兎ダンジョン
「まいどー!なんでも屋です」
インターホンを鳴らして、そう告げる。
「リッカちゃん!待ってたのよ。入ってきて」
インターホン越しに、ウメカばあちゃんの声が聞こえる。
「お邪魔しまーす」
ウメカばあちゃんは、うちのお得意様だ。
コウゾウじいちゃんと2人分のダンジョンの依頼が月に一度は来ていた。
3ヶ月ほど前に、コウゾウじいちゃんが亡くなって寂しいのか、月に二度ほど依頼が来るようになった。
ウメカばあちゃん達には、息子が2人いて孫も5人いるみたいなんだけど、全然会いに来ないらしい。
なんでも屋の存在を知る前は、息子さんにダンジョンに潜ってくれないかとお願いしてたこともあったらしいんだけど、毎月とかは無理だと拒否されたらしい。
困ってたところにコウゾウじいちゃんの友達からウチのなんでも屋のことを聞いて、依頼してくれる様になったんだよな。
俺としては、仕事だし毎月来るのは問題ないけど、2人には嬉しい事だったみたいなんだよな。
で、何回か来てるうちに、孫みたいに可愛がられている。
なんで本当の孫達は来てやらないのかね?
ウメカばあちゃんもコウゾウじいちゃんもすげぇいい祖父母って感じなんだぜ?
"ザ・じいちゃんばあちゃん"って感じ。
「いらっしゃい、リッカちゃん」
なぜかウメカばあちゃんは、俺をちゃん付けで呼ぶ。
「ウメカばあちゃん、今日は何の魔物だ?」
「リッカちゃん、あのね?ほーんらびっと?っていうの?があらあとで点滅してるのよ」
アラートにホーンラビットが表示されてんのね?
ウメカばあちゃんのダンジョンは、兎ダンジョンだ。
「ってことは、2階層だね」
「そうなのかい?おばあちゃんにはよくわからないけど」
そう、ウメカばあちゃんのダンジョンは3年くらい前に発生したんだよ。
コウゾウじいちゃんは、20年くらい前からダンジョンがあったから、ダンジョンがどんなものかは知っていたけど、ウメカばあちゃんは今更自分にダンジョンが発生するとは思ってなかったみたい。
確かに80歳とかになって、いきなりダンジョンが発生しても自分じゃ何も出来ないってなるよな。
「まぁ、その辺は俺がわかってるから大丈夫だよ。いつもみたいにこのタイマーが鳴ったら、扉開けてね?」
「わかってるよ。終わったらご飯たべていってちょうだいよ?用意してあるんだよ」
ウメカばあちゃんは、いつもお昼ご飯を用意してくれている。
で、一緒にご飯食べてから帰るまでが依頼だと俺は思ってるよ。
まっ、ウメカばあちゃんのご飯はめっちゃ美味いんだけどな。
俺も楽しみにしてんだよ。
「わかった!じゃあ、行ってくるね。ウメカばあちゃん、扉開けてくれる?」
タイマーを作動させて、ウメカばあちゃんに渡すと、扉を開けてくれる。
「気をつけてね」
「はーい」
俺は手を振って、ウメカばあちゃんの兎ダンジョンに潜る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
兎ダンジョンに入って、そのまま【転移】で2階層に飛ぶ。
ウメカばあちゃんのダンジョンのラビットは、全体的に大人しい。
そして、真っ白な子が多い。
あー、これはずいぶんと増えたな?
半月前に来た時は、3階層のファングラビットだったからな。
俺が【転移】で飛ぶ弊害かもな?
アラートの出てる魔物しか倒さないからな。
そこはまぁ、仕事だからな。
どの階層のラビットも、魔石をドロップするのは当たり前。
あとは毛皮だったり、角だったり牙だったりする。
だけど稀にラビットフットや肉をドロップすることもある。
なんでも屋の料金体系は、1時間いくらに、移動費がプラスされる。
それからダンジョンの難易度によって、料金設定が変わる。
だから、低難易度のウメカばあちゃんのダンジョンだと、ラビットフットなんかがドロップすれば、ウメカばあちゃんの持ち出しがチャラになることもある。
あとは、真っ白な毛皮は、買取価格が高い。
そして、俺は【豪運】を持っているからな。
レアなドロップが落ちやすい。
だからウメカばあちゃんは、討伐依頼でも素材でチャラになったり、逆に素材代金が手元に入る。
それで"なんでも屋"は成り立つのかって?
成り立つんだよ。
ラビットフットや毛皮なんかは、買取よりもさらに上乗せで販売しているからな。
それでも品薄状態だ。
しかも俺は戦闘すれば、レベルアップまでは出来なくても、経験値は稼げるからな。
そして、美味しいご飯が待っている。
今日もホーンラビットを50体ほど倒したところで、タイマーが鳴った。
【転移】で1階層に戻り、ウメカばあちゃんが開けてくれた扉から外に出る。
うん、大量大量!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただいま」
「リッカちゃん、おかえり。ケガはしてない?」
いつも怪我の心配をしてくれる。
「大丈夫だよ!今日も大量だったよ」
なんとラビットフットが3つもドロップしたんだ。
「いつもありがとね」
「ウメカばあちゃん、ラビットフットが3つもドロップしたんだ!どうする?」
ウメカばあちゃんは、らびっとふっと?と首を傾げる。
あれ?
前に説明したことなかったかな?
「ラビットフットってね、幸運のお守りって言われてるんだよ。ウメカばあちゃんも一個は売らないで自分で持っておく?」
「いいよいいよ。幸運なんて若い人がもってるのがいいよ。おばあちゃんはいっぱいいい事はあったからもう大丈夫だよ」
そういうもんなの?
これからでも、いいことあったらいいんじゃないの?
そう言ってみたら、ならリッカちゃんがもってなさいよって言われちゃったよ。
「えっ?俺は大丈夫だよ。ウメカばあちゃんの美味いご飯食べせてもらえるだけでラッキーだもん」
ウメカばあちゃんは、泣きそうな顔でクシャッと笑った。
俺は、美味しいご飯をご馳走になって、ウメカばあちゃんと少し話をして、素材の査定額が決まったらいつもの様に振り込む事を伝えて家に帰宅した。
ウメカばあちゃん、寂しそうでいつも胸が痛くなる。
きっとまた半月後に会えると思うから。
しかし本当にウメカばあちゃんのご飯は美味いんだよなぁ。
お読みいただきありがとうございます!
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トーヤのテンションがあがります(笑)
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