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大鎌が魅せるは貴方の最期~畜生以下の存在には最期に夢を魅せましょう~  作者: いさな


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第10話 「戻ってきた現実での決断」

 光に視界が潰されて前が見えなくても、身体中に感じる火傷のような痛みのおかげで現実に帰ってきたことを把握することが出来た。


 ここからは時間の勝負。死んだはずの俺が夢から覚めて生きているという現象の答えは後から考えればいい。夢の中での考察があっていればまだ俺には生きる可能性が残っているのだから。


「『魔力の解放』『即時回復』『ライトヒーリング』発動......!!」


 魔力の解放を用いて内部魔力、外部魔力全てを消費して即時回復とライトヒーリングを同時発動するための魔力に回す。内側で暴れまわっていた魔力の激流が解放されたことで急速に身体が冷えていく。


 そして、溢れ出た魔力は光の回復へと変換されて外傷だけでなく、ボロボロになっていた俺の臓器も治療されていった。


 熱で皮膚が溶けて空気に晒されていた筋肉も、唾を飲み込むだけで針で刺されたような痛みを感じていた喉も、地面をのたうち回って出来た打撲傷も全て治り綺麗な状態へと修復されていく。


 これは単なる接合ではない。古い蒸気機関を一度解体して新しく組み直すように、身体の内側から作り直されていく感覚だ。


 身体を囲っていた光魔法の魔力が蒸散したときには、全ての傷が癒えて水を飲む前よりも最高潮の状態に変化していた。


「結構な賭けだったけどどうにかなるものだな。魔力を全て使い果たしたから変な気分だけどじきに回復するだろう」


 不調が無いかを確かめるために手を開閉したり、その場で跳ねてみる。食事をしていないから空腹感はあるが、水分を摂れたことで意識はハッキリとしているし節々の痛みも消えていた。


 すぐにでも動き始められるが、今は魔力枯渇状態なのを忘れてはいけない。『魔力の解放』のおかげで動けているだけで普通ならば意識を失っていてもおかしく無いんだから。


「でも、魔力の回復を待つ時間も勿体ないな......」


 回復薬なんて便利なものは無いし、どうしたものかと考えている俺の視界に散々苦しめてくれた川の水が映る。


「ん~流石に無いか?ここは現実だしな......そんな危険なことをするなんて」


 そう口には出してみたが俺の視線は川の水に固定されたまま離れてくれない。少しだけならいけるのでは?だって、今は魔力貯蔵器官が空っぽの状態なんだし外部魔力だとしても受け入れるくらいのスペースはありそうだし......


 誰に聞かれているわけでもないのに心の中でつらつらと言い訳が頭をよぎる。


 この選択をシャーマ様は止めるだろうか。......いや、生きるために水を飲むんだ。


 シャーマ様は見ていてくれている。ならば、生き残るための行動を咎めるはずがない。


「少しだけなら......」


 俺は川の傍で足を折り、両手を杯のようにして水を掬い上げて口へと運ぶ。清涼感を感じる冷たくて美味しい水が喉を通り、胃まで到達したのを感じる。


 それから瞬きふたつほどの時間の後に身体が熱くなる感覚がじわじわと広がっていくが、今の俺には魔力操作という対抗手段があるんだ。内側で暴れようとしている魔力を押さえつけるように操った後に粒子化を用いて体内へと散りばめていく。


 細かい粒子と変換された魔力は素早く身体へ吸収されることで暴走する前に俺の魔力と同化していくのがわかった。


「これは効率が良いな、空っぽだった魔力が急速に回復していく。ただ、自分の魔力を生み出すことを補強しているわけじゃないから不快感があるのが難点だな」


 これで飲み水には困らなくなった。あの無性に水を飲むことに固執していたのは、せっかく見つけた水源を手放したくないという執着があったのかもしれない。


 ただの水にこれだけの魔力が込められていたんだ、他の果物や野生の動物にも魔力が宿っているかもしれない。それを知らずに口にしていたらどっちみち死んでいたかも。


「それに、多分だけど魔力量が増えている......?元からあった俺の魔力に乗っかるように他の魔力が混ざっている気がする」


 多分だけど、普通の人が魔力を増やすには何度も魔法やスキルを使って徐々に鍛えていくものだと思う。だけど、俺の場合は許容量を超える魔力を体内に入れられて全部消費したことで魔力貯蔵器官が大きくなりそこに混ざった魔力が入り込んだことで増えたのだろう。


「つまり、これを繰り返せばどんどん魔力が増えていく可能性もある」


 ここは夢の中ではないが、今の俺には魔力暴走への対処がある。試す価値は十分だ。


「思い出せ、俺は今試練を受けているんだ。試練は普通に過ごしていては到達できない壁に挑戦するものだろう?なら、ここで利益を取らないでどうする」


 俺は先ほどよりも多めの水を掬って口に含む。


 今度は瞬時に身体の内側が燃えるような熱で満たされ、魔力操作では消しきれない外部魔力で浸食されていく。


「『魔力の解放』『即時回復』『ライトヒーリング』」


 現実に戻ってきたときと同じように全ての魔力を放出して光魔法と即時回復へと変換することで元通りになる。大切なのは焦らずに冷静にいること。恐怖に支配された瞬間に俺は死の道を渡ることになるだろう。


「――やっぱり、魔力量が増えている。なら、綱渡りでも渡るべきだな」


 そこから俺は空が夕暮れ時になり、夜になる直前まで同じことを繰り返していった。ミスの許されない極限状態で精神がすり減っていくのを感じながら黙々と魔力の補充と消費に努めていた俺に終わりを告げる祝福の声が聞こえてくる。


『魔力量の上昇と外部魔力の反応を感知。特殊スキル:マジックタンクと称号:悪食の気狂いを獲得しました』


【特殊】マジックタンク

 └ 許容量以上の魔力を溜めることができる

 └ 魔力暴走を抑制する


【通常】悪食の気狂い

 └ 本来、身体では吸収できないものを過剰摂取することで無理矢理抗体を作った    

   者に送られる証

 どんなものでも消化・吸収できるようになる。


「よし、これで終わりだ。明日は食料を探しに行くとしようか。......気狂い呼ばわりは心外だけど」


 森が完全に夜に染まる前に洞窟へと戻ることにした俺は肉体強化をして帰路へ着く。マジックタンクのおかげか溜めた魔力をふんだんに使うことで、想像以上に強化された俺の足は10分もかからずに洞窟へと辿り着いた。

【作者からお願い】


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