表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/83

80話 最強と幼馴染

 開戦まで、おそらくは五日ほど。

 時間は、あるようでまったくない。


 メイリークの父が元々進めていた救出計画はある。

 そこへ、儂らの戦力を組み込めば成功率は上がるだろう。


 ただ、だからといって雑に動いていい作戦ではなかった。


 王城の内外の警備配置、監禁されている王の位置、王子側へついている騎士達の動向、こちらへ味方する者の合流点。

 そして、突入路に撤退路に万が一の陽動に……


 やることはたくさんで、最低でも準備に二日はいる。

 故に、その間はメイリークの家に滞在することになった。


 もちろん、のんびりとくつろぐわけではなくて、何度も会議を重ねて作戦の精度を上げて……

 鍛錬も積み、少しでも作戦の成功率を上げていく。


 そんな時間を過ごしていた、とある頃。


「疲れたのう……」


 会議を終えた後、儂は一人、廊下を歩いていた。


 頭を使うのは嫌いじゃないけど……いや、やっぱり好きじゃない。

 嘘ついた。

 やっぱり体を動かす方が性に合っている。


 この屋敷には訓練場があり、自由に使わせてもらっている。

 少し体を動かすか。


 そう決めて訓練場に移動すると、メイリークの姿があった。


 一心不乱に槍を振っている。

 いや、一心不乱という表現では足りないかもしれない。

 鬼気迫るものすらあった。


 ……それだけ必死なのだろう。


「メイリーク」

「……」

「メイリーク?」

「……」

「メイリークよ」

「……えっ!?」


 近づいて声をかけると、そこでようやく気づいたらしい。

 槍を振る手を止めて、慌てて振り返る。


「これは失礼しました。訓練に夢中になっておりまして」

「不安か?」

「それは……」


 言葉を濁されてしまう。

 まあ、当然の反応だ。


「儂も不安じゃ」

「え?」


 目を瞬かれた。


 なぜ意外そうにする?

 儂とて、なんでもかんでも平気というわけではないぞ。


「なので……気分転換に模擬戦をせぬか?」


 木剣を手に取り、その切先をメイリークに向けた。


「えっと……はい、わかりました」


 メイリークは戸惑いつつも、頷いた。


 そして、対峙する。


 メイリークは槍。

 儂は剣。


 普通に考えるなら、槍を持つメイリークの方が有利だ。

 彼女のほどの実力者なら、剣士を近づかせることはないだろう。


「では、いきます」

「うむ、来るがよい」


 次の瞬間、メイリークの槍が唸った。


 速い。


 高速の刺突。

 ただ、それだけではない。

 踏み込みと引きの切り替えが鮮やかで、槍という武器の間合いをよく理解している。

 届くと思った時には届かず、届かないと思った瞬間に穂先が喉元へ来る。


「ほう」


 やはり強いな。

 技術だけではなくて、練度も高い。

 相当な場数を踏んでいるようだ。


 儂は二、三歩下がって受けた。

 受けながら相手のリズムを見る。


 メイリークはさらに圧をかけてくる。

 槍を振るうというよりも、間合いそのものを支配して相手を追い詰める戦い方だ。


 間違いなく強者。

 並の剣士では太刀打ちできないだろう。


 ただ……


「そろそろ儂の番じゃな」

「え?」


 儂は一気に踏み込んだ。


 メイリークが槍を振るよりも早く、その懐に入る。

 槍は間合いを取ってこそ強いが、詰められた時の処理が甘ければ終わる。


 もちろん、メイリークもそれは理解していた。

 柄で打ち、足を払い、体ごと捌こうとする。

 だが、その全てを上回る速度で儂は剣を走らせた。


 横から槍を打って弾いて。

 そのまま回転しつつ横に移動して。

 そのまま首に木剣を突きつける。


「……負けました」


 メイリークは両手をあげた。


「さすがです……それなりに自信はあったのですが、こうも歯が立たないなんて」

「なにを言うか。お主も強いではないか」

「ですが、アリエル様の方がさらに圧倒的です」

「なに、落ち込むことはない。儂は最強なだけじゃ」

「……」


 一瞬の沈黙。

 それから、メイリークがくすりと笑う。


「それを自分で言いますか」

「事実じゃからのう」

「本当に……すごい方ですね、アリエル様は」


 笑顔も綺麗だ。

 少しは気が紛れただろうか?


「で、スッキリしたか?」

「え?」

「悩み、迷っている時は動くのが一番じゃ」

「それは……」

「体を動かして、少しは気も晴れたのではないか?」

「……見抜いていたのですね」

「うむ」


 というか、見抜かれないと思っていたのだろうか?

 かなりわかりやすかった。

 たぶん、リルでも気づくと思う。


 屋敷に来てからのメイリークは、少し落ち着かない様子で……

 準備をしている間、どこか上の空だった。


 なにか抱えているのだろう。


「よかったら、話してみないか?」

「それは……」

「まあ、悩みを解決する、と断言なんてできぬがな。それでも、話すだけでも気が楽になることはあるぞ?」

「……申しわけありません、気をつかっていただいて」

「今は仲間じゃからな、当たり前のことじゃ」

「……ありがとうございます」


 メイリークは微笑み……

 それから、少しだけ視線を落として言う。


「王子は……シグルド様は、幼馴染なのです」


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

執筆のモチベーションになるため、ブックマークや☆評価で応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
シグルド…なんかめっちゃフラグ立ってるんですけど(^^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ