83話 囚われの王の元へ
陽動は成功したが、混乱は長くは続かないだろう。
ここからは時間との勝負だ。
メイリークの案内で城内を突き進む。
衛兵の巡回時刻はしっかりと覚えていて、城内の見取り図も正確に頭に叩き込まれている。
さすがだ。
おかげで、誰にも見つかることなく、王が囚われているとされる塔まで辿り着いた。
ただ……
「ふむ……さすがに、ここの警備は厳しいのう」
入り口にたくさんの兵士。
城門で騒動が起きたとしても、そちらに駆けつけて警備を薄くするようなことはない。
というか……
騒動のせいで警戒心を強くしているらしく、ピリピリとした雰囲気だ。
ここに限っては、陽動は逆効果だっただろう。
「……強行突破しかないのう」
メイリークが一歩出た。
「でしたら、ここは私に……」
「いや、儂に任せよ。こういうのは得意じゃし……ちと、体を動かしておかぬとな」
前傾姿勢で。
床を蹴り、地を這うようにして駆ける。
「なっ……!?」
「こいつ……!」
「敵……」
最後まで言わせない。
一人目の腹部に峰打ち。
二人目を蹴り飛ばして。
三人目の剣を弾いて、柄頭でこめかみを打ち、振り向きざま四人目の足を払い、頭から叩きつけて昏倒させた。。
五人目の槍を半身でかわして、石壁へ叩きつける。
六人目の盾を蹴り割るように弾いて、体を回転させて連続で蹴りを出して、そのまま膝を叩く。
そんな感じで……
十秒ほどで、全ての兵士は倒れていた。
「は、速い……なんていう神業……」
「ふふん♪ そして、可愛いのじゃ」
「本当に、すさまじいですね……」
ちょっとボケてみたのだが、不発だった。
「もしや……先日の模擬戦、本気を出しておられなかったのですか?」
「さてのう」
儂は肩をすくめた。
「まあ、こやつらも命は奪っておらぬ。命令されておるだけじゃからな」
「それは……」
「それに、お主へ同胞を攻撃させたくなかったのでな。ついついでしゃばってしもうた、許せ」
一瞬、彼女の目が揺れた。
次いで、深く頭を下げる。
「ありがとうございます」
「うむ。とはいえ、まだ終わったわけではないし、ここからが本番じゃな」
「はい」
「行くぞ」
塔の中へ、儂らは足を踏み入れた。




