第19話 「溺れることなかれ」
大きな力を手に入れても使いこなせれば意味が無い。12歳までの残りの時間は約8ヶ月だが、それだけの時間があっても全ての力を引き出せるかはわからない。
そう感じてしまうほどの魔力と吸収してきた魂の歓喜の声が俺の中で渦巻いている。
「今の俺に必要なのは、新しい力じゃない。今持っているスキルと魔法を研鑽することだろう」
多いとはいえ、限られた時間で効率を求めるのなら計画性は必要だ。
「ステータス」
名前:ゼノヴェル
年齢:11歳
種族:夢月の鉱魔人
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【神導武器】
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【特殊】試練の大鎌
└ 試練を乗り越えるまで成長しない
└ 壊れてもすぐに再生する
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【スキル】
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【通常】農作業Ⅰ
【得意】大鎌術Ⅶ
アーツ〈袈裟刈り・首刈り・地滑り・刃穿ち・魔光斬・メメントモリ〉
【通常】毒耐性Ⅴ
【種族・特殊】混沌魔力操作
【特殊】マジックタンク
【特殊】無知の血
【特殊】魔力の解放
【特殊】即時回復
【特殊】魔力創造
〈鉱魔力〉
【固有】殺した貴方は夢を魅る《メメント・ソムニス》
【外器】狂魂の魔鉱鎧
└ 鉱魔獣の力を最適化させ、鎧に変質したもの
└ 鉱魔獣を吸収することで更に進化する
【不明】鉱魔獣発熱器官操作 鉱魔獣吸魂
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【魔法】
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【得意】光魔法Ⅶ
魔法〈微かな光球・ライトヒーリング・リフレッシュ・光線解体・フラッシュ・アンチポイズン・光の網〉
【種族】夢魔法Ⅱ
魔法〈仮初の夜空・夢は幻想〉
【特殊】限界魔法
【種族・特殊】月光魔法Ⅱ
魔法〈月からの夜明け・ハーベスト・ルナ〉
アーツ〈満月の首落とし〉
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【称号】
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【初期】試練を受ける者
【通常】悪食の気狂い
【特殊】心からの慈悲を与える者
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「ここから育てていくなら大鎌術に光魔法、夢魔法、月光魔法、それに鉱魔獣発熱器官操作だな。これだけの魔力を手に入れたんだ、試し続ける価値はある」
鉱魔獣発熱器官については夢月の鉱魔人になったことで生成された腹の中心に感じるこれのことだろう。
俺はゴツゴツとした鎧に変質した腹を撫でながら、奥に感じる異物に魔力を込める。
すると、微かな起動音が内臓から聞こえて徐々に熱を発生させて血管を通して全身に流していく。熱をそのままに、洞窟の壁を殴ると轟音とともに亀裂が走り、触れた壁を赤く変化させた。
壁に打ち付けた拳を身体に戻し、感触を確かめるように開閉させてみる。
「これはいいな、威力も上がっているし熱自体も武器になる。ただ、もう少し熱を使って応用出来そうな気もする。例えば、水魔法や土魔法を覚えるとか」
これまで、必要も無かったから少し試して諦めていた魔法の習得。でも、成長した今の俺ならそんなに苦労せずにものにすることが出来るはずだ。幸い、狩った鉱魔獣にも魔法を使う個体が居たし、行き詰ったらそいつらから見て盗ませてもらおう。
「後は耐性スキルとかか?毒耐性があるなら他の耐性スキルもあるはず。いや、俺のシューラ様への信仰が認められれば聖職者関係のスキルも獲得できるかもしれない」
この身体になってからは今まで我慢していた欲求がとめどなく溢れてくる。ただの捕食対象から逸脱出来たという喜びが抑えられない。
「ああ、幸せだ......慈悲を与えるための力が、ようやく俺の手に......」
そうだ、この力があれば試練は問題無い。親父の敵を取った後は洞窟に籠っていれば......
「――何を考えてるんだ、俺は。逃げて試練を突破することに意味があるはずがないだろう」
せっかく力を手に入れたのに、慈悲を与える存在に、ようやく近づいたのに。
親父の敵を取って終わりなんて許されない。俺がすべきことは何だ?シャーマ様へ活躍を見せることだろう?
シャーマ様に認められる程の存在になり、鉱魔獣を滅してシャーマ様の意志に反する畜生どもに救済を与えるのだろう?なのに、なんださっきの思考は!
「全能感を得たことで勘違いしたのか?なんて、愚かな思考をしたんだ......力に溺れかけるとは情けない、情けなさすぎる!」
「シャーマ様に会えないから、こんな弱い考えが出たのか?――いや、そんなことは関係ない。俺が俺自身を甘やかしているんだ」
鉱魔獣が狩れたからなんだ!この力があるだけでシャーマ様の役に立てる訳じゃないだろ!
「忘れるな、諦めた者から死んでいくんだ。この思考はただの思考放棄だろうが!」
自分に言い聞かせるようにズレた思考を整理していく。俺がここまで生きられたのは諦めずに力を求めたからだ。
逃げるという選択肢はあってはいけない。
「それに、俺は今戦ってきた鉱魔獣の魂を背負っているんだ。今は喜んでるこいつらも逃げに走れば見限られて、俺の魂が浸食されるかもしれない」
ここまで魂の存在を感じているんだ。甘えたことを言っていたら主導権を握りに来ることもあり得るかもしれない。
俺が俺として生きるためにも、鉱魔獣の魂を満足させるためにも止まるという愚かな択は捨て置け。
「あくまでメタルスチームウルフは通過点。その先にどうなりたいかを考えろ」
その為に必要なものをこの8ヶ月で身に着けるんだ。
混ざりものになった俺だけが示せる未来を掴め。
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