鎧+
【不明】鉱魔獣発熱器官操作 鉱魔獣吸魂
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【魔法】
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【通常】水魔法Ⅴ
魔法〈ウォーターバレット・雨雲・夜の濃霧・ウォーターサイス〉
【通常】土魔法Ⅴ
魔法〈鉄の破砕盾・土波・石柱錬成〉
【得意・特殊】聖光魔法Ⅲ
魔法〈総合光魔法・神の裁き・ホーリーサイス・断罪の光〉
【種族】夢魔法Ⅶ
魔法〈仮初の夜空・夢は幻想・幻惑夢・白昼夢・ヘルドリーム〉
【特殊】限界魔法
【種族・特殊】月光魔法Ⅴ
魔法〈月からの夜明け・ハーベストルナ・満月堕落・月の下には影がある〉
アーツ〈満月の首落とし〉
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【称号】
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【初期】試練を受ける者
【通常】悪食の気狂い
【特殊】心からの慈悲を与える者
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「この8ヶ月で手に入れた全てをメタルスチームウルフにぶつける。善戦などさせる暇も無く蹂躙してやる」
すでにメタルスチームウルフが生息している場所は把握している。あいつらは群れを形成しており、森の一部を自分たちのテリトリーに変えて20匹以上が一緒に暮らしている。
俺はテリトリー内全てのメタルスチームウルフを狩る。そのために8ヶ月もの時間をかけたんだ。
正直、一匹を相手取るのであれば夢月の鉱魔人になったあの日にでも狩ることは出来た。
だが、シャーマ様へ誓った言葉を叶えるには一匹を倒した程度では物足りない。この森にいるメタルスチームウルフ全てを駆逐し、夢を魅せてあげよう。
「どうか、俺からの慈悲を受け取ってくれ。死という名の最高の慈悲を」
明日、俺の大鎌が鉄の狼を刈り取る。
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