第9話 「月に魅せられ夢から覚める」
夢魔法は俺の種族、夢月族の種族特性として手に入れた魔法だとシャーマ様は言っていた。夢を知るならまず種族を知ろう。
夢月族は月が照らしている夜に夢を魅せる種族らしい。なら、まずは月を出してみようか。
「ここは俺の夢の中、そして、洞窟の外には空がある。空があるなら夜も訪れる、そうだよな」
俺は村の見張り台に乗って見た、あの綺麗な満月を思い浮かべながら手を空に掲げる。
「夢魔法『仮初の夜空』」
魔力を手のひらから放出して、夢を書き換えるイメージを晴天の空に伝えていく。青一色の空の端から徐々に黒色の闇が浸食していき真っ暗な空に塗り替える。
次に夜空を作り出すために光魔力を追加で放出していくことで漆黒の空に青白く輝く満月と小さな煌めきを放つ星々が現れた。
俺が作った偽物の満月だとしても、その光は身体を照らし心を落ち着けてくれる。悩みや不安、失敗や後悔を全て洗い流して純粋な想いだけが残っていく。
俺の中にあるのはシャーマ様に会いたいという想いだけ。
太陽の光で渇き、熱という存在自体に忌避感があった今の俺にはとても心地よい空間へと変わっていった。
「やっぱり俺は月が好きだ。種族を知るよりも前から思っていたけど、今なら何でも出来るかもって思わせてくれる」
太陽という強すぎる光は道を狭めてしまうが、優しい月の下では影は果てしなく伸びていく。
「こんな月の夢を皆にも魅せてあげたいなぁ......」
そうだよな、この感覚をひとりで独占するのは申し訳ない。性根の腐っている輩も、偽善者も、鉱魔獣にも。この光景を魅せてあげたい。だから殺してあげよう。夢を魅せるために。
「この想いは慈悲の心だ。月を見れない悲しき者に俺から最大の慈悲を与えてあげよう」
この慈悲の心はシャーマ様にも届くはず。だって、この世の闇はシャーマ様のものであり、月はシャーマ様を表す象徴なのだから。
『夢魔法の理解が深まりました。想定外の発想と想いの強さから夢魔法Ⅱと月光魔法を獲得しました。称号:心からの慈悲を与える者を獲得しました』
「ステータス」
名前:ゼノヴェル
年齢:11歳
種族:夢月族〈月が照らす夜に夢を魅せる種族〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【神導武器】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【特殊】試練の大鎌
└ 試練を乗り越えるまで成長しない
└ 壊れてもすぐに再生する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【スキル】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【通常】農作業Ⅰ
【種族】魔力操作Ⅳ
アーツ〈肉体強化・外部放出・魔力形成・属性エンチャント・魔力粒子化〉
【特殊】魔力の解放
└ 体内の魔力を全て解放することで限界を超えた力を発揮する
└ 魔力が無くなっても動けるようになる
【特殊】即時回復
└ 魔力がある限り即時に外傷を回復する
└ 光魔法の回復と併用すれば致命的な傷も回復できる
【固有】殺した貴方は夢を魅る《メメント・ソムニス》
└ 殺した対象に夢を見せ、夢のなかに入ることができる
└ 夢のなかで自由になる
└ 〈未解除〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【魔法】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【得意】光魔法Ⅳ
魔法〈微かな光球・ライトヒーリング〉
【種族】夢魔法Ⅱ
魔法〈仮初の夜空・夢は幻想〉
【特殊】限界魔法
└ 生命力を代償に実力以上の魔法を放つことができる
【種族・特殊】月光魔法Ⅰ
└ 月が見えている夜に発動することができる
魔法〈月からの夜明け〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【称号】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【初期】試練を受ける者
└ 暗影の神シャーマから試練を受けた者に与えられる称号
試練終了時まで神導武器成長不可
【特殊】心からの慈悲を与える者
└ 慈悲を与えたいと心の底から願った者に与えられる証
精神力上昇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「月光魔法......これが最後のピースになるのか。試練の大鎌『機動』」
俺の声を合図に黒い光が大鎌を右手に形成していく。右手を大きく横なぎすると黒い光に包まれていた大鎌の衣が剥がれ、所々錆びてボロボロの持ち手と欠けて何も切れそうにない刃を持つ姿が現れた。
ただ、前に見た時にはなかった濃い紫の破れた布が持ち手から巻かれているという変化が起こっていた。
「何も裂けない大鎌にも出来ることはある、そうですよねシャーマ様」
俺は光、夢、そして月光の属性魔力を操作して試練の大鎌へとエンチャントしていく。白と紫、最後に白銀の魔力が混ざり合い、ラベンダーのような色の刃が付与される。
脱力して刃を下に向けながら、大鎌の重心が前に偏っていることを利用して、体幹の回転と遠心力を使って空に見える月へ振り抜いた。
「月光魔法『月からの夜明け』」
優しい紫色の斬撃が夜空に向かって放たれる。光の刃は夜空の闇へと飲み込まれて見えなくなった。
試練の大鎌は魔力に耐えられず壊れて光の塵となり、右手から消え去った。
木の葉が揺れる音だけが聞こえる静寂の空間で光る月に手を向けて、横にずらす。
すると、一筋の線が現れてどんどん大きく裂けていく。
「魅せられた夢は夜明けを合図に目覚める」
空の裂け目から眩い太陽の光が溢れて俺の視界を塗り潰していった。
【作者からお願い】
もし少しでも、
「面白い」
「続きが読みたい」
と思っていただけましたら、
下にある☆をタップして
★★★★★にしていただけると嬉しいです
応援、感想お待ちしております




