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119話 レオンハルト

「できれば、という思いはあるが……」


 儂は、改めて剣を構える。


「ここでそなたを討てば、勝ちが決定的になるのは儂らも同じ」


 息を整える。


「終わらせてもらうぞ」

「そうだな、終わりにしよう」

「いざ……」

「尋常に……」


「「勝負!!」」


 今度は、儂が最初に前に出た。


 全身に魔力を巡らせる。

 身体能力を強化。

 さきほどよりも、さらに速さを一段上げた。


 踏み込んで斬る。

 受けられても、さらに次を重ねていく。

 横へ回り、上へ飛び、足を狙い、肩を叩き、顔をかすめて……間断なく斬撃を浴びせていく。


「ちっ」


 レオンハルトは煩わしそうに舌打ちしつつ、反撃を繰り出してきた。


 儂のような速度はない。

 ただ、力に優れていた。


 ブゥンッ! と風を巻き込むような音が響く。

 直撃したら、骨ごと両断されるだろう。


 防ぐことは可能だが……

 うまくやらないと、剣が破壊されるかもしれない。

 そうでなくても、あまりの力に手が痺れることは避けられなさそうだ。

 この体、小さくてすばしっこいものの、さすがに大人と比べると腕力は低い。


 跳躍して回避。

 あるいは、体の芯をずらして回避。

 ひたすらに回避を重ねていく。


「ちょこまかと!」

「当たらぬよ」


 軽い挑発をしてみるが、剣筋に乱れはない。

 さすがに、このクラスの相手に挑発は意味がないか。


 真っ向勝負といこう。


「はぁあああああっ!」


 レオンハルトが気合を迸らせつつ、叩きつけるように剣を振ってきた。


 その一撃だけでは終わらない。

 落ちた剣が跳ね上がり。

 横に薙いで。

 まっすぐに突いてくる。


 速さはないが、力は十分。

 そして、流れるように綺麗な連撃だ。


 ただ……

 それ故に読みやすい。


 儂は全てを回避して、そこから反撃に出る。

 レオンハルトよりも速く、ひたすらに速く。

 剣を振り続ける。


 レオンハルトは、かろうじて防いでいた。

 防ぐけど、反撃の手数が減る。


 儂が、さらに加速したのもあるが……

 ただ、爆発のダメージもあるのだろう。

 無傷なら、もっと長く保ったはず。


「くっ……!」


 ついに、レオンハルトの姿勢がぶれた。


 儂は、さらに前に出て剣を振るうが……


「……っ……」


 レオンハルトの目がギラリと光る。

 そして、今までにない速度で大剣を振るう。


 姿勢がぶれたのは、わざとなのだろう。

 あえて隙を見せることで、こちらの攻撃を誘う。

 釣れたところで、手痛いカウンターを叩き込む。


 そんな考えなのだろうが……


「そうくると思っていたのじゃ」

「なっ……!?」


 レオンハルトほどの将が、こんなにわかりやすい隙を見せるだろうか?

 怪我はしていても、まだ体力はあるはず。

 こうも簡単に崩れるはずがない。


 そう、儂は『信じて』いたから……

 ヤツの罠に引っかかることはない。


 逆に、ヤツの罠を利用することができた。


 レオンハルトのカウンターを、最後は剣で捌いた。

 重い。

 剣が弾かれてしまいそうだけど、耐える。


 そして、一気に踏み込んで……


 ザンッ!


 儂の一撃が、レオンハルトの胸元を深く裂く。

 鮮血が舞った。


 レオンハルトの体が、がくりと崩れた。

 膝をついて、それでもまだ倒れない。

 大した執念だ。


「ふぅ……」


 儂は息を吐いた。

 なかなか手ごわい相手だった。


 なんだかんだ、地力は儂の方が上。

 でも、それだけでは勝てなかっただろう。

 これまでに詰んできた経験のおかげだ。


「負けたか……」


 レオンハルトが、静かに呟いた。


 儂は剣を向ける。

「トドメが必要か?」

「ああ……」


 彼は苦く笑う。


「すまないな……頼む」

「うむ、わかった」

「これが死ぬ、ということか……なかなかにきついな、これは」

「うむ、わかるぞ」

「……まるで、一度、味わったかのような物言いだな?」

「その通りじゃ」


 素直に頷いた。


 はは、とレオンハルトが笑う。

 冗談と思われたのだろう。


「……ああ、そうだ。最後に一つ、いいか?」

「なんじゃ?」

「良い戦いだった」

「……」


 ついつい、ぽかーんとしてしまう。


 それから、儂も小さく笑う。


「うむ、そうじゃな……そなたこそ、素晴らしい戦士であったぞ」


 そして……

 儂は、静かに剣を振り下ろした。


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― 新着の感想 ―
 ……こういう堂々とした”良い戦い”を見せる奴には死んでほしくないんだけどねぇ。本音で言えば。  でも、これが”戦場のならい”ってものなのだろうねぇ(- -;a  まぁ、生かしておいてもアリエルは…
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