101話 これこそが平和
盗賊や魔物の討伐。
時に、土砂崩れが起きた道の整備。
水天騎士団として、そのような活動を続けていて……
でも、最近では、それはいつものこと、と感じるようになっていて……
変わらない日々。
ただ、ちょっとした変化が起きた。
「来たぞ、リーナよ!」
「いらっしゃい、アリエル!」
いつものようにリーナのところへ遊びに行く。
最近の日課になりつつあった。
もちろん、騎士団の任務を優先している。
遊びに行くのは休日だけ。
遊んでいる時に緊急招集があれば即座に応じるし、いつでも連絡はとれるようにしている。
なので、儂がリーナと遊ぶことになんの問題もない。
完璧。
ついでに言うと、城下町の視察も兼ねている。
上から見るだけではなくて、時に民と同じ視線で。
それは為政者にとって必要なことだろう。
言い訳も完璧。
よし。
というわけで……
「ねえねえ、アリエル。これ、見て? この前、私が作ったんだよ」
「おぉ!? 見事な刺繍じゃな……本当に綺麗なのじゃ」
「えへへ、でしょー」
「プロになれるのでは?」
「うーん……趣味を仕事にするのは大変そう」
「なんかこなれたことを言うのう!?」
いつものように友達と過ごす時間を満喫する。
……ふむ。
思えば、前世を含めて、友達ができるのは初めてだ。
前世で戦友はいたものの、それはあくまでも背中を預けられる相手。
心を預けるのとは少し違い……
なんだか、心がぽかぽかした。
ふと、階下からリーナの母親の声がした。
「二人共、お菓子があるわよー!」
「行くー!」
リーナが元気よく返事をする。
儂も続いて宿の食堂へ下りると、卓の上には小さな皿がいくつか並んでいた。
そして、その中央に鎮座するのは……
「ぷりん、じゃと……?」
「お母さん特製プリンだよ! 食べて食べて!」
「おぉ……!?」
溶けるように柔らかい。
でも、しっかりと弾力もあって、卵と乳のまろやかさがふわりと広がる。
上にかかった蜜は甘さ重視で、これもたまらない」
「ん~~~♪」
「あはは、アリエル、変な顔ー」
「仕方ないのじゃ。はむ。こんなに美味しいと。はむ。止まらないのじゃ。はむ!!!」
「私も食べるー!」
リーナも一緒に食べる。
こうして並んで同じものを食べていると、なんとも穏やかな気分になるものだ。
「はー……」
儂は自然と息を吐いた。
「こういう日常は、よいのう」
戦いも陰謀もない。
誰も傷つかない。
そして、甘いものがあって友がいて、笑い声がある。
平和というのは、こういうものを言うのだろう。
できれば、これがずっと続いて……
「大変ですっ、アリエル様!」
入口から、サリーが飛び込んできた。
珍しく慌てていて、髪も少し乱れていた。
ここまで取り乱すのは、かなり珍しい。
「騒がしいのう……ここは他所様の家でもあるのじゃぞ?」
「も、申しわけありません……しかし、それどころではなくて!」
「ふむ?」
任務だろうか?
しかし、慌てっぷりが気になる。
……フィーゼルマインの未来を左右するような事件が起きた?
「いったい何事じゃ?」
「その……」
サリーが儂の耳元に口を寄せていた。
リーナもその両親も、儂の正体はすでに知るところ。
それでも内緒話をするということは、機密性の高い案件ということだろう。
嫌な予感。
まさか、本当に大きな事件が……?
「どうしたのじゃ?」
「それが……」
「うむ」
「……第一王女様と第二王女様が帰国されるとのことです」
「ん?」
第一王女と第二王女?
儂は、第三王女。
つまり、それは……
「姉様達が!?」
ついつい、儂は大声をあげて、がたーんを椅子を蹴りつけるようにしつつ立ち上がってしまうのだった。
ごめんなさい。
ここから三部スタートです。
三部をひとまずの区切りと考えていまして……
色々な部分が収束していく物語になるかな、なんて考えています。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
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