第12話 「獲物を刈り取る欠けた刃」
初めての狩りを終えた後、結局火は出せなかった俺は光魔法で体毛を全て分解してから光線を出して肉を解体してそのまま食べる。
普通であればそんなことしたら腹を壊すのは目に見えているが、幸いにも悪食の気狂いの称号のおかげで何でも食える身体になった俺は血生臭い肉を黙々と胃に詰めるという作業のような食事を摂っていた。
キノコや果物も口にしたが、途中で吐き気や痙攣が起きた。即時回復と光魔法の併用で無理矢理乗り切り、翌日も同じことを繰り返す。力技にもほどがあるが、他に思いつく方法も無い。
すると、『毒耐性Ⅱ』と『無知の血』という知識外のものを身体に取り込んだときに血が抗体を即座に作るというスキルを手に入れることができた。
人外に近づいている自覚はある。だが、それでもここで生きるにはこうするしかない。
その間も大鎌の素振りや狩りでの使用を続けており、無駄の無い時間を過ごしている。
そんな生活を約2か月ほど過ごして変化したステータスを確認しておこう。
【得意】大鎌術Ⅲ
アーツ〈袈裟刈り・首刈り・地滑り・刃穿ち〉
【種族】魔力操作Ⅴ
アーツ〈肉体強化・外部放出・魔力形成・属性エンチャント・魔力粒子化・属性混合〉
【通常】毒耐性Ⅱ
【特殊】マジックタンク
└ 許容量以上の魔力を溜めることができる
└ 魔力暴走を抑制する
【特殊】無知の血
└ 知識外のものを身体に取り込んだとき、血が抗体を即座に作り出す
【得意】光魔法Ⅳ
魔法〈微かな光球・ライトヒーリング・リフレッシュ・光線解体・フラッシュ〉
【通常】悪食の気狂い
└ 本来、身体では吸収できないものを過剰摂取することで無理矢理抗体を作った
者に送られる証
どんなものでも消化・吸収できるようになる
これが成長したり、新しく増えた力だ。特に、大鎌術の成長が著しく限界を超えた鍛え方をしているわけでもないのに順調にレベルが上がっている。
他の魔法にも挑戦してみたいのだが、自然の中には想像力を搔き立てられるものが少なく苦戦しているのが現状だ。
「でも、ある程度力を得ることは出来た。今日の夜に戦ってみるか、鉱魔獣」
これまでの二ヶ月でこの洞窟の近くにいる鉱魔獣は夜に活動することがわかっている。今の俺であれば負けることはあるかもしれないが、逃げ切ることは出来るはずだ。
いつも通りの食事をして鉱魔獣を狩る夜を待つ。
◇◆◇◆
月の光が辛うじて木の隙間から覗く深夜の森を、大鎌片手に徘徊する。
魔力を発さずに、静かに獲物を探すための隠密での行動をしながら鉱魔獣を探していく。俺はずっと引っかかっていることがあった。
あの時、俺に魔光ランプを渡した村長の息子の表情の理由だ。ただの灯りを渡すだけならそんな顔をする理由がわからない。
だから、俺は考察を立てた。森に捨てられたときに村長の息子から渡された魔光ランプには鉱魔獣が寄ってくる効果があったのではないかと。
この二ヶ月で鉱魔獣があんなにすぐに獲物を見つけて襲ってくるほど生息している様子は無かった。だからこそ、あの夜に襲われた原因があるのかもしれないと考えた。
それを試すためにもまずは普通の状態で近づき、少し離れた場所で魔力を出してみることにする。
その結果次第では、あの夜に俺たちを襲ったのは自然の摂理なのか、それとも人為的な工作なのかがわかるだろう。
「もし、人為的であればいつか必ず死の慈悲を与えてあげよう。シャーマ様も意図的な悪意を持つ畜生を見たくはないだろう」
そう決心をした俺の少し前に大きな影が見えた。近くの木に身を隠して、様子を伺っていると月の光が差し込み、全貌が見えるようになる。
そいつは黒い体毛を持ち、額に黒い鉱石で出来た角を持つ大きな狼だった。
初めての鉱魔獣との戦闘だ、気合を入れろ。
「お前がどんな鉱魔獣なのかも知らないが、俺の糧になってくれ。黒い狼さん」
姿を現さずに肉体強化と光属性エンチャントをかけ始める。すると、ローンホーンウルフは見えないはずの俺に気づいたのかゆっくりとした足取りで俺のいる方向へ近づいてきた。
(これは......考えが当たったかもな。明らかに魔力を感知している)
場所がバレているなら隠れている意味も無い。警戒している間に決めさせて貰おう。
「『フラッシュ』『地滑り』」
木の陰から身体を出した俺は、手で目の前を隠しながら大玉の光球を出して目が眩むほどの発光を生じさせる。
「キャインッ!?」と声を上げたローンホーンウルフに向かって、地面を這うほどに下げた大鎌を急接近した速度そのままに足元へと振るう。
すれ違いざまに大鎌の刃を引っ掛けるように振る地滑りはローンホーンウルフの右足を深く切りつけた。
「ガッアアアア!!??」
見えない視界のなかで鋭い痛みを感じたであろう、ローンホーンウルフは足を折りその場でじたばたと転がっている。
「俺が初めて狩る鉱魔獣に最大の敬意を。月光エンチャント『満月の首落とし』」
月が出ている夜にしか発動できないエンチャントを試練の大鎌へとかけた俺は、空を飛ぶように跳躍してローンホーンウルフの上に位置を取る。
首に向かって上から振り下ろした白銀の光を放つ大鎌を回転しながら一周させてこいつの首を綺麗に刈り取った。
こうして初めての鉱魔獣との戦闘、もとい狩りは俺の完勝で終わりを告げる。
「ふぅ......勝てたな。頭に鉱石の角があるだけの狼っていう印象だけど、俺の村を襲った鉱魔獣は身体全てが硬くて刃も通っていなかった。この狼は鉱魔獣のなかでも弱いやつなんだろうな」
親父が殺されたあの鉱魔獣はメタルスチームウルフって呼ばれていたな......あいつもこの森にいるはず。
もしかしたら、それ以上の力を持つ鉱魔獣がうじゃうじゃ居てもおかしくない。
そいつらを相手することも考えると俯瞰的に見てもまだまだ俺の力は足りていないだろう。
「まあいい、今日は大鎌の刃が通じたことを喜ぼう。こいつは......食えるのか?」
とりあえず持ち帰ろう。食うかどうかはその後に考えればいいか。
鉱魔獣にも通用する力を手に入れた、今はそれでいい。
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