大聖堂地下護衛任務 東方剣士、縮む
「東方さん、上! 上!」
「む?」
浮かれていた俺は、エルンストに呼び掛けられて、何気なく見上げた。
視界に入ったのは、天使のような翼……を生やした亀。
「しま――――」
自動迎撃が発動し、空飛ぶ亀に斬りかかる。
ヒュッ
ガキィンッ!
が、やっぱり甲羅に届く前に見えない壁に弾き返される。
テュンテュンテュン
うっ、うおおおおおおお!
こんな典型的なコントみたいなやられ方をするとは!
油断したぜ。
縮んじゃったよ!
だが、ショックを受けてる場合じゃない!
敵の数は?
空飛ぶ亀が三匹。二匹は俺の前、そして俺に当たってきたもう一匹は。
アマーリオとルイニの方に向かってるヤバい!
「食え! スターヴドラゴン!」
だめか。3Dだからか、空飛ぶ敵を狙って食べるのは、難易度が高過ぎた!
まずい、本格的に間に合わない!
ピョーーン
……カエルのカッコをしたルイニは、大きく跳び上がると、軽々と空飛ぶ亀を跳び越えて、避けていた。
アマーリオの方は、ってあれ? アマーリオどこだ?
あっ。
めちゃめちゃ不自然に、頭に葉っぱ乗せた地蔵がある。
地蔵に化けたんかい。
空飛ぶ亀は、地蔵を通り過ぎて、そのまま飛んで行った。
前方の二匹は。
ハンケツに命令されたガウが火の玉をとばして倒してましたとさ。
えっ喰らったの俺だけかよ。
しかも役に立ってないし。
鬱っていると、エルンストがニコニコしながら近寄ってきた。
「大丈夫ですか東方さん! でも、これでお揃いですね!」
ムダにいい笑顔じゃないかこら。
嬉しそうだなこら。
「面目次第もない」
「いえいえ! 東方さんが、戦い方を教えてくれたおかげですよ! ねえ! アマーリオさん!」
「ホッホ~~ゥ!」
いつ地蔵から戻ったこら。
やっぱハイテンション腹立つわこら。
とりあえず、危機は去ったようだ。
周囲に敵の気配は、なくなった。
もちろん、上空にもだ。
自動迎撃、発動はしたけど剣は効かないし、邪魔なだけだな。切っとこう。
次に攻撃を受けたら、また入口からやり直しになってしまうだろう。
俺たちは、慎重に慎重を重ねて進んでいった。
ブロックも、忘れずに全部叩いていく。
叩いたブロックは揺れるだけだ。壊れなくなってしまった。
くっそ、縮んだからなぁ。
まぁいいさ。中身は出てくるし。
いいんだよ。
極寒の視線を浴びてるけどさ。
いいんだよ。
そしてまた、きのこが生えてきた。
今度は、白地に緑で大き目の斑点がついていた。
「エルンスト殿、出たな」
「えっどうしてまた僕を呼ぶんですか」
「決まっている。食すのだ」
「嫌ですよ!」
即答だな。
そりゃ、道端で拾い食いするのなんて、ちょっぴり太めの行商人か三度笠被った風来坊くらいだもんな。
「今度のきのこも、すっごく毒々しいじゃないですか。こんな所に生えてるきのこを食べるとか、正気の沙汰じゃありませんよ!」
「今度こそ、治るかも知れ、治るぞ」
「今ちょっと言い直しましたよね!? 確定じゃないんじゃないですか! 東方さんだって縮んでるんですから、どうぞお先に元に戻ってください!」
うっるさいなこのぉ。
もっと不思議なアイテムは、未鑑定だと敵に投げつけるか、自ら食すしかないんだ!
「少々、よろしいでしょうか」
なんだハンケツ。ここでまさかの割り込みとは。
「食べたいのか?」
「違います」
ですよね~。
「失敗すれば、また入口に戻ってしまうのではありませんか? 私としては、先に進んでしまいたいのですが」
おっとそうきたか。
確かにハンケツの立場からすれば、自分は縮んでいないのだから、わざわざ失敗する可能性のあるきのこに挑戦することもない、と。
そう考えてもおかしくない。
だが。
「巡礼殿。本当にその選択で良いのか」
「どういう意味でしょう?」
極寒の視線に晒される。どっこい負けるもんか!
「救いを求めている我々を見捨てて先に進むことが、貴殿の進むべき道なのであろうか。それで大手を振って地上を歩けるのか」
「ちっそれもそうですね」
説得できた。
舌打ちしてたけどキコエナイキコエナイ。
「この一回に賭けよう。これで失敗したならば、もうきのこ探しは止める。宜しいか」
「かしこまりました。一回だけですね」
確かに、ここで無益に繰り返すこともない。
最悪、東方剣士はこの縮んだ姿のままで諦めて、チェンジしてしまう手もある。
非常だが、『何物にも代え難い自分の肉体』という意識が希薄だからか、達観的になっている。
ずっと元に戻れないとも限らないし。
「決まったな。では、エルンスト殿」
「えっ? やっぱり僕が食べるんですか?」
「愛が足りないな。PTに入る前の意気込みはどこへ行ったんだ」
「あ、あれはもっと物理的な危険から守るという意味で、こんなの想定外ですよ!」
なーにが想定外だ。
東方剣士を守る! って言ってたのに。
世の中、理不尽と想定外だらけだ。
何があっても守り切る。
本当に好きなら、そんな強い意志を持って、守り抜いて見せろよ。
「過去と同じ未来では飽き飽きだ。強くなれ。優しさを知るまで戦え」
「えっ。は? あの、どういう意味ですか?」
「戦いとは。多角的に、そう、立体的に捉えよ、ということだ」
立体的にな。
ポリゴンカクカクでもな。
「エルンスト殿。貴殿が私を守るには……」
俺はそこで言葉を切り、呼吸を整えた。
そして、一言、こう叫んでから、一気にきのこを口に入れた。
「十年早いんだよ!」




